介護保険制度とは? 要介護認定の基本をおさえよう
佐藤最近、親が体の動きが悪くなってきていて、介護保険っていうのを使えるかもしれないって聞いたんですけど、そもそもどういう制度なんですか?
室谷ああ、それは大事な話ですね。介護保険制度は、2000年(平成12年)に始まった公的な保険制度です。40歳になると全員が保険料を払い、いざ介護が必要になったときに1〜3割の自己負担でサービスを受けられる仕組みです。「社会全体で支え合う」という考え方で設計されています。
佐藤1〜3割って、残りの7〜9割は誰が払うんですか?
室谷国と都道府県、市区町村が半分を税金で、残りの半分を加入者の保険料で賄っています。財源の内訳でいうと、国が25%、都道府県が12.5%、市区町村が12.5%を公費で負担。さらに第1号被保険者(65歳以上)と第2号被保険者(40〜64歳)の保険料が合わせて50%です。なので個人の自己負担は1〜3割で済むんです。
佐藤えっ、それって相当助かりますよね! 2種類の被保険者があるってどういうことですか?
室谷介護保険の加入者は2つに分かれています。65歳以上の方が「第1号被保険者」で、40〜64歳が「第2号被保険者」です。第1号の方は原因を問わず、要介護状態になったらサービスを受けられます。一方、第2号の方は老化に起因する「特定疾病」による介護状態の場合に限られます。
室谷全部で16種類あります。例えばがんの末期、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病関連疾患、脊髄小脳変性症、認知症(初老期)、脳血管疾患、糖尿病性合併症(腎症・網膜症・神経障害)、関節リウマチ、骨折を伴う骨粗しょう症など。これらに当てはまる40〜64歳の方は、65歳未満でも介護保険を使えます。
佐藤なるほど。じゃあ親が65歳以上なら、どんな状態でも申請できるってことですね?
室谷そうです。65歳以上なら病気の種類は関係ありません。ただし「要介護状態にある」と認定される必要があります。これが「要介護認定」の申請という手続きで、これをしないとサービスは使えないんです。この点が大事なポイントです。
要介護認定って何?7段階の区分を理解しよう

佐藤要介護認定って、どんな区分に分かれているんですか?
室谷要介護認定は全部で7段階に分かれています。介護が比較的軽い「要支援1・2」と、より手厚いケアが必要な「要介護1〜5」です。
| 区分 |
状態の目安 |
区分支給限度基準額(月額・単位) |
| 要支援1 |
日常生活のほぼ全般を自力でできるが、一部支援が必要 |
5,032単位 |
| 要支援2 |
日常生活の一部に支援が必要で、要介護への移行予防が目的 |
10,531単位 |
| 要介護1 |
日常生活の一部に介護が必要。立ち上がり・歩行が不安定 |
16,765単位 |
| 要介護2 |
日常生活全般に介護が一部必要。歩行・入浴等に問題あり |
19,705単位 |
| 要介護3 |
日常生活全般に介護が必要。排泄・入浴等に全面的な介護が必要 |
27,048単位 |
| 要介護4 |
日常生活全般において、ほぼ全面的な介護が必要 |
30,938単位 |
| 要介護5 |
日常生活全般においてほぼ全面的な介護が必要で、生命維持に特別なケアが必要 |
36,217単位 |
室谷介護保険では「単位」という尺度を使います。おおむね1単位=10円として計算します(地域によって多少異なります)。要介護5の場合、月36,217単位≒ざっくり36万円弱くらいがサービスを使える上限。そのうち自己負担は収入によって1〜3割なので、ほとんどの人は1割負担=月3万円程度で収まります。
佐藤それは結構使えますね! 要支援と要介護って、使えるサービスも変わるんですか?
室谷大きく違います。要支援1・2の方は「介護予防サービス」が中心で、軽度者向けの内容になっています。要介護1以上になると「介護給付」として訪問介護・デイサービス・施設入所など、より幅の広いサービスが使えるようになります。特に特別養護老人ホーム(特養)への新規入所は、原則として要介護3以上でないと申請すら受け付けてもらえません。
佐藤じゃあ早めに認定を受けておく方がいいですね。認定のことをもっと教えてください!
要介護認定の申請からサービス開始まで
室谷そうですね。ただ、申請してから認定結果が出るまでの間も、サービスが必要な場合は「暫定ケアプラン」を使って先に利用を始めることが可能です。万が一認定区分が低かった場合は差額を実費で負担することになりますが、緊急の場合は活用できます。
室谷「審査請求」ができます。都道府県に設置されている介護保険審査会に申し立てを行うことで、再審査してもらえます。認定結果の通知を受けた日の翌日から3ヶ月以内に申し立てが必要です。また、区分変更申請(身体の状態が変わったときの再申請)も有効期間内でもいつでも申請できます。
利用できるサービスの種類を知ろう

| カテゴリ |
主なサービス |
対象区分 |
| 訪問系 |
訪問介護・訪問入浴・訪問看護・訪問リハビリ |
要介護1〜5 |
| 通所系 |
デイサービス・デイケア(通所リハビリ) |
要介護1〜5 |
| 施設系 |
特養・老健・介護医療院・有料老人ホーム |
要介護3以上(特養の新規入所) |
| 福祉用具 |
車いす・介護ベッド・手すり等の貸与・購入 |
要介護1〜5 |
室谷使えますが、使えるサービスが変わります。要支援1・2の方は「介護予防サービス」として通所介護(デイサービス)や訪問介護が利用できます。ただし「介護予防」という名前のつく軽度者向けのサービスになり、内容や提供頻度が異なります。
佐藤施設に入るとなると、費用はどれくらいかかるんですか?
室谷施設の種類によってかなり差があります。特別養護老人ホーム(特養)は公的施設なので、民間の有料老人ホームに比べると費用が低く抑えられています。在宅サービスとの費用比較でいうと、訪問介護を週3〜4回使うのと、デイサービスを週2〜3回使うのを組み合わせると、要介護2で月5〜7万円程度の自己負担が目安です(1割負担の場合)。
佐藤ちなみに、在宅サービスを限度額を超えて使いたい場合はどうなるんですか?
室谷区分支給限度基準額を超えた分は、全額自己負担になります。なのでケアマネジャーとしっかり相談して、限度額内でサービスを組み合わせることが重要です。さて、費用の話が出たので、次は自己負担を減らすための仕組みを見ていきましょう。
自己負担を減らす仕組み — 高額介護サービス費など
佐藤自己負担が1〜3割とはいえ、介護が長引くと積み重なりますよね。何か軽減策はありますか?
:::pointbox{title="自己負担を減らす3つの制度"}
高額介護サービス費: 1ヶ月の介護サービス自己負担が一定額(収入に応じて月1.5万円〜4.4万円)を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です。詳しくは高額介護サービス費をご覧ください。
特定入所者介護サービス費(負担限度額認定): 低所得者が施設入所や短期入所(ショートステイ)を使う際、食費・居住費の自己負担に上限が設けられる制度です。詳しくは負担限度額認定をご覧ください。
高額医療・高額介護合算療養費制度: 同じ世帯で医療費と介護費を合算し、一定額を超えた場合に払い戻される制度。詳しくは高額医療・高額介護合算療養費制度をご覧ください。
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室谷そうなんです。これらをうまく組み合わせると、実際の自己負担はかなり抑えられます。例えば収入の少ない方が施設に入った場合、負担限度額認定を使えば食費・居住費が月1.5万〜3万円程度に抑えられ、さらに医療費との合算でも限度額を超えた分が戻ってきます。
室谷絶対に損です! ただ、これらの制度は基本的に「申請した月から」適用されます。遡及して適用はできないので、早めに市区町村の窓口に相談することをお勧めします。
:::warning{title="申請が遅れると損をする!"}
高額介護サービス費や負担限度額認定は、遡及(さかのぼって)適用されません。該当する可能性があると思ったら、すぐに市区町村の介護保険課または地域包括支援センターへ相談しましょう。
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保険料はいくら?保険料の仕組みを理解しよう
佐藤介護保険料って具体的にどれくらい払うんですか?
室谷保険料は年齢によって違います。65歳以上(第1号)の場合、市区町村ごとに基準額が定められていて、2024年度から2026年度の全国平均は月額6,225円程度です。収入に応じた段階制(9段階)になっていて、低所得者は基準額の0.285倍から、高所得者は1.7倍まで幅があります。
室谷40〜64歳(第2号被保険者)は、加入している健康保険に組み込まれた形で保険料を払います。会社員なら健康保険料の中に含まれていて、会社と折半です。国民健康保険に加入している方は、国民健康保険料の中に介護分として含まれています。なので特別に意識して払っているわけではないんです。
佐藤えっ、じゃあ自分が払ってることすら知らない人も多そうですね(笑)
室谷多いです! 給与明細をよく見ると「介護保険料」の項目があります。40歳の誕生日の翌日が属する月から天引きが始まります。
申請の際のよくある失敗と攻略法
佐藤申請するときに気をつけることって何かありますか?
室谷実務上、よく見かける失敗パターンがいくつかあります。
:::pointbox{title="要介護認定申請でよくある失敗パターン"}
認定調査で「頑張りすぎる」: 調査員が来ると「できる限り自分でやろう」と頑張ってしまい、普段の状態より良く見えてしまうケースが多い。いつも一番悪いときの状態を正直に伝えましょう。
代理人がいないと伝わらない: 本人が認知症や体の痛みで状況を正確に説明できないことがあります。家族や介護者が同席して補足することが重要です。
主治医意見書の医師と日頃のコミュニケーション不足: 主治医意見書は認定に大きく影響します。かかりつけ医に日頃の状態をきちんと伝えておきましょう。
更新申請を忘れる: 認定には有効期間があります。新規・変更申請は原則6ヶ月(3〜12ヶ月の範囲)、更新申請は原則12ヶ月(3〜48ヶ月)。有効期間満了前に更新申請を出さないとサービスが一時停止になります。
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室谷すごく多いんです。「せっかく来てくださったんだから」と歩行や食事などを頑張ってしまう方が多いです。認定調査は「いつもの状態・最も悪い状態」を評価するためのものなので、普段どれだけ大変かをしっかり伝えることが大切です。
佐藤なるほど。じゃあ、申請前に記録をつけておくのもいいですかね?
室谷非常に良いです! 「日常生活の困難リスト」を事前にメモして、調査員に渡すのは有効な方法です。どんな場面でどんな困難があるか、たとえば「お風呂に入るとき転倒しそうになった」「夜中に何度もトイレに起きて危ない」など具体的なエピソードで伝えると、正確に状態が把握してもらえます。
住宅改修費・福祉用具購入費の支給も
佐藤介護保険って、サービス利用だけじゃなくて住宅改修も使えるって聞いたことがあるんですが。
室谷はい、使えます! 要介護認定(要支援1以上)を受けていれば、
住宅改修費として最大20万円(支給額は18万円)の補助が受けられます。具体的には手すりの取り付け、段差の解消、床材の変更(滑りにくいものへ)、引き戸等への扉改修、洋式トイレへの便器取替えなどが対象です。詳しくは
介護保険の住宅改修費支給をご覧ください。
佐藤20万円かあ。実際の工事費に比べたらそんなに多くないかもしれないけど、助かりますね。
室谷そうですね。住宅改修費は引っ越しをしない限り1回(原則)20万円が上限なので、優先度の高いものから使うのが賢明です。また、福祉用具の貸与(レンタル)も介護保険で使えます。車いす、介護ベッド、手すり(工事不要の置き型)、スロープ、歩行器などが月額費用の9割を介護保険が負担してくれます。
制度の基本情報まとめ
佐藤ここまで色々教えてもらいましたが、制度の基本情報をまとめてもらえますか?
| 項目 |
内容 |
| 制度名 |
介護保険制度(要介護認定) |
| 根拠法 |
介護保険法(平成9年法律第123号) |
| 開始年 |
2000年(平成12年)4月 |
| 対象者 |
第1号被保険者(65歳以上)・第2号被保険者(40〜64歳の特定疾病) |
| 申請窓口 |
市区町村の介護保険課または地域包括支援センター |
| 自己負担 |
原則1割(収入に応じ2割・3割) |
| 認定区分 |
要支援1・2、要介護1〜5の7段階 |
| 申請から決定まで |
原則30日以内 |
| 有効期間 |
新規・変更:原則6ヶ月、更新:原則12ヶ月 |
| 実施機関 |
市区町村(保険者) |
| 公式情報 |
厚生労働省 介護保険制度の概要 |
佐藤申請窓口は市区町村なんですね。地域包括支援センターってどこにあるんですか?
室谷各市区町村が設置しているセンターで、地域の高齢者の相談を一手に引き受けています。「○○市 地域包括支援センター」で検索すると、お近くのセンターが出てきます。相談は無料ですし、介護保険の申請も代行してもらえます。ケアマネジャーの紹介もしてくれるので、最初の相談先として最適です。
よくある質問
佐藤親が遠方に住んでいる場合、代理で申請できますか?
室谷できます。親族や成年後見人、ケアマネジャーが代理申請できます。委任状が必要なケースもありますが、地域包括支援センターに相談すれば一緒に対応してもらえます。郵送での申請を受け付けている市区町村も増えています。
室谷認定調査は平日日中が多いですが、多くの市区町村では土曜対応や夕方の時間枠を設けています。介護休暇を使って対応することも有効で、会社員は年5日(複数の対象家族がいる場合は10日)の介護休暇が法律で保証されています。
佐藤要介護認定を受けたくない(施設に入れられそうで怖い)という親をどう説得すればいいですか?
室谷これは難しい問題ですね。ポイントは「認定を受けても施設入所が強制されるわけではない」ことを丁寧に伝えることです。認定はあくまでサービスを受ける「権利を得る」手続きであって、施設に行く義務が生じるわけではありません。在宅でのサービス利用だけでも十分活用できます。
:::warning{title="要介護認定の誤解に注意"}
「要介護認定を受けると施設に入れられる」という誤解は非常に多いです。認定はあくまでサービスを受ける資格を得るための手続きです。認定後もどんなサービスをどの程度使うかは本人や家族が決めます。
:::
佐藤マジですか! それは親に教えてあげないといけませんね。今日は本当にわかりやすく教えてもらいありがとうございました。
室谷介護保険は複雑に見えますが、知っているだけで使える支援が全然変わります。まず「地域包括支援センター」に相談するのが最初の一歩です。費用や手続きのことも含めて、丁寧に案内してもらえますよ。