医療費・支援制度

予防接種健康被害救済制度の医療費助成を徹底解説【2026年版】

定期予防接種などによる健康被害が認定された場合に、医療費などを公費助成する救済制度。申請窓口と必要書類を整理する。

佐藤
室谷さん、ちょっと聞いていいですか?去年、子どもがインフルエンザワクチンを打った後に高熱と腫れが出て、1週間くらい通院したんですよ。そのときの医療費、もしかして戻ってくるんですかね?
室谷
えっ、それは大変でしたね!ちゃんと回復しましたか?実はそれ、「予防接種健康被害救済制度」という制度の対象になる可能性があるんですよ。
佐藤
マジですか?そんな制度あるんですか!
室谷
はい、予防接種法に基づいてちゃんと法律で定められた制度です。副反応による健康被害って、どんなに注意しても100%防げない部分があるんですよね。だから「過失があるかどうかに関係なく、因果関係が認定されれば救済する」という考え方で作られています。
佐藤
なるほど、それは安心感がありますね。具体的にはどんな給付が受けられるんですか?
室谷
症状の重さによってかなり幅があるので、次のセクションで詳しく整理しましょう。

予防接種健康被害救済制度とは

佐藤
まず制度の基本を教えてほしいんですけど、どんなワクチンが対象になるんですか?
室谷
対象になるのは「予防接種法に基づく予防接種」です。大きく2種類に分かれています。
区分 主な対象ワクチン
A類疾病の定期接種・臨時接種 BCG、ヒブ(Hib)、小児用肺炎球菌、ジフテリア・百日せき・破傷風・ポリオ(DPT-IPV)、麻しん・風しん(MR)、水痘、B型肝炎、ロタウイルス、日本脳炎、HPV(子宮頸がん予防)
B類疾病の定期接種 インフルエンザ、高齢者の肺炎球菌感染症
佐藤
あ、子どもがよく打つワクチンはほぼA類ですね。インフルエンザはB類だっていうのが意外でした。
室谷
そうなんですよ。A類とB類で給付の内容が少し違うので、これが後で重要になってきます。
佐藤
ちなみにコロナのワクチンはどうなんですか?
室谷
コロナワクチン(新型コロナウイルス感染症のワクチン)はこれとは別の窓口で、「新型インフルエンザ等対策特別措置法」に基づく補償制度があります。今日お話しするのは定期接種ワクチンの救済制度ですね。
佐藤
なるほど、別枠なんですね。じゃあ、この制度で実際にどれだけ給付してもらえるんか、次に教えてもらえますか?

給付の種類と金額

給付の種類一覧(A類・B類の対象比較)

佐藤
給付の種類ってたくさんあるんですか?
室谷
はい、症状や状況に応じて7種類の給付があります(2026年4月改訂の金額)。
給付の種類 A類疾病 B類疾病
医療費・医療手当 ◎(入院必要な場合のみ)
障害児養育年金
障害年金 ◎(1〜3級) ◎(1〜2級のみ)
死亡一時金
遺族年金
遺族一時金
葬祭料
佐藤
ほんとに幅広いですね!医療費から年金まであるんですか(笑)。
室谷
そうなんです。軽い症状なら医療費・医療手当だけですが、重い障害が残った場合は年金が支給され、亡くなった場合は死亡一時金や葬祭料が出ます。それぞれの金額を見てみましょう。

医療手当(月額)

室谷
まず基本の医療手当ですが、月の通院・入院の日数によって金額が変わります。
状況 月額
通院3日未満 39,100円
通院3日以上 41,100円
入院8日未満 39,100円
入院8日以上 41,100円
入院と通院の両方あり 41,100円
佐藤
あ、通院3日以上と入院8日以上が最高額で、月41,100円なんですね。
室谷
そうです。医療費は別途、健康保険で引かれた後の自己負担分が実費支給されます。なので医療手当は「交通費や諸雑費への補填」というイメージですね。
佐藤
じゃあ障害が残った場合はどうなりますか?
室谷
障害の等級によってかなり大きな年金が出ます。

障害年金・障害児養育年金(年額)

室谷
A類疾病で重い障害が残った場合の年金はこちら。
種類 等級 年額
障害年金(A類) 1級 5,656,800円
障害年金(A類) 2級 4,525,200円
障害年金(A類) 3級 3,393,600円
障害年金(B類) 1級 3,142,800円
障害年金(B類) 2級 2,514,000円
障害児養育年金 1級 1,768,800円
障害児養育年金 2級 1,414,800円
佐藤
A類の障害年金1級って年間ざっくり565万円!これは大きいですね。
室谷
重篤な後遺症が残った場合の生活補償として設計されているからです。ただし、障害基礎年金など他の年金を受け取っている場合は、その分が差し引かれます。介護が必要な場合は介護加算(年額で1級が909,600円、2級が606,400円)もあります!
佐藤
障害児養育年金は子どもを育てている親に出るんですね。
室谷
そうです。18歳未満の障害のある子を養育している親への支給です。18歳になったら改めて「障害年金」として申請する流れになります。
佐藤
最悪のケースで亡くなってしまった場合は?
室谷
死亡一時金が4,950万円、葬祭料が222,000円が支給されます。B類疾病では遺族年金(年額2,748,000円・10年限度)や遺族一時金(8,244,000円)という形になっています。
佐藤
死亡一時金が約5,000万円というのは相当な金額ですね。次は実際の申請手続きを教えてください。

申請から給付までの流れ

申請から認定・給付までのフローチャート

佐藤
手続きって複雑そうで不安です。どこに行けばいいんですか?
室谷
まず「接種時に住民票を登録していた市区町村の窓口」です。これが最初の一歩ですね。
佐藤
結構な段階を踏むんですね。審査に時間がかかりそう。
室谷
はっきりした標準処理期間は制度上定められていませんが、書類が揃ってからでも半年〜1年以上かかるケースもあります。書類不備があるとさらに長引くので、最初の相談で丁寧に確認することが大事です!
佐藤
窓口ってどこにあるか分からないのが不安なんですが。
室谷
お住まいの市区町村の「保健センター」や「健康推進課」などが担当していることが多いです。まずは市区町村の代表電話に「予防接種の健康被害救済について相談したい」と伝えれば担当につないでもらえますよ。

:::pointbox{title="どの市区町村に申請すべきか?"} 申請先は「接種を受けたときに住民票を登録していた市区町村」です。接種後に引っ越した場合でも、接種時の住民票がある市区町村が申請窓口になります。現在の居住地ではないので注意してください。 :::

佐藤
これは重要な注意点ですね!次に、必要な書類を教えてもらえますか?

必要書類の整理

佐藤
書類の準備が一番大変そうな気がします。何が必要なんですか?
室谷
給付の種類によって変わるんですが、まず全ての給付に共通して必要なのが「接種済証または母子健康手帳のコピー」です。接種した記録を証明するために絶対必要です!
佐藤
母子手帳って最初から持っていることが多いですよね。でもなくした場合は?
室谷
接種済証の再発行は接種を受けた医療機関か市区町村で対応してもらえる場合があります。早めに確認しましょう。
佐藤
医療費・医療手当の場合はどんな書類が必要ですか?
室谷
基本的にはこの5点セットです。

:::pointbox{title="医療費・医療手当の必要書類(主なもの)"}

  • 接種済証または母子健康手帳の写し — 接種の種類と年月日を証明
  • 医療費・医療手当請求書(様式1) — 市区町村または厚生労働省HPから入手
  • 受診証明書(様式2) — 医療機関または薬局で作成してもらう
  • 領収書等の写し — 医療費の金額と日数を証明
  • 診療録(カルテ)の写し — 発症日と症状を証明する医師作成の書類 :::
佐藤
カルテのコピーって病院でお願いしたら出してもらえるんですよね?
室谷
原則として診療記録の開示請求はできます。手数料がかかる場合はありますが、請求する権利はあります。窓口でお願いしてみてください!
佐藤
アナフィラキシーとかすぐに回復した場合は特別な扱いがあるって聞いたんですが?
室谷
よく知ってますね!アナフィラキシー等の即時型アレルギー反応については特例があります。

:::warning{title="アナフィラキシー特例の条件"} 以下の全ての条件を満たす場合、診療録等の写しが不要になり、様式3(予防接種後の即時型アレルギー反応症例概要)の提出だけでOKになります。

  • 接種後4時間以内に発症
  • 接種日を含め7日以内に治癒・終診
  • ワクチン接種以外が原因と記載医が判断していない
  • 接種前から症状が継続していない

条件に当てはまらない場合はカルテ等が必要です。 :::

佐藤
日数の数え方って大事ですね。次は審査がどうやって進むのか気になります。

疾病・障害認定審査会とは

佐藤
「因果関係を審査する」って書いてましたけど、どんな機関がやるんですか?
室谷
疾病・障害認定審査会」という、厚生労働省の第三者審査機関です。予防接種法施行令第9条で定められていて、医師など専門家で構成されています。
佐藤
因果関係って証明するのが難しそうですよね?
室谷
それが実はこの制度の重要な考え方と関係しています。一般的な裁判と違って、「100%証明しなくていい」とされているんです。「接種後に症状が出た」という時間的関係や医学的知見から、否定できない関係があれば認定の方向になりやすい設計です。
佐藤
それは救済される側には助かる仕組みですね!
室谷
はい。ただ、全ての申請が通るわけではないので、カルテなど記録をしっかり残しておくことが重要です。審査結果に不服がある場合は審査請求(不服申し立て)の制度もあります。
佐藤
B類疾病って請求期限があるんですよね?
室谷
そうです!これは注意が必要な点です。

:::warning{title="B類疾病(インフルエンザ等)の請求期限"} B類疾病(インフルエンザワクチン、高齢者肺炎球菌ワクチン等)には請求期限があります。

  • 医療費 — 費用の支払いが行われた時から5年
  • 医療手当 — 医療が行われた月の翌月の初日から5年
  • 遺族年金・遺族一時金・葬祭料 — 死亡から5年

A類疾病(子どもの定期接種ワクチン等)は請求期限の定めがありません。 :::

佐藤
5年って長いようで短い!気づかずに過ぎてしまう人もいそうです。
室谷
そうですね。インフルエンザワクチンで健康被害を受けた場合、その後の日常に追われているうちに期限が来てしまうことがあるので、早め早めに相談してほしいです。次は実際の給付額の基本情報をまとめますね。

審査のポイントと申請攻略法

佐藤
せっかく申請するなら通りやすくしたいですよね。何か攻略法はありますか?
室谷
一番大事なのは「記録を残す」こと、これに尽きます(笑)。

:::pointbox{title="申請を成功させる4つのポイント"}

  • 接種直後から症状を記録する — 日付、症状の内容、病院名を記録。スマホのメモアプリでも十分
  • カルテは早めに開示請求する — 受診から時間が経つと記録が薄くなる場合も。受診後早めに動く
  • 接種済証・母子手帳を大切に保管 — これがないと請求がスタートできない
  • 市区町村窓口に早めに相談する — 書類の準備方法を事前に確認することで不備が減る :::
佐藤
接種後に症状が出たら、病院に行きながらメモしておくのが大事なんですね。
室谷
そうです!「いつ、どんな症状が出て、どこの病院に行ったか」を記録しておくだけで書類準備がぐっと楽になります。
佐藤
複数の給付を同時に申請することもできるんですか?
室谷
できます!医療費と医療手当は同時請求が原則です。複数の給付を同時に請求する場合、重複する書類は省略することが認められています。
佐藤
それは効率的ですね。じゃあ基本情報を一覧で見せてもらえますか?

制度の基本情報まとめ

室谷
では制度の基本情報を一覧にまとめましたよ。
項目 内容
制度名 予防接種健康被害救済制度
根拠法 予防接種法第15条・同施行令第9条
実施主体 厚生労働省(認定)・市区町村(給付)
対象ワクチン 予防接種法に基づく定期接種・臨時接種ワクチン
申請窓口 接種時に住民票を登録していた市区町村
給付の種類 医療費・医療手当、各種年金、死亡一時金等
費用負担 公費(無料で申請可能)
官庁所管 厚生労働省 健康・生活衛生局感染症対策部
問合せ先 お住まいの市区町村窓口
公式ページ 厚生労働省 予防接種健康被害救済制度について

:::pointbox{title="問い合わせ先"}

佐藤
まとめると、まず市区町村に相談する、それがスタートポイントなんですね!
室谷
そうです。窓口に行って「予防接種の健康被害で相談したい」と伝えれば、担当の方が書類を案内してくれます。一人で悩まずに動くことが大切です!
佐藤
ところで、医療費が戻ってくる制度って他にも似たようなものがありますよね?

関連制度との比較

佐藤
似たような医療費の助成制度って他にもありますよね?この制度とどう違うんですか?
室谷
いい質問!よく比較されるのは以下の制度です。
制度 対象 特徴
予防接種健康被害救済制度 ワクチン接種後の副反応 因果関係認定が必要。過失問わず救済
高額療養費制度 全ての病気・怪我 自己負担限度額超過分を払い戻し。認定不要
限度額適用認定証 全ての病気・怪我 高額療養費の事前申請版。窓口での支払いを抑える
指定難病の医療費助成制度 指定難病患者 病名が指定難病に該当する場合
障害年金 障害のある方全般 予防接種以外の原因でも対象
佐藤
高額療養費制度は認定がいらないんですね。副反応で医療費がかかった場合でも、まず高額療養費を使って、さらに救済制度にも申請するということ?
室谷
その通りです!この救済制度の医療費給付は、健康保険の給付を差し引いた自己負担分に対して支給されます。高額療養費で自己負担限度額まで減らして、その残りをさらに救済制度で補填するというイメージです。
佐藤
二重取りじゃなくて、順番に使って最終的な自己負担をゼロに近づける仕組みなんですね。
室谷
正確に理解してもらいました!そして重篤な障害が残った場合は、一般の障害年金と比較しても、この救済制度の給付は「予防接種が原因であること」が認定されればかなり手厚い内容になっています。
佐藤
次によくある疑問をまとめてもらえますか?

よくある質問

佐藤
「副反応かどうか分からない」という段階でも相談していいんですか?
室谷
もちろんです!「これが副反応かどうか分からない」という状態で相談に行っても全然大丈夫です。市区町村の窓口では相談に乗ってくれますし、書類を集めながら確認していく形でOKです。
佐藤
申請にお金はかかるんですか?
室谷
申請自体は無料です!ただ、カルテのコピーを病院から取り寄せる際に実費がかかる場合があります。医療機関によっては1枚あたり数十〜数百円の開示手数料がかかることがあるので、事前に確認してください。
佐藤
申請したら全員認定されるわけじゃないんですよね?
室谷
そうです。疾病・障害認定審査会での審査を経て、因果関係が認められた場合にのみ給付されます。認定されなかった場合も不服申し立て(審査請求・再審査請求)の手続きがあります。
佐藤
子どもの場合、親が代わりに申請できますか?
室谷
できます!保護者が代理で申請することが前提の制度設計になっています。障害児養育年金も「障害を持つ子を養育する保護者」への給付ですからね。
佐藤
接種した医療機関が廃業してしまった場合はどうなりますか?
室谷
その場合でも申請はできます!接種証明書(接種済証や母子手帳の記録)があれば、カルテが取得できなくても書類の代替方法を市区町村に相談することが可能です。廃業医療機関に関しては都道府県が対応する窓口を設けている場合もあります。
佐藤
最後に、この制度を知らないまま見逃している人が多そうで、もったいないと思うんですが。
室谷
本当にそうですよね!認定件数は年間でそれほど多くないですが、だからこそ知らないまま申請しない人がいる可能性があります。「もしかして副反応かな?」と思ったら、まずは市区町村に電話一本入れてみてください。窓口の人が丁寧に教えてくれますよ(笑)!
佐藤
今日は色々と教えてもらいありがとうございました!子どものワクチンって当たり前に打つものだけど、こういう救済制度があるって知っておくだけで全然違いますね。
室谷
そうですよね!予防接種はメリットがはるかに大きいので引き続き接種してほしいのですが、万が一の時に備えて知っておく制度です。気になることがあれば遠慮なく市区町村窓口に相談してみてください(笑)!

一次情報・申請先: 厚生労働省・市区町村

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、制度は改正される場合があります。最新の要件・金額は必ず上記の公式ページや窓口でご確認ください。