医療費・支援制度

妊婦健康診査の公費助成|全国一律14回の仕組みを徹底解説

妊娠中の健康診査に必要な費用を自治体が公費助成する制度。助成回数や対象検査、申請方法は住民票のある自治体で確認する。

妊婦健康診査ってどんな制度?まず基本を教えてください

佐藤
室谷さん、妊婦健康診査の公費助成って、妊娠したら自動的にもらえるやつですよね?ちょっと仕組みが複雑で、正直よくわからなくて。
室谷
ほんとに、最初は「なんか受診券が来た」で終わっちゃう人が多いんですよね(笑) 順番に整理しますね。妊婦健康診査っていうのは、妊娠中のお母さんと赤ちゃんの健康状態を定期的にチェックするための健診です。で、その費用の大部分を住んでいる市区町村が公費で助成してくれるのが、今回の制度です。
佐藤
費用の「大部分」ってことは、全部タダじゃないんですね。
室谷
そうなんです。妊婦健診って健康保険が使えないんですよ。妊娠は病気じゃなくて生理的な変化だから、保険の対象外で。だから、自治体の助成がなければ全額自己負担になる。妊娠期間中に全部の健診を受けると、助成なしで10〜15万円くらいかかるんです。
佐藤
えっ、そんなにかかるんですか!
室谷
かかります(笑) 初回の健診だけで1〜2万円、2回目以降も1回あたり3,000〜7,000円くらいが相場で、14回程度受けるのが推奨されてますから。でも公費助成のおかげで、全国平均の自己負担額は5万円前後に収まってるんです。
佐藤
じゃあ自治体が約半分以上の費用を出してくれてるってことですね。
室谷
そうです。令和6年4月の調査では、自治体が助成する額の全国平均が約109,730円になってます。これがこども家庭庁の公式調査で確認されている数字です。

妊婦健康診査 公費助成の仕組みを示すフロー図

佐藤
なるほど、仕組みはわかりました。じゃあ具体的に「何回受けられるのか」と「どんな検査が含まれるのか」を教えてもらえますか?

14回助成の内訳と国の基準

室谷
まず回数から行きましょう。厚生労働省の「妊婦に対する健康診査についての望ましい基準」(平成27年厚生労働省告示第226号)で、妊娠期間中に14回程度の健診を受けることが推奨されています。令和6年4月現在、全国1,741の市区町村すべてで14回以上の公費負担が実施されています。
佐藤
全部の市区町村で、ですか!それはすごい。
室谷
そうなんですよ。以前は自治体によってバラバラだったんですけど、今は全国どこでも最低14回は助成を受けられます。受診のタイミングはこんな感じです。
妊娠時期 受診間隔 目安の回数
妊娠初期〜23週 約4週間に1回 4〜5回
妊娠24週〜35週 約2週間に1回 6回
妊娠36週〜出産 約1週間に1回 4〜5回
佐藤
これって医療機関が決めてるんですか?それとも法律で決まってるんですか?
室谷
国の基準で決まってます。各市区町村が国の「望ましい基準」に沿って、健診費用を14回分助成する形です。それを超えて、自治体独自で17回とか22回(多胎妊娠の場合)まで助成してる自治体もあります。
佐藤
多胎妊娠だと回数が増えるんですね。
室谷
双子や三つ子は健診の頻度が高くなりますから。例えば東大阪市だと多胎妊娠中の方には通常より5枚多く受診券を交付して、22回分の助成をしています。

:::pointbox{title="公費負担の国の基準(望ましい基準)"}

  • 対象: 全市区町村(1,741自治体)が実施(令和6年4月現在)
  • 推奨回数: 出産までに14回程度
  • 根拠: 「妊婦に対する健康診査についての望ましい基準」(平成27年3月31日厚生労働省告示第226号)
  • 多胎妊娠: 自治体によって追加枚数の受診券を交付 :::
佐藤
では次に、具体的にどんな検査が公費で受けられるのか教えてもらいたいです。

公費助成の対象となる検査項目

室谷
検査は大きく「毎回の基本検査」と「時期ごとの医学的検査」に分かれます。
佐藤
毎回受ける検査っていうのは?
室谷
これは健診のたびに毎回やるやつです。問診と診察、体重測定、血圧測定、尿検査(糖と蛋白)、それから保健指導ですね。妊娠週数に合わせた生活上のアドバイスや不安の相談も含まれます。
佐藤
毎回そんなにやるんですね。
室谷
それ以外に、妊娠の時期ごとに追加で行う検査があります。
検査項目 実施時期 内容
血液型検査 妊娠初期に1回 ABO/Rh血液型、不規則抗体
感染症検査 妊娠初期に1回 B型・C型肝炎、HIV抗体、梅毒、風疹抗体
子宮頸がん検診 妊娠初期に1回 細胞診
血糖検査 初期・中期に各1回 妊娠糖尿病チェック
血算検査 初期・中期・後期に各1回 貧血チェック
超音波検査 初期2回・中期1回・後期1回 胎児の発育確認
HTLV-1抗体検査 妊娠30週までに1回 ウイルス感染チェック
クラミジア検査 妊娠30週までに1回 性器クラミジア
GBS検査 妊娠33〜37週に1回 B群溶血性レンサ球菌
佐藤
これ全部が公費で受けられるんですか?
室谷
受診券方式の自治体の91.9%がこれら全ての検査項目を公費負担しています(令和6年調査)。ただ、まだ8%程度の自治体では一部の検査項目が自己負担になる場合があります。だから「全部タダ」と思い込まずに、住んでいる自治体で必ず確認するのが大切です。
佐藤
8%って結構ありますよね。だいたい100〜200の自治体ってことですか。
室谷
そうです。特に超音波検査は自治体によって扱いが違うことが多いんですよ。一部の自治体では回数分しかカバーされなくて、医師の判断で追加になった分は自己負担になります。

妊婦健診14回の受診スケジュール図

佐藤
その「受診券方式」って出てきましたが、方式が違うってどういうことですか?

受診券・補助券の2つの方式とその違い

室谷
受診券を交付する方法が、大きく2種類あります。全国の自治体のうち約92.2%が「受診券方式」を採用していて、残りが「補助券方式等」です。
佐藤
どう違うんですか?
室谷
受診券方式は、「何週目にこの検査を受けてください、費用はこれだけ出します」という感じで、毎回の検査項目があらかじめ決まった受診票を医療機関に持っていく方式です。補助券方式は、補助額が書いてある券を医師に渡して、費用から差し引いてもらう方式で、検査内容は医師の判断に委ねられます。
佐藤
受診券方式だと毎回「この週はこの検査」って決まってるんですね。
室谷
そうです。公費で受けられる検査の内容が明確なので、透明性が高いとも言えます。

:::pointbox{title="受診券・補助券の違いまとめ"}

  • 受診券方式(約92.2%の自治体) — 毎回の検査項目が記載された受診票を使用。検査内容が事前に明確
  • 補助券方式等(約7.8%の自治体) — 補助金額が書かれた券を使用。検査内容は医療機関の判断による
  • どちらの方式でも、14回以上の健診に対する公費助成は受けられる :::
佐藤
受診券がどれくらいの金額なのかも知りたいです。
室谷
これが自治体によって全然違うんですよ。全国平均で見ると妊婦1人あたりの公費負担額が約109,730円。でも、最も多い自治体では13万円以上、少ない自治体では8万円を下回るところもあって、地域差がかなりあります。先ほどの令和5年度のデータだと、石川県の平均が140,642円でトップ水準だったり、神奈川県が76,114円台と比較的低かったりするんです。
佐藤
同じ日本なのに、住む場所でそんなに差があるんですね。
室谷
そうなんです。だから引越しを考えてる妊婦さんは、住む自治体の助成内容を事前に確認しておくといいですよ。さて次は、実際にどうやって受診券を受け取るかを見ていきましょう。

受診券の受け取り方と申請の流れ

佐藤
受診券って病院で自動的にもらえるわけじゃないんですよね?
室谷
そうです。住んでいる市区町村の窓口(母子保健担当)に妊娠届を提出することがスタートです。病院で妊娠が確認されたら、できるだけ早く届け出を出しに行くのがポイントです。
佐藤
最初の心拍確認の前には行けないんですか?
室谷
妊娠の届出には医師に胎児心拍が確認されていることが必要なので、初回健診で心拍が確認できてから届け出に行く形になります。そして注意点なんですが、受診券を受け取る前に受けた健診の費用は、基本的に公費助成の対象外です。つまり、妊娠届を出す前に受けた健診は全額自己負担になります。
佐藤
えっ、それは知らなかった!早めに届け出を出さないと損するってことですね。
室谷
そうなんです。妊娠がわかったらできるだけ早く届け出を出して受診券を受け取る。これが鉄則です。

:::warning{title="届出前の受診は自己負担になる!"} 妊娠届を提出して受診券を受け取る前に受けた健診費用は、公費助成の対象外です。初回健診で心拍が確認されたら、できるだけ早く市区町村の窓口へ妊娠届を出しましょう。「後から申請すれば戻ってくる」と思い込んでいると損をすることがあります。 :::

佐藤
受診券を受け取った後は、どこの病院でも使えるんですか?
室谷
原則として、発行した都道府県内の契約医療機関で使えます。全ての病院・クリニックで使えるわけじゃないので、受診前に医療機関が対応しているかを確認する必要があります。
佐藤
転居したらどうなるんですか?
室谷
転居前の受診券は転居先の自治体では使えなくなります。転入先の市区町村の窓口に行って、新しい受診券に交換してもらう必要があります。逆に転出したら、以前の受診券は無効になります。
佐藤
引越しのタイミングは気をつけないとですね。

里帰り出産の場合はどうなる?

室谷
里帰り出産を予定してる人もよく心配するポイントですね。基本的には、住んでいる自治体の受診券は県外の医療機関では使えません。でも「償還払い制度」という仕組みがあって、一旦全額を自己負担で支払った後、住んでいる自治体に申請すると、受診券の助成額分を後から返金してもらえます。
佐藤
後から返ってくるんですね。申請の手間はかかりますが。
室谷
そうなんです。領収書と受診券を使って申請する形です。ただ、一旦立替払いが必要なので、資金的な余裕が必要ですね。また、都道府県内であれば、里帰り先の医療機関と事前契約をしている場合は直接使えることもあります。住んでいる自治体に里帰りの予定を伝えて、どういう手続きが必要か事前に確認しておくのが安心です。
佐藤
里帰り先の自治体に手続きするんじゃなくて、住民票のある自治体に相談するんですね。
室谷
その通りです。制度の受け取り先は常に住民票のある市区町村です。里帰り中でも、手続きは元の自治体に問い合わせるのが基本です。自治体によっては、郵送やオンラインで申請を受け付けているところもあります。それでは、実際の費用感や自治体差についてもう少し掘り下げてみましょう。

自己負担はいくらくらい?地域差の実態

佐藤
助成を受けた後の自己負担って、実際どれくらいになりますか?
室谷
全国平均では妊娠期間中の健診費用の合計が10〜15万円で、自治体の助成が平均約109,730円ですから、差し引きで5万円前後が自己負担になるケースが多いです。
佐藤
5万円でも、14回分の健診費用としてはかなり軽減されてますね。
室谷
そうなんですよ。助成がない場合に比べると7〜8割の費用が軽減されてるわけですから。ただし、医療機関によって健診費用そのものが違うし、検査内容が受診券の助成額を超えると差額の自己負担が出ます。
佐藤
受診券の金額以上に費用がかかることがあるんですか?
室谷
あります。たとえば受診券の上限が5,000円の回に7,000円の健診を受けると、2,000円が自己負担になります。医療機関によっては補助券を同時に使えて追加の自己負担をカバーできる自治体もあります(東大阪市の例では2,000円の補助券を最大10枚交付)。いずれにせよ、受診前に医療機関の窓口で費用を確認する習慣をつけると安心です。

:::warning{title="受診券の金額を超えた分は全額自己負担"} 医療機関での健診費用が受診券に記載された上限額を超えた場合、超えた分は自己負担になります。また、公的医療保険が適用される診療(合併症の治療など)の自己負担分も助成の対象外です。受診前に費用の目安を医療機関に確認しておきましょう。 :::

佐藤
都道府県別の助成額の差って大きいですか?
室谷
令和5年4月のデータで見ると、例えば石川県は平均140,642円で全国でも高い水準、逆に神奈川県は76,114円台と低い方でした。ただし神奈川県は県内自治体の多くが独自に上乗せをしてたりするので、単純な比較は難しいんですよね。
佐藤
自治体の発表している数字だけで判断するのは難しそうですね。

多胎妊娠の場合の特別助成

室谷
双子以上の多胎妊娠は、医師の指示で健診回数が増えることが多いです。国の基準は14回ですが、自治体によっては多胎妊娠に対して追加の受診券を交付しています。
佐藤
双子を妊娠してる人は、特別な手続きが必要ですか?
室谷
基本的には妊娠届出の際に多胎妊娠であることを伝えると、追加枚数の受診券を交付してもらえます。例えば東大阪市では基本17回に加えて5枚追加、合計22回分を交付しています。住んでいる自治体に確認してみてください。
佐藤
多胎妊娠の場合は特に窓口に詳しく聞いた方がよさそうですね。
室谷
そうですね。多胎妊娠は管理入院や頻回の健診が必要になることもあるので、受診券以外の助成制度(高額療養費や未熟児養育医療など)も視野に入れておくといいですよ。

受診券を使い切れなかったらどうなる?

佐藤
全部の受診券を使いきれなかった場合、返金はされるんですか?
室谷
残った受診券は換金できません。使わなかった分は返金されないし、他の用途にも使えません。ただし使い残しても罰則はないので、焦って無理に全部使う必要もないです。
佐藤
使えなかった分は損、ってことですね。
室谷
そうなんですよ。だから健診を飛ばさず、推奨されたタイミングでちゃんと受けることが大切です。母子の健康管理という意味でも、受診券の活用という意味でも。

ほかの妊娠・出産支援制度との組み合わせ

佐藤
妊婦健診の助成以外にも、妊娠・出産に使える制度ってありますか?
室谷
いっぱいあります。まず出産育児一時金が代表的で、1児につき50万円(産科医療補償制度に加入している医療機関での出産の場合)が支給されます。出産費用そのものをカバーする制度です。
佐藤
それは別物なんですね。
室谷
別物です。妊婦健診の助成は「健診費用」を、出産育児一時金は「出産費用」をカバーするイメージです。働いているお母さんなら出産手当金も使えて、産休中の給付金として健康保険から標準報酬日額の3分の2が最大98日分支給されます。
佐藤
妊娠前から不妊治療をしていた方は?
室谷
不妊治療については不妊治療の保険適用と先進医療助成があって、体外受精や顕微授精が保険適用になったり、先進医療の費用助成がある制度です。妊娠後に使える制度とは別の話ですが、妊娠前からの流れで知っておくといい制度です。
制度名 対象 主な給付
妊婦健康診査の公費助成 妊娠中の健診費用 全国平均で約10万9,730円分の助成
出産育児一時金 出産費用 1児50万円(原則)
出産手当金 産休中の収入補填 標準報酬日額の3分の2×最大98日
子ども医療費助成制度 出産後の子どもの医療費 自治体ごとに設定
佐藤
こう並べると、妊娠から出産、育児まで段階的に助成制度が続いているんですね。
室谷
そうなんです。各ステージで使える制度が違うから、妊娠届出のタイミングで「今から使える制度は何か」を窓口で全部聞いてしまうのが効率的です。

:::pointbox{title="妊娠届出時に一緒に確認したい制度"}

  • 妊婦健康診査の受診券(今回の制度)
  • 妊婦のための支援給付(妊娠届後5万円・出産前5万円)
  • 妊婦等包括相談支援事業(保健師等による伴走型相談)
  • 両親学級・母親学級の案内
  • 里帰り出産の手続き方法 :::
佐藤
こんなに聞くことがあるなら、窓口で遠慮せずにまとめて聞いた方がいいですね。

申請で迷ったときの相談先

室谷
自治体の窓口が一番の相談先です。市役所・区役所・町村役場の「母子保健担当」か「健康推進課」「こども課」などが窓口になっています。保健センターでも対応している場合が多いです。
佐藤
電話でも相談できますか?
室谷
できます。特に里帰り出産の償還払いや転居時の手続きは、電話で事前に確認してから動くのが安心です。こども家庭庁の代表電話(03-6771-8030)でも母子保健に関する問い合わせを受け付けています。
佐藤
一人で悩まず、まず電話して聞くのが大事ですね。

:::pointbox{title="問い合わせ先"}

  • 住んでいる市区町村の窓口(役所・保健センターの母子保健担当・健康推進課・こども課など)
  • こども家庭庁 代表電話: 03-6771-8030 :::

基本情報まとめ

室谷
最後に、この制度の基本情報をまとめておきますね。
項目 内容
正式名称 妊婦健康診査の公費助成
実施主体 市区町村(全国1,741自治体すべてで実施)
助成回数 14回以上(多胎妊娠は追加あり)
全国平均助成額 約109,730円(令和6年4月調査)
申請方法 住民票のある市区町村窓口へ妊娠届を提出
公式情報 厚生労働省 出産なび
問い合わせ先 住んでいる市区町村の母子保健担当窓口
佐藤
「住んでいる自治体で手続き」が全ての基本なんですね。
室谷
そうです。この制度はあくまで市区町村が主体です。転居・里帰り・多胎妊娠など、自分の状況に合わせて、住民票のある市区町村の窓口に確認するのが大前提です。

よくある質問

佐藤
最後に、よくある疑問をまとめてもらえますか?
室谷
はい。まず「受診券をもらい忘れたらどうなる?」ですが、後から窓口で交付してもらえます。ただし受診券を受け取る前の健診費用は返金対象外です。「健診後に転出した場合は?」については、転出先の自治体で新しい受診券に交換してもらいます。「残った受診券は換金できる?」については、換金はできません。「里帰り中に受けた健診費用は?」は、住んでいる自治体に申請すれば、受診券の助成額相当分が償還払いされます。
佐藤
まとめると、とにかく早めに妊娠届を出して受診券をもらう、それが一番大事ということですね。
室谷
完璧です(笑) あと、受診券の枚数や内容は自治体ごとに違うので、「全国みんな同じ」と思い込まずに、必ず自分の住む自治体に確認する。その二点が大切です。

一次情報・申請先: 市区町村

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、制度は改正される場合があります。最新の要件・金額は必ず上記の公式ページや窓口でご確認ください。