医療費・支援制度

特定入所者介護サービス費(補足給付)の負担限度額を徹底解説

特別養護老人ホーム等の施設入所やショートステイの食費・居住費が、低所得の人は負担限度額までに軽減される制度。

施設に入ると食費・居住費がかかる!でも「補足給付」で大幅に減る

佐藤
室谷さん、親が介護施設に入ることになったんですが、費用が思ったより高くて。介護保険の自己負担は1〜3割で済むって聞いてたんですけど、食費や部屋代は別途かかるって言われて…。
室谷
ほんとそこ、びっくりしますよね(笑)。介護保険の給付対象になるのはあくまで「介護サービス」の部分で、食費と居住費(部屋代)は原則として全額自己負担なんですよ。特養(特別養護老人ホーム)や老健(介護老人保健施設)に入ると、そこが結構な金額になる。
佐藤
えっ、具体的にどれくらいかかるんですか?
室谷
施設の種類や部屋のタイプによって違いますが、ざっくり言うと食費だけで月に4万〜5万円くらい、居住費(部屋代)は1万〜6万円くらいかかります。合わせると月5万〜11万円程度の追加負担になる計算です。
佐藤
マジですか!介護保険の自己負担に加えてそれは…。
室谷
だからこそ、この「特定入所者介護サービス費(補足給付)」という制度があるんです。低所得の方を対象に、食費・居住費を大幅に軽減してくれる仕組みです。条件を満たせば、食費が月9,000円程度まで下がる場合もあります。
佐藤
ええ!それは全然違いますね。どういう仕組みなんですか?
室谷
国が「これくらいが標準的な費用」という基準費用額を設定していて、そこから「あなたの負担はここまで」という負担限度額を引いた差額を、介護保険から「補足給付」として支給するんです。利用者は負担限度額だけ払えばいい、という仕組みです。

補足給付の利用者負担段階と対象者

誰が対象?利用者負担段階を確認しよう

佐藤
「低所得の方が対象」って言われましたが、自分が当てはまるかどうかはどう判断するんですか?
室谷
補足給付には「第1段階」から「第3段階②」まで4つの段階があって、所得と資産の両方で判定します。まず所得面は世帯全員が市町村民税非課税かどうかが大前提で、さらに年金収入と合計所得の合計額で段階が分かれます。
佐藤
世帯全員が市町村民税非課税じゃないとダメなんですね。
室谷
そう、これが一番のポイントです。本人だけじゃなくて世帯を分離している配偶者も含めて全員が非課税でないといけない。あと、資産面の要件もあって、預貯金や有価証券の合計額が一定以下であることも必要です。
利用者負担段階 主な対象者 所得要件 預貯金(単身)
第1段階 生活保護受給者 要件なし 1,000万円以下
第1段階 老齢福祉年金受給者(世帯全員非課税) 要件なし 1,000万円以下
第2段階 世帯全員が市町村民税非課税 年金収入+所得が82.65万円以下 650万円以下
第3段階① 同上 年金収入+所得が82.65万円超〜120万円以下 550万円以下
第3段階② 同上 年金収入+所得が120万円超 500万円以下
佐藤
「年金収入+合計所得」という計算、どういう意味ですか?
室谷
年金収入には課税年金(老齢年金など)だけでなく、非課税年金(遺族年金・障害年金)も含みます。つまり、「私は税金かかってないから」と思っていても、遺族年金や障害年金があれば合計額が上がる可能性があります。これはよくある見落としなので注意してください。
佐藤
なるほど、遺族年金まで含むんですね。夫婦の場合の預貯金は?
室谷
夫婦の場合は括弧内の金額が適用されます。たとえば第2段階なら1,650万円以下。夫婦ふたりで持っている預貯金や有価証券、現金、投資信託、株式などを全部合計した額で判定します。

:::warning{title="注意: 資産隠しは厳禁!"} 同意書を提出することで、市区町村が金融機関に照会できる仕組みになっています。虚偽の申告をすると給付が取り消されるだけでなく、不正受給として返還請求を受ける場合があります。 :::

佐藤
自分がどの段階に当てはまるかわかったとして、次に気になるのは「実際いくら負担すればいいの?」ですよね。
室谷
そうですね。では段階別の具体的な負担限度額を見ていきましょう。

段階別・施設タイプ別の負担限度額(令和8年8月以降)

佐藤
施設のタイプによっても違うんですか?
室谷
はい、施設の種類と部屋のタイプで変わります。令和8年8月1日からの最新の負担限度額(日額)がこちらです。
項目 第1段階 第2段階 第3段階① 第3段階② 基準費用額
食費 300円 390円 650円 1,420円 1,545円
居住費(多床室・特養等) 0円 430円 430円 530円 915円
居住費(従来型個室・特養等) 380円 480円 880円 980円 1,231円
居住費(ユニット型個室) 880円 880円 1,370円 1,470円 2,066円
佐藤
第1段階だと食費が1日300円!月にすると9,000円ですか。それはかなり助かりますね。
室谷
そうなんです。基準費用額が1,545円(月に4.7万円)なのに、負担は300円(月に0.9万円)まで下がる。その差額を介護保険が補足してくれるというわけです。
佐藤
第2段階でも食費が1日390円、月に1.2万円ですか。居住費の多床室が430円だと合わせて25,000円くらい?かなり違いますね。
室谷
ショートステイ(短期入所)の場合は金額が若干異なります。食費の負担限度額が施設入所の場合と別設定になっているので、ショートステイ利用のときは施設に確認してみてください。

:::pointbox{title="月ごとの負担額の目安(第2段階・多床室・特養の場合)"}

  • 食費: 390円 × 30日 = 1万1,700円
  • 居住費: 430円 × 30日 = 1万2,900円
  • 合計: 月2万4,600円程度

認定なしの場合の標準的な費用(食費4.6万円+居住費2.7万円)と比べると、月3万5,000円以上の軽減になります。 :::

佐藤
差額を計算すると月3万5,000円以上…年間で40万円超の違いになりますね。これは絶対に使わないと損ですよ!
室谷
ところが、申請しないと給付は受けられないんです。自動的にはもらえない制度なので、施設に入ったら(あるいは入る前に)必ず申請が必要です。

申請の流れ: 施設入所前から動くのがコツ

佐藤
具体的にはどうやって申請するんですか?
室谷
申請窓口は居住している市区町村の介護保険担当課(介護保険課・高齢福祉課など)です。全国どこでも同じ制度ですが、申請書の様式は市区町村によって多少異なります。

負担限度額認定証の申請から交付までの流れ

佐藤
「申請した月の初日から適用」って、遡及できないんですね。これは知らないと損しますよね。
室谷
そう、よく聞くのが「3か月前から施設にいたのに、今月申請したら今月分からしか使えなかった」というパターン。だから施設への入所が決まった段階で、早めに申請する意識が大事です。
佐藤
毎年更新もあるんですね。更新を忘れると?
室谷
認定証の有効期限が切れた後は補足給付が受けられなくなります。8月以降も施設を継続利用する場合は、7月末までに更新申請を出すことが必要です。市区町村から5月下旬ごろに案内が届くはずなので、見逃さないようにしましょう。

:::warning{title="転居・転入した場合は要注意"} 施設から別の市区町村に住所が変わる(住所地特例なども含む)と、認定証は自動的には引き継がれません。新しい市区町村で改めて申請が必要です。転居した場合は必ず新しい保険者(市区町村)の介護保険担当課に相談してください。 :::

佐藤
では次に、どんな施設がこの制度の対象になるのかを教えてください。

対象施設はどこ?ショートステイも使える

佐藤
特養や老健が対象なのはわかりましたが、他にはどんな施設が対象になりますか?
室谷
補足給付の対象施設は主にこちらです。入居型の施設だけでなく、ショートステイも含まれているのがポイントです。
施設の種類 略称
介護老人福祉施設 特養(特別養護老人ホーム)
介護老人保健施設 老健
介護医療院
地域密着型介護老人福祉施設 小規模特養
短期入所生活介護 ショートステイ(生活介護)
短期入所療養介護 ショートステイ(療養介護)
佐藤
ショートステイを利用している間も対象になるんですね。
室谷
はい。ただしグループホームや有料老人ホームは対象外です。あくまで介護保険施設として指定を受けた施設のみが対象になります。自分が利用する(または利用中の)施設が対象かどうかは、施設側に確認するのが確実です。
佐藤
有料老人ホームは対象外か…。有料老人ホームに入った場合はどうなるんですか?
室谷
有料老人ホームの場合、施設独自の軽減制度や社会福祉法人による利用者負担軽減制度を利用できる場合があります。ただし補足給付とは別の仕組みなので、それぞれの施設や自治体に確認が必要です。

:::pointbox{title="社会福祉法人等による利用者負担軽減制度"} 補足給付と別に、社会福祉法人が運営する施設では「社会福祉法人等利用者負担軽減制度」という制度があります。補足給付の対象者の中でも特に低所得の方を対象に、食費・居住費に加えて介護サービスの利用者負担も軽減されます。ただし事業を実施していない法人もあります。入所予定の施設に確認してみましょう。 :::

佐藤
なるほど。次は制度を最大限使うためのポイントをまとめてほしいです。

審査・攻略のポイント: 何がチェックされるか

佐藤
申請したら全員通るわけじゃないですよね?審査ではどういうことを見られるんですか?
室谷
大きく分けると「所得」と「資産」の2軸で審査されます。所得は前年度のものが基準で、市区町村が税情報から確認します。問題になりやすいのが資産の部分です。
佐藤
資産とは具体的にどんなものですか?
室谷
預貯金、有価証券(株式・投資信託)、金(現物)、現金などが対象です。生命保険の解約返戻金は対象外ですが、不動産は別途特例の話があります。通帳のコピーは直近2か月分が必要になることが多いです。
佐藤
夫婦の場合、配偶者の資産も全部合計するんですね。
室谷
そう。「世帯分離している配偶者」も含みます。施設に入るにあたって世帯分離している場合も、配偶者は配偶者として資産を合算して判定されます。ここで「別世帯だから関係ない」と思うと認識が違うので注意が必要です。

:::pointbox{title="申請で確認しておくべき5つのポイント"}

  • 預貯金額の確認: 通帳・有価証券の評価額を事前に計算しておく
  • 非課税年金の把握: 遺族年金・障害年金も年金収入として含まれる
  • 配偶者分も確認: 世帯分離していても配偶者の資産・所得は合算
  • 施設のタイプ確認: ユニット型・従来型・多床室で負担額が大きく違う
  • 申請タイミング: 施設入所前または入所直後に申請(遡及不可) :::
佐藤
なるほど。世帯分離の話が出ましたが、節税対策として世帯分離するケースがありますよね。補足給付への影響はどうですか?
室谷
世帯分離自体は制度上禁止されていませんが、補足給付の判定では「世帯を分離している配偶者」は同じ世帯として扱うルールになっています。つまり、世帯分離しても配偶者の所得・資産は合算されるので、その点だけで有利・不利が変わることはありません。
佐藤
正直に申告することが大切ですね。では次に、よく聞かれる疑問事項を教えてください。

よくある疑問と Q&A

佐藤
「私の場合は対象になるの?」という疑問、よくありそうですが、まとめてもらえますか?
室谷
よくある疑問をまとめましょう。
佐藤
まず「施設に入ったばかりでも申請できますか?」という疑問。
室谷
もちろんできます!というか、入所直後にすぐ申請するのがベストです。申請月の初日から適用されるので、入所した月に申請すれば最初から軽減が受けられます。
佐藤
「住民税は非課税だが、子どもと同じ世帯に住んでいる。対象になりますか?」
室谷
これが一番多い「対象外」のパターンです。子どもが住民税を払っている(課税されている)場合、同一世帯に課税者がいる場合は原則対象外になります。この場合は世帯分離を検討する余地があります。ただし世帯分離については生活実態との一致が求められる場合もあるので、市区町村に相談してみてください。
佐藤
「施設に入っているのに認定証を持っていない。今から申請できますか?」
室谷
できます。ただし繰り返しになりますが、遡及適用はできません。今月申請したら今月分から適用されます。1日でも早く申請することが大切です。
佐藤
「認定証はどこに提示するんですか?」
室谷
入所している施設の担当者(施設ケアマネやフロントなど)に渡してください。施設側で保管し、毎月の請求に反映してもらえます。紛失した場合は市区町村で再発行を申請できます。

制度の基本情報まとめ

佐藤
あらためて制度の基本情報をまとめてもらえますか?
室谷
はい。制度の概要をまとめた表です。
項目 内容
制度名 特定入所者介護サービス費(負担限度額認定・補足給付)
根拠法令 介護保険法 第51条の3(居宅サービス)、第61条の3(施設サービス)
実施機関 全国の市区町村(介護保険課・高齢福祉課など)
対象施設 特養・老健・介護医療院・ショートステイ等
対象者 世帯全員が市町村民税非課税かつ資産が一定以下の方
認定有効期間 毎年8月1日〜翌年7月31日(申請月の初日から適用)
申請窓口 居住市区町村の介護保険担当課
主な提出書類 申請書・同意書、被保険者証、通帳等の写し、本人確認書類
最新改定 令和8年8月1日より食費・居住費の負担限度額が一部改定
問い合わせ先 各市区町村の介護保険担当窓口(介護保険課・高齢福祉課等)
佐藤
この制度に関連する他の介護・医療費軽減の制度も教えてもらえますか?
室谷
介護費用全般でお金が心配な方に知っておいてほしい制度がいくつかあります。

関連する制度との組み合わせ

佐藤
補足給付と一緒に使える制度ってありますか?
室谷
介護費用の負担を軽減する制度は、補足給付だけではありません。組み合わせて使うことで、さらに支出を抑えられる可能性があります。
佐藤
どんな制度があるんですか?
室谷
まず介護保険制度(要介護認定)です。補足給付を利用するには要介護・要支援認定を受けて介護保険の被保険者になっていることが前提です。まだ認定を受けていない方は、まずここからスタートです。
佐藤
えっ、認定が前提なんですか。では施設入所を考えている段階で、認定の申請も同時並行でやる必要があるんですね。
室谷
そうです。次に高額医療・高額介護合算療養費制度。医療費と介護費用を合算して、年間の自己負担額が一定の上限を超えた場合に払い戻しが受けられる制度です。施設入所中に医療費もかかる場合は、両方の合計額で計算されます。
佐藤
医療費と介護費用、両方高い場合は合算して戻ってくる可能性があるんですね。
室谷
もし介護とは別に医療費が家計を圧迫しているなら高額療養費制度も確認してみてください。月ごとの医療費自己負担額に上限があって、超えた分が後から戻ってくる仕組みです。施設入所中も医療費は別建てなので、高額療養費の対象になることがあります。
佐藤
なるほど、複数の制度を知っておくことが大事なんですね。
室谷
制度を知らないと使えない。これに尽きます。親が施設に入るタイミングで、まとめて市区町村の窓口で相談することをおすすめします。「こういう状況ですが、使える制度を全部教えてほしい」と言えば、担当者が整理してくれますよ。

:::pointbox{title="介護施設入所時に確認すべき3つの制度"}

佐藤
ありがとうございます。最後に、この制度を使う上で一番大事なことをまとめてもらえますか?
室谷
3つだけ覚えてください。1つ目は「入所した月に申請」。遡及できないので、知った瞬間に動く。2つ目は「毎年7月末に更新」。5月に届く案内を見逃さない。3つ目は「世帯全員の所得・資産を確認」。配偶者分も含めて正確に把握してから申請する。この3つを押さえておけば、制度を最大限に活用できます。
佐藤
明快にまとめてもらえました!(笑)親の施設入所が決まったら、まず市区町村の介護保険課に相談してみます。
室谷
ぜひ。担当者への「うちの場合はどうなりますか?」という一言が、大きな節約につながりますよ。

公式情報へのリンク

佐藤
最後に公式情報のリンクもまとめてもらえますか?
室谷
厚生労働省が発行するリーフレットや市区町村の公式ページで、常に最新の負担限度額を確認するようにしてください。特に毎年8月に改定が入ることが多いので、更新のタイミングで必ず最新版を確認する習慣をつけておくと安心です。
情報源 内容
厚生労働省 補足給付リーフレット 制度全体の概要・最新の負担限度額
厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1506 令和8年8月からの改定内容詳細
各市区町村の介護保険担当課 申請書類のダウンロード・個別相談
佐藤
ありがとうございました!制度のことがよくわかりました。これで安心して親の施設入所の手続きを進められそうです。
室谷
書類の準備から申請まで、何かわからないことが出てきたら市区町村の担当窓口に気軽に相談してみてください。介護保険課の職員は制度のプロですから、個別の状況に応じてていねいに教えてもらえますよ。

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、制度は改正される場合があります。最新の要件・金額は必ず上記の公式ページや窓口でご確認ください。