医療費・支援制度

心身障害者医療費助成制度(マル障)を徹底解説【2026年版】

重度の障害がある人の保険診療自己負担分を自治体が助成する制度。対象となる手帳等級や所得制限は自治体により異なる。

マル障って何の略ですか?

佐藤
「マル障」って略称をよく聞くんですけど、これって正式には何という制度なんですか?
室谷
正式名称は「重度心身障害者医療費助成制度」と言います。「マル障」は受給者証に書かれた法別番号「80」の前に丸印が付いていることから来た通称で、医療現場でも行政でも広く使われています。
佐藤
そういう由来だったんですね!ところで、これって国の制度ですよね?
室谷
これが、実は国の制度ではないんです。都道府県と市区町村が独自に実施している制度なので、住んでいる地域によって対象者の範囲や助成の内容がかなり違います。「マル障がある」という点は全国共通ですが、使える条件は自治体ごとに確認が必要です。
佐藤
えっ、そうなんですか!じゃあどんな目的でできた制度なんですか?
室谷
重度の障害がある方は、継続的に医療機関にかかるケースが多いですよね。保険診療の自己負担分が毎月積み重なると、生活への影響が大きい。それを自治体が補って、医療へのアクセスを守るための制度です。実際に東京都は1970年代から始めており、歴史の長い仕組みです。
佐藤
なるほど。身近なようで知らないことだらけです。次は誰が対象なのかを教えてください。

対象者はどんな方ですか?

マル障(重度心身障害者医療費助成制度)の対象者を図解したフラットデザインのインフォグラフィック。身体障害者手帳1・2級、愛の手帳1・2度、精神障害者保健福祉手帳1級の3グループを白背景にアクセントカラー#FACC15で視覚的に整理した図

佐藤
対象になる人ってどんな方なんですか?重度の障害がある方、というのはわかるんですけど、具体的にはどう判断するんでしょう?
室谷
手帳の種類と等級で判断します。大きく3つに分かれています。一つ目が身体障害者手帳の1級・2級を持っている方。ただし、内部障害(心臓・腎臓・呼吸器・膀胱・直腸・小腸・HIV感染による免疫・肝臓機能障害)に関しては、3級の方も対象に含まれることがあります。二つ目が愛の手帳(療育手帳)の1度・2度の方。知的障害のある方が対象です。三つ目が精神障害者保健福祉手帳の1級の方。精神障害の方が対象になったのは2019年1月1日からと比較的新しいです。
佐藤
3つ全部手帳が必要ってわけじゃなくて、いずれか一つを持っていれば対象、ということですか?
室谷
そうです、いずれか一つで十分です(笑)。ただ、その後に確認が必要な「対象外になる条件」もあるので、そこが重要です。
佐藤
対象外になる条件というのは?
室谷
主なものを挙げると、まず所得制限を超えている場合は対象外です。これは後でじっくり説明します。次に生活保護を受けている方は対象外です。生活保護制度で医療費がカバーされるためです。そして65歳以上になって初めて要件に該当した方は申請できません。65歳になる前日までに申請していることが条件です。これは「後から取得した障害認定」への対応を限定するためです。
佐藤
65歳というのは一つのラインになっているんですね。
室谷
そうなんです。65歳前から対象になっていて、かつ65歳前日までに申請していた方は引き続き受けられます。でも、「65歳になってから初めて手帳を取得した」という方は、原則として対象外になります。ただし、65歳前に申請できなかった正当な理由がある場合(都外在住だったなど)は、特例的に認められることもあります。
佐藤
細かい条件が積み重なっているんですね。次は所得制限について教えてください。

所得制限のしくみを教えてください

佐藤
所得制限があるということですが、これはどう計算するんですか?
室谷
都道府県や市区町村によって所得制限の基準が少し違います。東京都を例に取ると、扶養親族の数に応じて所得制限基準額が変わります
扶養親族数 所得制限基準額(東京都)
0人 366万1,000円
1人 404万1,000円
2人 442万1,000円
3人 480万1,000円
4人 518万1,000円
5人 556万1,000円
6人以上 1人追加ごとに38万円加算
(適用期間) 令和7年9月1日〜令和8年8月31日(令和6年中所得)
佐藤
収入じゃなくて「所得」なんですね。そのへんの計算がよくわからないんですが…
室谷
「所得」は収入から必要経費や給与所得控除を引いた後の金額、つまり税金の計算に使う基礎になる額です。さらにマル障では、この所得から一部の控除を差し引いたものが判定に使われます。雑損控除・医療費控除・社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・障害者控除・特別障害者控除・寡婦(夫)控除・勤労学生控除などが控除の対象になります。
佐藤
控除を引いた後で判定するんだから、実際の収入がある程度あっても制度を使えるケースがある、ということですね?
室谷
そのとおりです。特に医療費控除や障害者控除は金額が大きいですから、「給料は〇〇円あるから対象外かも」と思っている方が、実は使えるケースもあります。まずは窓口で相談してみることを強くすすめます
佐藤
ちなみに所得の確認は毎年されるんですか?
室谷
はい、毎年8月1日から翌年7月31日を「判定期間」として更新されます。1月〜8月の申請は前々年の所得、9月〜12月の申請は前年の所得で判断されます。自治体によって若干の違いがありますが、毎年所得確認があるので前年の所得で自動更新されるイメージです。
佐藤
毎年自動で確認してくれるなら安心ですね。次は実際の助成の中身を教えてください。

何がどこまで助成されますか?

マル障の助成範囲を図解したインフォグラフィック。対象(保険診療の自己負担分、薬剤費等)と対象外(差額ベッド代、食事療養費、保険適用外)を二分割で白背景・#FACC15アクセントカラーで整理した図

佐藤
実際に使うと、どんな医療費が助成されるんですか?
室谷
健康保険の対象となる医療費・薬剤費が助成対象です。入院・外来・歯科・調剤・訪問看護など、基本的な保険診療のほぼすべてをカバーします。
佐藤
逆に対象外になるものは何ですか?
室谷
対象外になる主なものはこちらです。

:::warning{title="マル障で助成されないもの(要注意)"}

  • 差額ベッド代(個室などの特別料金)
  • 入院時の食事療養標準負担額(食事代の自己負担分)
  • 予防接種・健康診断
  • 薬の容器代
  • 保険が適用されない先進医療・自由診療
  • 学校でのケガで日本スポーツ振興センターの給付対象になるもの
  • 高額療養費として健康保険から支給される分 :::
佐藤
食事代が対象外なんですね。入院が長くなると食事代もばかにならないですよね…
室谷
そこは注意点です。ただし、住民税非課税の方は食事代の自己負担が別の制度で軽減されますし、「限度額適用・標準負担額減額認定証」を提示することで対応できるケースもあります。
佐藤
実際の窓口での支払い方を教えてください。毎回計算が必要なんですか?
室谷
いいえ、基本は受給者証と健康保険証を窓口に一緒に提示するだけです。これが「現物給付方式」と呼ばれる方法で、窓口での支払いが自動的に計算されます。東京都の場合、住民税課税の方は「マル障一部負担金」として一定額を支払い、非課税の方は入院食事療養費以外の自己負担がほぼなくなります。自治体によって一部負担の有無が違いますが、大阪市では1医療機関・薬局・訪問看護ステーションごとに1日最大500円、月の合計最大3,000円の自己負担があります。
佐藤
都道府県外の病院に行ったときはどうなりますか?
室谷
その場合は「償還払い方式」に切り替わります。いったん窓口で全額を支払い、後日お住まいの自治体の窓口に申請して払い戻しを受ける仕組みです。領収書を必ず保管しておくことが大事です。
佐藤
なるほど、使い方のポイントがわかりました。次は申請の流れを教えてください。

申請の流れを教えてください

佐藤
実際にどうやって申請すればいいんですか?
室谷
申請先はお住まいの区市役所・町村役場の担当窓口です。障害福祉担当課や国保医療担当課が窓口になることが多いです。
佐藤
意外とシンプルですね。準備するものさえ揃えれば、そんなに難しくない感じがします。
室谷
そうです。一度受給者証を取得してしまえば、あとは窓口で提示するだけです。ポイントは、引っ越しをしたときに速やかに手続きを変更すること。転居で自治体が変わると受給者証の有効範囲も変わります。必ず新住所の自治体に届け出てください。
佐藤
転居の場合は新たに申請し直すんですか?
室谷
都内転居なら「交付状況連絡票」の手続きで比較的スムーズに引き継げますが、都道府県をまたぐ転居では一から申請が必要になることが多いです。制度の内容も変わりますし、転居が決まったら早めに新住所の自治体に確認することをおすすめします。
佐藤
わかりました。申請の流れはわかったんですが、審査で落ちないためのポイントってありますか?

申請を通すためのポイント

:::pointbox{title="審査通過のための3つのポイント"}

  • 所得確認を事前に: 昨年の確定申告書や源泉徴収票で控除後の所得額をおおよそ計算しておく。医療費控除や障害者控除が使える場合は大きく下がる
  • 申請は手帳取得後すぐに: 手帳を取得した月の翌月から助成が始まるケースが多い。早く申請するほど早く使える
  • 65歳の誕生日前日が重要: 65歳になってから初めて手帳を取得した場合は対象外になる。手帳の申請が65歳に近いなら急いで :::
佐藤
「申請が遅れると損」ってことですね。
室谷
そうです。また、「所得制限で無理かも」と思って申請を諦める方が多いですが、控除を考慮すると対象になるケースがかなりあります。まず窓口に行ってみることが大切です。窓口では所得制限の計算を手伝ってくれますよ。
佐藤
遠慮せずに相談しに行ったほうがいいんですね。
室谷
まったくそのとおりです(笑)。もう一つ重要なのが、マイナンバーとの連携です。マイナンバーを使えば所得確認書類の提出が省略できる自治体も増えています。マイナンバーカードを持っている方は必ず持参してください。

他の制度との組み合わせ

佐藤
マル障と一緒に使える制度ってありますか?
室谷
複数の制度を組み合わせることで、実質的な自己負担をほぼゼロに近づけることが可能です。主な組み合わせを整理しましょう。
制度名 マル障との関係
高額療養費制度 同一月の医療費上限を設定。マル障と組み合わせで残額を圧縮
自立支援医療(精神通院医療) マル障より優先適用。精神疾患の通院は自立支援が先に使われる
指定難病の医療費助成制度 難病がある場合に優先適用。自己負担残額にマル障が使える
障害年金 マル障とは別制度。所得判定に含まれない(障害年金は非課税所得)
佐藤
自立支援医療が優先されるんですね。精神障害の方でマル障と両方該当する場合は、どちらを使うんですか?
室谷
自立支援医療が先に適用されます。自立支援医療で残った自己負担分にマル障が適用される、という順番です。ただし、自立支援医療は精神通院に特化した制度なので、精神通院以外の医療はマル障のみが使えます。
佐藤
制度が重なる場合はどちらかを選ぶのではなく、重ねて使えるんですね。
室谷
基本的にはそうです。ただし、マル障受給者証とマル親(親子家庭等医療費助成)・マル乳(乳幼児医療費助成)・マル子(子ども医療費助成)は同一人に対して重複発行されないので注意が必要です。重複対象になる方は申請時に窓口で相談してください。

:::pointbox{title="障害年金との関係(よくある誤解)"}

  • 障害年金は「非課税所得」なので、マル障の所得制限の計算に含まれません
  • 障害年金を受給していても所得制限でアウトになることはないので安心してください
  • ただし、給与所得・事業所得・不動産所得などは対象になります :::

制度の地域差を理解する

佐藤
自治体によって違うとおっしゃっていましたが、どのくらい違いがあるんですか?
室谷
結構大きな違いがあります。主な違いをまとめましょう。
項目 東京都(例) 大阪市(例)
精神障害者保健福祉手帳1級 対象(2019年1月〜) 対象
所得制限基準(扶養なし) 366万1,000円 479万4,000円(令和7年10月〜)
窓口自己負担 住民税課税者のみ発生 1日500円・月3,000円上限
対象地域 都内医療機関で現物給付 府内医療機関で現物給付
佐藤
所得制限だけでもこんなに違うんですね(笑)。
室谷
そうなんですよ。だから「ほかの都道府県の友達は使えると言っていたのに自分は使えない」というケースも起こります。制度の詳細は必ず自分の住んでいる自治体のウェブサイトか窓口で確認してください。

:::warning{title="引っ越し後は手続き必須!"} 都道府県をまたいで引っ越した場合、マル障受給者証は新しい住所地では使えません。転居先の自治体で改めて申請が必要です。旧住所の受給者証を使い続けると、後日請求が来ることがあります。転居後は速やかに新住所地の窓口に相談しましょう。 :::

佐藤
引っ越しのときに要注意なんですね。次によくある質問をいくつか教えてください。

よくある質問

佐藤
マル障についてよくある質問ってどんなものですか?
室谷
窓口でよく聞かれる質問をまとめました。
佐藤
まず、「申請したらいつから使えますか?」
室谷
申請月の翌月1日から有効になるケースが多いです。自治体によっては申請月から有効になる場合もあります。できるだけ月初に申請すると損が少ないです。
佐藤
次に、「更新手続きは必要ですか?」
室谷
受給者証の更新は年に一度です。自治体から案内が届いて、所得確認書類を提出したり窓口で手続きをしたりします。ただし自治体によってはマイナンバーを使った情報連携で自動更新される場合もあります。
佐藤
「マイナ保険証だけでもマル障は使えますか?」
室谷
マイナ保険証で保険資格の確認ができるようになっていますが、マル障受給者証(重度心身障害者医療費受給者証)は別途紙の受給者証を提示する必要があります。マイナ保険証だけでは不十分なので、受給者証も必ず持参してください。
佐藤
「手帳の等級が変わったら手続きが必要ですか?」
室谷
等級が上がって対象等級になった場合は新たに申請できます。逆に等級が下がって対象外になった場合は届け出が必要です。手帳の変更があったら必ず担当窓口に確認してください。
佐藤
「都道府県外の病院に緊急入院した場合はどうなりますか?」
室谷
緊急の場合でも、まずは全額を立て替えて支払い、その後に領収書を持って自治体の窓口で償還払いの申請をしてください。期限がある自治体が多いので、できるだけ早めに申請することが大切です。

制度のまとめと活用のポイント

佐藤
全体像がかなり見えてきました。最後にまとめをお願いします。
室谷
マル障のポイントを3行でまとめるとこうなります。

:::pointbox{title="マル障のまとめ"}

  • 対象: 重度の障害がある方(身体障害者手帳1・2級、療育手帳A判定、精神障害者保健福祉手帳1級など)
  • 内容: 健康保険の自己負担分(1〜3割)を自治体が助成。窓口で受給者証を提示するだけ
  • 条件: 所得制限あり(控除後の所得が基準額以内)・65歳前の申請が原則 :::
佐藤
「使えるかもしれない」と思ったら、とにかく窓口に行ってみることが大切ですね。
室谷
そのとおりです。制度の詳細は自治体によって異なりますから、お住まいの区市役所・町村役場の窓口に直接相談するのが最も確実です。
項目 内容
制度名 心身障害者医療費助成制度(マル障・重度心身障害者医療費助成制度)
実施主体 都道府県・市区町村
申請窓口 お住まいの区市役所・町村役場の障害福祉担当窓口
助成内容 健康保険の自己負担分(保険診療の医療費・薬剤費等)
対象 身体障害者手帳1・2級 / 療育手帳A判定 / 精神障害者保健福祉手帳1級
所得制限 あり(扶養状況や控除により基準額が異なる)
参考(東京都公式) 東京都福祉局 心身障害者医療費助成制度(マル障)

:::pointbox{title="お問い合わせ先"}

:::warning{title="制度の内容は自治体によって異なります"} 本記事は主に東京都・大阪市・群馬県の情報を参考にしていますが、所得制限額・自己負担額・申請手続きはお住まいの自治体によって異なります。必ずお住まいの自治体の公式ページや窓口でご確認ください。 :::

佐藤
重度の障害がある方やそのご家族には、ぜひ知っておいてほしい制度ですね。
室谷
そうです。知らないまま医療費を全額支払い続けている方が実際にいます。ぜひ周囲にも教えてあげてください。また、障害年金高額療養費制度など、組み合わせることで負担をさらに減らせる制度もありますので、ぜひ合わせてチェックしてみてください。

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、制度は改正される場合があります。最新の要件・金額は必ず上記の公式ページや窓口でご確認ください。