医療費・支援制度

新生児聴覚検査の費用助成|申請方法と助成制度を徹底解説【2026年版】

新生児の先天性難聴を早期発見する聴覚検査の費用を自治体が助成する事業。受検票や対象検査、助成額を確認する。

佐藤
室谷さん、子どもが生まれた友人から「退院前に耳の検査があって、費用を助成してもらえると聞いた」と言っていたんですが、どんな制度なんでしょう?
室谷
新生児聴覚検査の費用助成ですね。生まれたばかりの赤ちゃんの耳の聞こえを調べる検査で、多くの自治体が費用を助成しています。日本では新生児1,000人に1〜2人が先天性難聴を持って生まれると言われていて、その早期発見のために行う大切な検査です。
佐藤
え、そんなに多いんですか!気づかないこともあるんでしょうか?
室谷
それが、生まれてすぐは親御さんも気づきにくいんですよ。赤ちゃんって音への反応が大人と違いますし、先天性難聴があっても表情や動きで反応するので、「聞こえているかな」と判断しにくい。だからこそ生後すぐに専門の機器で検査することが重要なんです。
佐藤
ほんとに?知らなかったです。で、その検査って費用はいくらくらいかかるんですか?
室谷
医療機関によって違うんですが、1万円以内が相場です。しかも健康保険の適用外なので、助成がないと全額自己負担になる。だからこそ、自治体の公費負担制度が大事なわけです。
佐藤
なるほど、保険が使えないんですね。で、今どのくらいの自治体が助成しているんですか?
室谷
こども家庭庁の調査によると、令和4年度時点で全国の市区町村の80.0%、約1,392市区町村が公費負担を実施しています。2025年以降はさらに増えていると考えられますよ。
佐藤
逆に言うと、残り20%の自治体は助成がないということですよね。
室谷
そうですね。ただその場合でも、出産費用に含まれていたり、産院が任意で負担していたりするケースもあります。また、国がこの分野への財政支援を年々拡充しているため、「今は助成がない」自治体でも数年以内に実施される可能性があります。出産前に必ず確認しておくことを強くすすめます。

新生児聴覚検査の受検フロー図

検査の種類と方法 — ABRとOAEって何が違う?

佐藤
「ABR」とか「OAE」って聞いたことあるんですが、これは何なんですか?
室谷
新生児聴覚検査の機器は主に2種類あります。自動ABR(自動聴性脳幹反応検査)OAE(耳音響放射検査)です。どちらも赤ちゃんが寝ているときに数分〜数十分で終わる、痛みがない検査ですよ。
佐藤
どう違うんですか?
室谷
わかりやすく言うと、自動ABRは「音を聞かせて脳波で反応を見る」検査、OAEは「音を聞かせたときに内耳から返ってくる音を測定する」検査です。
検査方法 自動ABR(自動聴性脳幹反応検査) OAE(耳音響放射検査)
仕組み イヤホンから音を出して脳波の反応を自動判定 内耳から返る微弱な反響音を測定
精度 高い(軽度難聴も検出可能) やや低め(耳垢や羊水の影響あり)
費用目安 やや高め(例:上限4,700円) やや安め(例:上限2,100円)
リファー頻度 低め やや高め
東京都の推奨 自動ABRを推奨 確認検査には不向きな場合あり
佐藤
じゃあ自動ABRのほうが精度が高いんですね。
室谷
そうなんです。特に確認検査(再検査)には自動ABRを使うことが推奨されています。OAEでは内耳より中枢側の異常を見逃すことがあるので。東京都も「新生児聴覚検査には自動ABRを使用するよう推奨」としています。
佐藤
気をつけるポイントがあるんですね。検査はいつやるんですか?
室谷
初回検査はおおむね生後3日以内が目安で、多くの場合は出産した産院に入院中に実施します。退院前に済ませてしまうイメージですね。検査にかかる時間は数分〜30分程度と短く、赤ちゃんは眠ったままでOKです。
佐藤
えっ、親が何か準備しなくていいんですか?それは楽ですね(笑
室谷
基本的に産院にお任せで大丈夫です。ただ、同意書へのサインが必要な場合があるので、事前に産院から渡される書類は確認しておきましょう。
佐藤
ほとんどの赤ちゃんが受けているんですか?
室谷
令和3年度のデータでは、集計できた市区町村での出生児に対する受検率が94.2%でした。令和4年度には出生児の約95%が受検しています。かなり普及していますね。

公費負担の仕組み — どうやって助成してもらえるの?

佐藤
費用を助成してもらえると聞いていますが、具体的にどういう仕組みなんですか?
室谷
基本的には妊娠届を出して母子健康手帳をもらうときに、一緒に「受検票」も交付される仕組みです。その受検票を出産した医療機関に提出すると、窓口での費用が減額される、あるいは無料になります。
佐藤
マジですか! あらかじめもらっておくんですね。
室谷
そうです。委託医療機関(自治体と契約している病院や助産所)で出産する場合は、受検票を使えばほとんど手続き不要です。市区町村によって助成の方式が違って、大きく分けると「全額公費負担」と「定額助成」の2タイプがあります。
助成タイプ 内容 令和4年度の実施数
全額公費負担 検査費用が全額無料 216市区町村
定額助成 一定額を助成(差額は自己負担) 1,072市区町村
公費負担なし 全額自己負担 約349市区町村
佐藤
へえ、住む場所によって違うんですね。
室谷
そうなんです。定額助成の場合、助成額は自治体によってバラバラです。たとえば度会町(三重県)では令和7年4月から上限が3,000円から6,000円に引き上げられました。伊東市(静岡県)では自動ABRが上限4,700円、OAEが上限2,100円の助成があります。
佐藤
自分の住んでいる市区町村がどっちか確認する必要があるわけですね。
室谷
そのとおりです。妊娠中に住民票のある市区町村の窓口(子育て担当課・保健センターなど)に確認するか、自治体のホームページで調べてみてください。

:::pointbox{title="国の財政支援も拡充中"} こども家庭庁の事務連絡(令和6年7月26日)によると、国は令和6年度から地方交付税の算定を「保健衛生費」から「こども子育て費」に移行し、新生児聴覚検査費の交付税算定額を標準団体(18歳以下人口1万6,000人規模)あたり年間約160万円(令和4年度比で約67万円増)に拡充しています。「こども未来戦略」(令和5年12月22日閣議決定)に基づき、全国での公費負担実施を推進する方針が打ち出されています。 :::

自動ABRとOAEの検査比較図

申請の対象者と対象検査

佐藤
そもそも誰でも助成を受けられるんですか?
室谷
基本的には住民票のある市区町村の新生児の保護者が対象です。ただし、いくつか注意点があります。

:::pointbox{title="助成を受けるための基本条件"}

  • 対象: 住民票がある市区町村で生まれた(または住民登録のある)新生児の保護者
  • 検査時期: 生後3か月未満(自治体によって異なる)が多い
  • 対象外: 保険診療として実施された検査(健康保険が使われた場合は助成対象外)
  • 対象検査: 初回の新生児聴覚スクリーニング検査(通常1回分が対象) :::
佐藤
「保険診療の場合は対象外」っていうのが気になりますが。
室谷
通常の新生児聴覚検査は自由診療(保険適用外)なので問題ないのですが、まれに他の疾患の検査として保険診療の中で実施されることがあります。その場合は助成対象外となる市区町村が多いので、気になる方は事前に確認しましょう。
佐藤
わかりました。検査の対象は初回だけなんですか?確認検査も助成される?
室谷
確認検査(リファー後の再検査)については、自治体によって対応が分かれています。初回のみ助成する自治体もあれば、確認検査まで含めて助成する自治体もあります。お住まいの市区町村に確認するのが一番確実です。

申請の流れ — 里帰り出産の場合は特に注意!

:::warning{title="里帰り出産の場合は手続きが変わります"} 実家(住民票のある市区町村と異なる場所)で出産する場合、委託外の医療機関で受検票が使えないことがあります。この場合、検査費用を一旦全額自己負担してから、住民票のある市区町村窓口に領収書・母子健康手帳等を持参して申請する「事後還付」の手続きが必要です。申請期限は「出産日から1年以内」の自治体が多いですが、自治体によって異なります。里帰り出産が決まったら、早めに住民票のある市区町村に確認しておきましょう。 :::

佐藤
里帰り出産の場合は事前に確認が必要なんですね。
室谷
そうです、大事なポイントです。「事後還付」の場合、申請に必要な書類も自治体によって違います。一般的には①申請書 ②母子健康手帳(検査記録のページ) ③領収書(原本) ④振込口座がわかるもの ⑤受検票(未使用)などが必要です。
佐藤
領収書はちゃんととっておかないといけませんね。
室谷
本当に大事です!「医療費控除の確定申告」と還付申請の順番も注意が必要で、先に市区町村への助成申請を済ませてから医療費控除を行うことが推奨されています。助成を受けた後の自己負担分のみが医療費控除の対象になるからです。

リファーになったら — 慌てないための次のステップ

佐藤
「リファー」という結果が出たら、親御さんはすごく心配しますよね?
室谷
当然ですよね。でも、リファーが出ても必ずしも難聴というわけではありません。耳垢や羊水が残っていただけで反応が出なかったケースも多いです。落ち着いて、まず確認検査を受けましょう。
佐藤
リファーになった場合は、どのくらいの期間内に再検査するんですか?
室谷
確認検査はリファー後生後1週間以内が目安です。そして確認検査でもリファーとなった場合には、保健センターで精密健康診査受診票を受け取り、専門の耳鼻科や大学病院の精密聴力検査機関を受診します。
佐藤
費用的には?
室谷
精密健康診査受診票を使えば精密聴力検査の費用も公費で一部負担してもらえます。自治体によって異なりますが、検査で終わらず継続的なフォローが必要な場合も、保健センターが相談に乗ってくれます。一人で抱え込まないことが大切です。
佐藤
精密検査のあとは?
室谷
国際的には「1-3-6ルール」と呼ばれる目安があります。生後1か月までに新生児聴覚検査、生後3か月までに精密検査を実施して診断を確定し、生後6か月までに療育を開始するというものです。
佐藤
6か月までに始めるのが理想なんですね。
室谷
言語習得の臨界期がありますから、早期療育が大切です。補聴器の装用、人工内耳の検討、言語療法士による訓練など、さまざまなサポートが受けられます。難聴と診断されても、適切な支援を早期に始めれば、言語の発達やコミュニケーション能力の獲得に大きな差が出ます。
佐藤
じゃあリファーが出ても、ちゃんと流れに沿って行動すれば大丈夫なんですね。
室谷
そうです。あわてず、しかし早めに動くことが大事です。地域の保健センターや難聴児支援センター(都道府県によって設置)に相談することもできますよ。

基本情報まとめ

項目 内容
制度名 新生児聴覚検査費用助成(新生児聴覚スクリーニング検査費助成)
対象者 住民票のある市区町村の新生児の保護者
実施機関 市区町村(こども家庭庁・都道府県が支援)
検査方法 自動ABR(自動聴性脳幹反応検査)またはOAE(耳音響放射検査)
検査時期 初回:生後3日以内、確認検査:生後1週間以内
助成額 自治体によって異なる(無料〜数千円の定額助成)
公費負担自治体数 令和4年度時点で80.0%(1,392市区町村)
申請方法 委託医療機関:受検票提出で自動減額/委託外:事後還付申請
申請期限 多くは出産日から1年以内(自治体によって異なる)
公式情報 こども家庭庁 母子保健・不妊症・不育症など

:::pointbox{title="お問い合わせ先"} 住民票のある市区町村の窓口(子育て支援課・保健センターなど)へお問い合わせください。

公式情報: こども家庭庁 新生児聴覚検査の実施状況等 :::

関連する制度との比較

佐藤
似たような制度って他にもありますか?
室谷
妊娠・出産に関する助成制度はいくつかありますよ。新生児聴覚検査に近い時期のものを挙げると、妊娠中の検査には妊婦健康診査の公費助成、産後の母体のケアには産婦健康診査の公費助成、出産後の育児サポートには産後ケア事業の利用料助成があります。
佐藤
妊婦健診の助成とは何が違うんですか?
室谷
妊婦健診は妊娠中のお母さん側の健診、新生児聴覚検査は生まれた赤ちゃんの検査という違いです。どちらも保険外ですが、公費助成がある点は共通しています。
制度名 対象 タイミング
妊婦健康診査の公費助成 妊婦の健診費用 妊娠中
新生児聴覚検査の費用助成(本制度) 赤ちゃんの聴覚検査 出産直後(生後3日以内)
産婦健康診査の公費助成 出産後のお母さんの健診 産後2週間・1か月
産後ケア事業の利用料助成 産後ケアサービス利用料 産後(通常生後4か月頃まで)
子ども医療費助成制度 子どもの医療費全般 乳幼児期〜子どもの年齢(自治体次第)
佐藤
難聴が見つかったあとの支援制度はありますか?
室谷
はい。先天性難聴と診断された場合、補聴器の購入費用は補装具費支給制度が使える可能性があります。また、聴覚障害が認定されれば障害者手帳を取得して様々な福祉サービスへのアクセスも広がります。ただ、まずは精密検査を受けて専門医の判断を仰ぐことが先決です。
佐藤
補装具費支給制度って、補聴器に使えるんですか?
室谷
補聴器が「補装具」に該当するので、身体障害者手帳(聴覚障害の認定)があれば補装具費の支給対象になります。しかも、軽度・中等度の難聴の子どもに対する補聴器助成は、多くの都道府県・市区町村でも独自に実施しているんです。難聴と診断された後は、耳鼻科の専門医・補聴器相談医に相談しながら、最適な療育と支援制度を組み合わせていきましょう。
佐藤
早期療育って具体的にはどんなことをするんですか?
室谷
難聴の程度によって変わりますが、主に3つの方向性があります。まず補聴器の装用で聞こえを補う。次に言語療法(言語聴覚士による訓練)でコトバの発達を支援する。さらに重度の難聴では人工内耳の手術を検討することもあります。どれも早く始めるほど効果が大きいと言われており、だからこそ新生児聴覚検査で早期発見することが重要なんです。
佐藤
なるほど、早く見つかれば選択肢が広がるんですね。検査で見つかったあともサポートがあるんですね、安心しました。

よくある質問

佐藤
検査を受けないと赤ちゃんに何か問題はありますか?
室谷
法的に義務ではないので罰則等はありません。ただ、先天性難聴は早期発見・早期療育が何より大切なので、受けないと難聴が見逃されるリスクがあります。言語の習得時期を逃してしまうと、その後の療育が難しくなる場合もあるんです。受検率が全国で95%を超えている背景にはそういった事情があります。
佐藤
なるほど、ほとんどの赤ちゃんが受けているんですね。
室谷
「保護者が必要性を感じず同意しなかった」という理由で受けなかったケースも実際に報告されています。受けないことのリスクを知った上で、ぜひ前向きに検討してほしいですね。この制度のことを知っているだけで、お子さんの未来が変わるかもしれません。

:::warning{title="公費負担がない自治体にお住まいの方へ"} 令和4年度時点で、まだ約20%の市区町村では公費負担が実施されていませんでした。その場合でも、検査を受けること自体は可能です(自費)。費用の目安は1万円以内です。年々公費負担を実施する自治体が増えているので、住民票のある市区町村の窓口に最新状況を確認することを強くおすすめします。 :::

佐藤
制度について、まだ知らない親御さんも多そうですよね。
室谷
残念ながらそうなんです。「保護者が必要性を感じず同意しなかった」という理由で受けなかったケースが厚生労働省の調査でも報告されています。情報にアクセスできた親御さんとそうでない親御さんの間で、お子さんの早期療育開始時期に差が生まれてしまうのは、本当にもったいない。
佐藤
だから今回みたいな情報発信が大事なんですね。
室谷
そうです!しかも自治体の助成制度は毎年見直されていて、公費負担を新たに開始したり、助成額を引き上げる自治体が増えています。令和5年12月に閣議決定された「こども未来戦略」でも全国での公費負担実施が政策目標として明示されていますから、今後さらに普及が進むはずです。
佐藤
最後に、これだけは覚えておいてほしいことを教えてもらえますか?
室谷
3つあります。①妊娠届出時に受検票をもらうことを忘れずに、②里帰り出産の場合は事前に自治体に確認を、③リファーが出ても慌てず、早めに確認検査を受けること。先天性難聴は1,000人に1〜2人に起こりますが、早期に見つけて適切なサポートをすれば、お子さんは豊かな言語力とコミュニケーション能力を育てることができます。検査を受けて、安心を手に入れてください!
佐藤
ありがとうございます!出産を控えた方にぜひ伝えたい情報でした。

一次情報・申請先: こども家庭庁・市区町村

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、制度は改正される場合があります。最新の要件・金額は必ず上記の公式ページや窓口でご確認ください。