医療費・支援制度

高額療養費制度を徹底解説|自己負担の上限額と申請方法【2026年版】

1か月の医療費の自己負担が上限額を超えた分が払い戻される公的制度。所得や年齢で上限額が決まる。慢性疾患・長期治療で医療費がかさむ患者に最重要。

高額療養費って何?まず基本から教えてください

佐藤
室谷さん、「高額療養費制度」ってよく聞くんですけど、これって一言でいうとどんな制度なんですか?
室谷
ざっくりいうと、1か月の医療費の自己負担が「上限額」を超えたら、超えた分を公的機関が払い戻してくれる制度です。重い病気で入院が長引いたり、手術で医療費が一気にかさんだりしたとき、家計が壊滅しないよう守ってくれるセーフティネットですね。
佐藤
えっ、上限があるんですか!ということは、どんなに高額な治療を受けても、自己負担には天井がある?
室谷
そうなんです。たとえば年収が中くらいの方(目安: 年収370万〜770万円)が、総医療費100万円の手術を受けたとします。通常3割負担だと30万円払うことになりますよね。でもこの制度のおかげで、実際の自己負担はざっくり8〜9万円程度まで圧縮されるんです。
佐藤
30万円が9万円に!それは大きいですね。
室谷
しかも払い戻しを受けられるのは後払いだけじゃないんです。事前に「限度額適用認定証」を用意して医療機関に見せれば、窓口で最初から上限額しか払わなくていい。マイナ保険証があれば認定証なしでも同様の扱いを受けられますよ。

高額療養費制度の仕組み図

自己負担の上限額、所得によってどう違うの?

佐藤
上限額って一律じゃないんですよね?所得によって変わると聞きました。
室谷
はい、所得区分によって上限額が細かく設定されています。まず70歳未満の方を見てみましょう。大きく5段階です。
区分 標準報酬月額の目安 自己負担限度額(月)
区分ア 83万円以上 252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
区分イ 53万〜79万円 167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
区分ウ 28万〜50万円 80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
区分エ 26万円以下 57,600円(定額)
区分オ(低所得者) 住民税非課税世帯 35,400円(定額)
佐藤
区分アとかイとかは計算式になってますね。これはどういう意味ですか?
室谷
区分ア〜ウは高額になればなるほど少し加算される方式です。たとえば区分ウの方が総医療費100万円の手術を受けた場合、計算すると…80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円になります。定額の区分エ・オより所得が高い層は、この計算式でちょっと多めに負担する仕組みですね。
佐藤
なるほど!じゃあ70歳以上の方はまた違うんですか?
室谷
はい、70歳以上は外来(通院)と入院で別々に上限が設定されているのが特徴です。こちらが一覧です。
区分 外来(個人ごと) 外来・入院(世帯) 多数該当
現役並みIII(報酬月額83万円以上) 252,600円+1% ← 同左 140,100円
現役並みII(53万〜79万円) 167,400円+1% ← 同左 93,000円
現役並みI(28万〜50万円) 80,100円+1% ← 同左 44,400円
一般区分 18,000円 57,600円 44,400円
低所得II(住民税非課税) 8,000円 24,600円
低所得I(所得なし) 8,000円 15,000円
佐藤
70歳以上の一般区分、外来は18,000円なんですね。かなり低い!
室谷
70歳以上の外来(個人・一般区分)には年間144,000円という年間累積の上限もあります(前年8月〜翌年7月の計算期間で適用)。月ごとの18,000円上限に加え、年間でも天井がある、いわば二重の保護ですね。高齢になるほど通院が多くなることを踏まえた特例です。ちなみに70歳以上の「一般区分」は、年収が約156万〜約383万円の方が該当します。
佐藤
制度の細かさに驚きます。次は「世帯合算」と「多数回該当」も教えてください!

世帯合算・多数回該当でさらに軽減できる

世帯合算と多数回該当の説明図

佐藤
「世帯合算」って何ですか?世帯でまとめて計算してくれるということ?
室谷
正解です!同じ月に家族が複数の医療機関にかかった場合、それぞれの自己負担額を合算して上限を超えた分を払い戻してもらえるんです。ただし70歳未満の場合は「1件あたり21,000円以上」の自己負担がある分だけが合算対象になります。
佐藤
21,000円という足切りがあるんですね。70歳以上は違うんですか?
室谷
70歳以上の場合は金額条件なく全額合算できます。たとえばご夫婦ともに高齢で、旦那さんが通院で17,000円、奥さんが入院で50,000円の自己負担があったとすると、合算すれば67,000円を世帯の上限額(57,600円)と比べて、超えた9,400円が戻ってくる。(笑)家族でかかると一人ひとりの負担を束ねて申請できるのは大きいですよね。
佐藤
ほんとに!で、もうひとつの「多数回該当」は?
室谷
直近12か月以内に高額療養費の支給を受けた月が3か月以上ある場合、4か月目からは「多数回該当」として上限額がさらに下がります。長期治療している方向けのさらなる救済ですね。
区分 通常の上限額 多数回該当(4か月目以降)
区分ア 252,600円+1% 140,100円
区分イ 167,400円+1% 93,000円
区分ウ 80,100円+1% 44,400円
区分エ 57,600円 44,400円
区分オ 35,400円 24,600円
佐藤
マジですか!3か月以上の患者さんは、4か月目から金額がさらにグッと下がるんですね。
室谷
がん治療や腎透析など、長期にわたる治療をしている方にとっては非常に大きい救済になります。制度の中でも特に知っておいてほしいポイントです。

:::pointbox{title="世帯合算・多数回該当のポイント"}

  • 世帯合算: 同月内に家族複数人が受診 → 自己負担を束ねて申請(70歳未満は1件21,000円以上が対象)
  • 多数回該当: 直近12か月で高額療養費の支給が3か月以上 → 4か月目から上限額がさらに低下
  • どちらも「申請が必要」。自動的に戻ってこないので注意 :::

申請の流れ——どこに・どうやって申請するの?

佐藤
申請って具体的にどうすればいいんでしょうか?病院の窓口でやるのかな?
室谷
大きく分けて2パターンあります。ひとつは「事後に払い戻す」方法、もうひとつは「最初から上限額しか払わない」方法です。
佐藤
やっぱりマイナ保険証が一番楽そうですね。
室谷
そうですね。ただし、低所得区分(区分オ・低所得I・II)の方は「限度額適用・標準負担額減額認定証」という別の証明書も必要になるケースがあります。こちらは入院時の食事代の減額にも関係するので、国保の担当窓口や協会けんぽ支部に確認してみてください。

:::warning{title="申請先は加入している保険によって異なります"}

  • 協会けんぽ加入者(中小企業の会社員等)→ 都道府県の協会けんぽ支部
  • 組合健保加入者(大企業等)→ 所属する健康保険組合
  • 国民健康保険(国保)加入者(自営業・退職者等)→ お住まいの市区町村の窓口
  • 後期高齢者医療制度加入者(75歳以上)→ 都道府県の後期高齢者医療広域連合(窓口は市区町村) :::
佐藤
申請先が保険の種類によって全然違うんですね。これは混乱しそう(笑)
室谷
保険証の発行元に聞けば間違いありません。次は最近変わった制度の話をしますね。

令和8年8月の制度改正——「年間上限」が新設されました

佐藤
そういえば、最近制度が変わったとニュースで見た気がします。どんな変更ですか?
室谷
2026年(令和8年)8月から大きな改正が入りました。一番の目玉は「年間上限」の新設です。これまでは月ごとの上限しかなかったんですが、今後は8月〜翌年7月を1単位として年間の自己負担にも上限が設けられます。
佐藤
毎月上限で払っていても、それがどんどん積み上がる問題があったわけですね。
室谷
まさに。慢性疾患の方だと毎月上限ギリギリ払い続けても、年単位で見ると相当な金額になる。そこに天井をつける改正です。それに加えて、2027年(令和9年)8月からは年収200万円未満の課税世帯の多数回該当額がさらに25%引き下げられる予定です。
佐藤
これは患者さんにとってはプラスですね!ただ…制度が変わるということは、今の数字が将来も同じとは限らない?
室谷
おっしゃる通りです。本記事に掲載している上限額・計算式は、2026年6月時点の情報をもとにしています。制度は改正されうるため、実際に申請する際は厚生労働省や加入している保険者の最新情報を必ず確認してください

:::warning{title="制度は随時改正されます"} 本記事の数値は2026年6月時点のものです。令和8年8月・令和9年8月と段階的な改正が予定されており、上限額・計算方式が変わる可能性があります。申請前に必ず厚生労働省や加入保険者の最新情報をご確認ください。 :::


制度まとめ・基本情報

佐藤
全体を通して整理してほしいんですが、この制度を使える人って誰でも使えるんですか?
室谷
公的医療保険に加入しているすべての方が対象です。協会けんぽ・組合健保・国民健康保険・後期高齢者医療制度——どの保険でも高額療養費制度が適用されます。ただし、保険適用外の治療費(自由診療・差額ベッド代・食費など)は対象外なので注意を。
佐藤
保険証があれば全員対象なんですね!
項目 内容
制度名 高額療養費制度
所管 厚生労働省
対象者 公的医療保険(健保・国保・後期高齢者医療)加入者全員
上限設定 月単位(令和8年8月から年間上限も追加)
申請先 加入している健康保険の窓口(協会けんぽ支部・健保組合・市区町村等)
払い戻しまでの期間 受診から2〜3か月程度(事後申請の場合)
対象外費用 自由診療・差額ベッド代・食事代・入院時日用品代等
公式情報 厚生労働省 高額療養費制度

:::pointbox{title="高額療養費制度を使いこなすための3つのコツ"}

  • マイナ保険証を活用: 窓口から自動的に上限額の適用を受けられる。事前手続き不要で最も手軽
  • 世帯合算を忘れない: 家族が同月に複数受診していたら、まとめて申請して取りこぼしを防ぐ
  • 多数回該当に注意: 3か月以上高額療養費に該当したら、4か月目は必ず多数回該当で申請を :::

よくある質問

佐藤
最後にいくつか気になる点を聞いてもいいですか?まず、高額な歯の治療費もこの制度に含まれますか?
室谷
歯科治療の場合、保険適用の治療(虫歯治療・抜歯など)は対象です。ただしインプラントや金属のクラウンなど、自費診療の部分は対象外になります。保険診療の自己負担分だけが計算に入ります。
佐藤
じゃあ、入院中の食事代は?
室谷
入院時の食事代は高額療養費の計算には含まれません。ただし低所得者の方は「標準負担額減額認定証」を提示することで食事代が軽減される別の制度があります。
佐藤
なるほど。最後に、申請を忘れていた場合は後から請求できますか?
室谷
できます!高額療養費の払い戻し請求権の時効は2年です。医療費の支払日から2年以内であれば、さかのぼって申請が可能です。「ずっと高い医療費を払っていた」という方も、ぜひ一度確認してみてください。

一次情報・申請先: 厚生労働省/各健康保険

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、制度は改正される場合があります。最新の要件・金額は必ず上記の公式ページや窓口でご確認ください。