1か月健診って何のためにあるの?
佐藤
先生、うちの子がもうすぐ1か月なんですけど、1か月健診って自治体が費用を出してくれるって聞いたんです。これって全国どこでも使える制度なんですか?
室谷
いい質問ですね。2025年4月からこども家庭庁が「1か月児及び5歳児健康診査支援事業」を立ち上げて、全国の市区町村が健診費用の助成をしやすい仕組みを整えたんです。国が補助する仕組みなので、全国展開を目指している制度ですよ。
佐藤
へえ、こども家庭庁が絡んでるんですか!ちょっと前に聞いた1歳6か月健診や3歳健診とは違うんですね?
室谷
そうなんです。1歳6か月健診と3歳健診は、母子保健法第12条で市町村に「義務」として課されていて、地方交付税でカバーされています。でも1か月健診は同法第13条に基づく「任意」の位置づけで、国が国庫補助を出すことで自治体の導入を後押しする仕組みになっています。
佐藤
なるほど、義務じゃないから自治体によって差があるってことですか?
室谷
ちょうどそういうことです。ただ、国が「令和7年度補正予算に28億円を計上」して全国展開を急いでいるので、いま急速に実施する自治体が増えています。さいたま市は令和7年4月から、東京都は令和8年10月1日からスタートするなど、主要都市がどんどん動き出している段階です。
佐藤
28億円!思ったより大きいですね。補助の仕組みはどうなってるんですか?
室谷
国と市町村で費用を折半する設計です。具体的に言うと、基準額6,000円/人に対して国が1/2(3,000円)を負担し、市町村が残りの1/2(3,000円)を負担します。合計6,000円を市区町村が助成の上限として受診者に還元するイメージですね。
佐藤
じゃあ住民としては「6,000円まで助成してもらえる」ってことで合ってますか?
室谷
基本的にはそうです。ただ実際の健診費用は医療機関によって5,000円〜10,000円程度と幅があります。6,000円以下なら自己負担なし、6,000円を超えた部分は自己負担になります。さいたま市も調布市も同様に、助成上限は6,000円で統一されていますよ。

1か月健診で何を診てもらえるの?
佐藤
1か月健診って具体的に何をするんですか?産院でやる退院前健診と違うんですか?
室谷
退院前健診とは別物ですよ!1か月健診では、生後28日から41日の間に、委託された医療機関(産婦人科や小児科)で個別に受診します。内容は大きく分けて以下の6項目をカバーします。
| 健診項目 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 身体発育状況 | 体重・身長・頭囲の計測と発育曲線との比較 |
| 栄養状態 | 母乳・ミルクの飲み方、哺乳状況の確認 |
| 疾病・異常の有無 | 黄疸、先天性心疾患、股関節脱臼、臍ヘルニア等のスクリーニング |
| 新生児聴覚検査・代謝異常検査の確認 | 出生時の各種検査の実施状況を確認 |
| ビタミンK2投与確認 | 頭蓋内出血防止のためのビタミンK2投与状況を確認・必要時投与 |
| 育児上の問題となる事項 | 育児不安や産後うつ、虐待リスクなどの早期把握 |
佐藤
ビタミンK2って何ですか?初めて聞いたんですが。
室谷
新生児は腸内細菌が未熟でビタミンK2を自分でつくれないんですね。不足すると頭蓋内出血を起こすリスクがあるので、定期的に経口投与することが推奨されています。1か月健診の場でも確認・投与するんですが、このビタミンK2投与費用は公費の対象外なので、少しだけ自己負担が発生することを覚えておいてください。
佐藤
ちゃんと知ってないと「なんでここだけ払うの?」って混乱しますね。
室谷
そうなんです(笑)。受診票には「受診票に記載の診査項目にかかる費用のみ公費負担」と書いてあるので、追加の検査や薬が出たら自己負担になります。事前に医療機関に確認しておくと安心ですよ。
佐藤
受診票ってどうやってもらうんですか?
室谷
妊娠届出のときに母子健康手帳と一緒に交付されるのが基本です。受診まで1か月以上間が空くので紛失しないように!万が一なくしたときは市区町村の母子保健担当窓口に連絡すれば再発行できます。
:::warning{title="受診票を紛失したら!"} 受診票は妊娠届出時に交付されますが、受診まで1か月程度のタイムラグがあります。なくしてしまった場合は市区町村の母子保健担当窓口に問い合わせれば再発行が受けられます。早めに連絡を! :::
助成上限6,000円の使い方と実際の費用感
佐藤
6,000円ってけっこう大きいですよね。実際に健診にかかる費用はどれくらいなんですか?
室谷
医療機関によって差があって、一般的に5,000円〜10,000円程度の幅があります。委託医療機関(契約医療機関)で受診すれば、窓口で受診票を出すだけで6,000円が差し引かれるので手続きが楽です。
佐藤
差し引きだから最初から払わなくていいんですね。
室谷
そうです。健診費用が6,000円以下なら自己負担ゼロ。6,001円だったら1円だけ払う計算です(笑)。
佐藤
わかりやすい(笑)。委託医療機関じゃないところで受けたらどうなるんですか?
室谷
一旦全額を自己負担して、あとで償還払い申請できる制度があります。申請期限は自治体によって異なりますが、さいたま市では「出生日の翌日から起算して1年以内」、調布市でも同様に1年以内になっています。必要書類は領収書・明細書・母子健康手帳のコピーなどです。
| 受診方法 | 支払い方法 | 手続きの手間 |
|---|---|---|
| 委託医療機関で受診 | 窓口で受診票を提出→差し引き済み金額を支払い | 低い(受診票を出すだけ) |
| 非委託医療機関で受診 | 一旦全額を支払い→後日償還払い申請 | やや高い(書類提出が必要) |
| 里帰り先(都外・県外)で受診 | 一旦全額を支払い→住民登録のある自治体に申請 | 高い(事前確認と書類準備が必要) |
佐藤
里帰り出産の人は大変そうですね?
室谷
少し手間はかかりますが、住民登録がある自治体に里帰り先での受診費用を申請すればちゃんと助成が受けられます。調布市を例にとると、東京都外で受診した場合でも申請できる制度になっています。事前に居住地の市区町村に「里帰り先で受診したい」と相談しておくとスムーズです。
:::pointbox{title="里帰り出産組がやるべき事前手順"}
- 出産前に居住地の市区町村窓口に「里帰り中に1か月健診を受けたい」と相談
- 受診できる医療機関(委託外になる可能性)の確認
- 「1か月児健康診査実施のお願い(医療機関向け)」を印刷して持参
- 領収書・明細書・受診票の記録を必ず受け取る
- 帰宅後、出生日の翌日から1年以内に申請! :::
受診の流れをステップで見てみよう
佐藤
手続きの全体像を整理してもらえますか?
室谷
もちろん。委託医療機関で受診する一番シンプルなケースをまとめますね。
佐藤
シンプルですね。予約は受診票があれば問題ない?
室谷
医療機関によっては「健診枠」が限られているので、生後3週間ごろには予約を入れておくと安心です。「受診票はありますか?」と電話口で確認されることも多いので、手元に準備しておいてくださいね。
佐藤
予約が遅れて41日を過ぎたらどうなるんですか?
室谷
残念ながら公費助成の対象外になるケースが多いです。生後41日以降は「1か月児健診」ではなく「乳幼児一般健診」扱いになるので、全額自己負担になりえます。生後28〜41日というウィンドウはかなり狭いので、早産だった場合は修正月齢で考えるかどうかも含めて産院に相談しましょう。

全国での実施状況と東京都の動き
佐藤
さいたま市は令和7年4月からっていいましたけど、東京はもっと遅いんですね?
室谷
そうです。東京都では令和8年10月1日から本格実施となります。分娩予定日が令和8年8月21日以降の赤ちゃんが対象になりますね。都内から他の区市町村に転出しても受診票はそのまま使えますし、逆に都内に転入した場合は転入前に交付された受診票が使えます。
佐藤
転出入でも対応してるんですね。東京都って23区ぜんぶ対応してるんですか?
室谷
東京都が都全体で「委託医療機関」を指定する仕組みをとっているので、基本的に都内の委託医療機関であれば23区・市町村問わず受診できます。受診票には「東京都内の委託医療機関」と書かれているので、引越ししても使いやすい設計です。
佐藤
じゃあ他の都道府県はどうなんですか?
室谷
こども家庭庁が全国展開を推進していますが、令和7年度時点ではまだ整備中の自治体もあります。居住地の市区町村の母子保健担当課に「1か月児健診の助成制度はありますか?」と問い合わせるのが確実です。母子健康手帳の交付窓口でも教えてもらえますよ。
佐藤
なるほど。都道府県ごとに対応時期が違うんですね。
室谷
ええ。ただし、助成上限の6,000円は全国共通の基準額なので、助成を開始した自治体はほぼ同じ水準で受けられるのが安心ポイントです。追加の加算制度を設けている自治体も出てくるかもしれませんが、まずは6,000円を上限とした自己負担ゼロor低コスト受診が基本形と覚えておいてください。
:::pointbox{title="自治体別対応開始時期の例"}
- さいたま市: 令和7年(2025年)4月〜(国庫補助活用)
- 東京都(全域): 令和8年(2026年)10月1日〜
- 調布市: 令和8年(2026年)10月1日〜(東京都の枠組みに従う)
- その他全国の市区町村: 随時整備中(市区町村の母子保健担当窓口に確認を) :::
制度設計と審査のポイント
佐藤
この制度って、単に「健診費用を補助する」だけじゃないんですか?
室谷
実は政策的な意図が重層的なんです。まず1か月という時期は先天性心疾患や股関節脱臼、黄疸など身体疾患が顕在化しやすい時期で、早期発見・早期治療のゴールデンタイムなんです。
佐藤
産院から退院して1か月以内ってことですね。
室谷
そうです。退院から2〜3週間しか経ってないので、産院で見落とした異常や、帰宅後に発覚した問題を拾い上げる「第2のチェック」の役割があります。加えて、育児不安や産後うつの早期把握・虐待リスクのスクリーニングという親のメンタルヘルス支援の側面もあります。
佐藤
ああ、産後2〜4週間って一番きつい時期ですよね。
室谷
まさに!産後うつのピーク時期とちょうど重なるんですね。医師が健診の場でアンケートや問診をして、サポートが必要なお母さんを見つけ出します。その後は「こども家庭センター」など関係機関につないで伴走型の支援に移行する流れです。
佐藤
健診票を出すだけじゃなくて、親子両方のセーフティネットになってるんですね。
室谷
そうです。だから健診医の研修もセットで国が支援しています。「1か月児及び5歳児健康診査に係る健診医研修事業」として、医師の養成・質の向上も並行して進んでいます。
:::pointbox{title="こんな赤ちゃん・家庭こそ受診してほしい"}
- 低体重・早産などリスク因子があった赤ちゃん
- 産後うつの気配があるお母さん
- 育児に不安を感じているご家族
- 里帰りから自宅に戻ったばかりで孤立感を感じている親御さん
- 上の子の対応で手いっぱいの多子家庭 :::
基本情報まとめ
佐藤
全体像をもう一度おさらいすると、どんなポイントが大事ですか?
室谷
以下の表にまとめますね。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 「1か月児」及び「5歳児」健康診査支援事業(国庫補助) |
| 実施主体 | 市区町村(こども家庭庁の国庫補助を活用) |
| 法的根拠 | 母子保健法第13条 |
| 対象者 | 住民登録のある生後28〜41日(出生日を0日目)の乳児 |
| 助成上限 | 6,000円/人(6,000円以下の場合は自己負担なし) |
| 実施方法 | 原則として個別健診(委託医療機関) |
| 補助率 | 国1/2、市町村1/2(基準額6,000円) |
| 令和7年度補正予算 | 28億円 |
| 問い合わせ先 | お住まいの市区町村の母子保健担当課 |
| こども家庭庁の関連ページ | 乳幼児健診に関する取組み |
:::pointbox{title="問い合わせ先"}
- お住まいの市区町村の母子保健担当課(妊娠届出・母子健康手帳の交付窓口と同じ)
- こども家庭庁 乳幼児健診に関する取組み :::
佐藤
わかりやすい!「助成上限6,000円」「生後28〜41日」の2つを覚えておけばいい感じですね。
室谷
そうです。加えて受診票は妊娠届出時に受け取ること、委託医療機関で受診すると窓口でそのまま差し引いてもらえることの2点も外せません。
類似する補助金との比較
佐藤
この制度と似た助成制度って他にもありますか?
室谷
母子保健分野には子育て家庭向けの助成制度がいくつか並んでいますよ。1か月健診と一緒に使えるものや、妊娠中から産後にわたって活用できるものをまとめますね。
| 制度名 | 対象時期 | 助成内容 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 妊婦健康診査の公費助成 | 妊娠期 | 14回分の健診費用 | ほぼ全国で実施済み |
| 産婦健康診査の公費助成 | 産後2週・1か月 | 2回の産婦健診費用 | 産後うつスクリーニング |
| 1か月児健康診査の費用助成(本制度) | 生後1か月 | 上限6,000円 | 乳児の身体疾患スクリーニング |
| 新生児聴覚検査の費用助成 | 出生直後 | 聴覚検査費用 | 難聴の早期発見 |
| 産後ケア事業の利用料助成 | 産後1年以内 | 宿泊型・通所型・訪問型 | 産後の心身サポート |
| 出産育児一時金 | 出産時 | 一児につき50万円 | 出産費用カバー |
佐藤
妊娠前後でこんなに制度があるんですね!
室谷
妊娠届出からはじまって、産婦健診・1か月健診・聴覚検査・産後ケアと切れ目なくサポートを受けられる体制が整ってきています。複数の制度を組み合わせると自己負担をかなり抑えられますよ。
佐藤
産婦健康診査の公費助成ってどんな制度なんですか?1か月健診と重複しますか?
室谷
産婦健康診査は「お母さん」を対象にした健診、1か月健診は「赤ちゃん」を対象にした健診なので別々の制度で重複ではありません。産後2週間と産後1か月のタイミングで2回、お母さんの体と心の状態をチェックします。一方の1か月健診は赤ちゃんの発育・疾患スクリーニングが主目的です。どちらも同じ日に受診することも可能な場合があるので、かかりつけ医に相談してみてください。
よくある質問
佐藤
早産や低出生体重児の場合は、生後28〜41日のタイミングが厳しいこともありますよね?
室谷
おっしゃるとおりです。NICU退院後に生後28日を超えていても41日以内に受診できない場合は、必ず産院の担当医師と相談してください。修正月齢での対応や、個別調整が認められるケースもあります。市区町村の母子保健担当課にも事前に相談しておくとスムーズです。
佐藤
双子の場合は2枚受診票をもらえますか?
室谷
はい!双子・三つ子など多胎の場合は、それぞれの赤ちゃんに受診票が交付されます。妊娠届出のときに「多胎妊娠です」と伝えれば必要な枚数を用意してもらえます。万が一枚数が足りなかった場合は窓口に連絡を。
佐藤
健診で異常が見つかった場合はどうなるんですか?
室谷
1か月健診の場で精密検査や専門医への紹介が必要と判断されたら、紹介状が発行されます。ただし紹介状発行費用は公費対象外になるケースがあります。その後の精密検査・治療については別途、子ども医療費助成制度や小児慢性特定疾病医療費助成などが使える場合があるので、診断後に自治体窓口で相談してみてください。
佐藤
健診と治療がうまくつながると安心ですね。
室谷
制度の設計としても、健診からフォローアップ・支援につなげる「伴走型相談支援」を強化するのがこど家庁の方針です。1か月健診はゴールではなく、その先の支援への入口と考えるといいかもしれません。
:::warning{title="受診を先延ばしにしないで!"} 生後28〜41日のウィンドウはわずか約2週間。産後の疲れで「まだいいか」と思っていると、気づいたら期限を超えていることも。予約は出産前から考えておき、生後3週間を目安に受診日を確定させましょう。 :::
佐藤
先生、最後にまとめをお願いしていいですか?
室谷
1か月児健康診査の費用助成は、生後おおむね1か月の赤ちゃんを対象に上限6,000円を自治体が助成する制度です。国(こども家庭庁)が1/2を補助し、市町村が1/2を負担する仕組みで、全国展開が急速に進んでいます。受診票は妊娠届出時に受け取り、生後28〜41日の間に委託医療機関で受診すれば手続きは最小限です。里帰り中でも、帰宅後に出生日の翌日から1年以内に申請すれば償還払いで助成を受けられます。お子さんの健康だけでなく、保護者の育児不安や産後メンタルも同時にチェックしてもらえる大切な機会です。ぜひ活用してくださいね!