ひとり親家庭の医療費、どこまで助けてもらえるの?

佐藤
ひとり親家庭向けの医療費の制度があるって聞いたんですけど、「マル親」ってやつですか?
室谷
そうです。正式名称は「ひとり親家庭等医療費助成制度」で、マル親(まるおや)という通称でも呼ばれています。ひとり親家庭の親と子どもが医療機関に受診したとき、健康保険の自己負担分の一部または全部を自治体が助成してくれる制度です。
佐藤
えっ、親も子どもも両方対象になるんですか?
室谷
そうなんです。ここがポイントで、子どもだけでなくひとり親自身も助成の対象になります。「子どもの医療費助成(マル子)」とは別の制度で、親御さんが病院に行ったときも適用されます。
佐藤
それは知りませんでした!じゃあ父子家庭のお父さんも対象になる?
室谷
なります。母子家庭の母・子だけでなく、父子家庭の父・子も対象です。さらに、両親がいない児童(祖父母が養育している場合など)も対象に含まれることがあります。
佐藤
なるほど。これは全国一律の制度なんですか?
室谷
実は、制度の基本的な枠組みは都道府県が設けていますが、具体的な内容は市区町村ごとに異なります。自己負担金の有無、助成の範囲、所得制限の基準が地域によって少し違うので、お住まいの自治体の窓口で確認することが大切です。
誰が対象になるのか、具体的に教えてください
佐藤
対象者の要件をもう少し詳しく聞きたいんですが、どんな家庭がマル親を使えるんですか?
室谷
まず前提として、健康保険に加入していることが必須条件です。国民健康保険でも会社の社会保険でも、保険証を持っていれば問題ありません。その上で、次のいずれかに当てはまる家庭が対象です。
室谷
一番多いのは「離婚した」ケースですね。父母が離婚して、一方の親が子どもを育てている場合。次に「死別」で、父または母が亡くなった場合。あとは「生死不明」「1年以上遺棄された」「DV保護命令が出た」「法令により1年以上拘禁されている」といった特殊なケースも対象になります。
佐藤
婚姻していない、いわゆる未婚の母の場合はどうなりますか?
室谷
婚姻によらないで出生した子どもで、父または母と生計を異にしているケースも対象です。未婚でも、実質的にひとり親状態であれば利用できると考えてください。
佐藤
逆に対象外になるケースは?
室谷
大きく3つあります。まず生活保護を受けている場合は対象外です。次に、所得が一定額を超えている場合(所得制限あり)。そして、事実上の婚姻関係(内縁関係)がある場合も対象外になります。ほかの医療費助成制度(マル乳・マル子・マル障など)の医療証を持っている場合は、優先順位の関係で対象外になることもあります。
:::warning{title="対象外になる主なケース"}
- 生活保護受給中の方
- 所得が所得制限限度額を超えている方(本人・同居の扶養義務者含む)
- 事実上の婚姻関係(内縁関係)にある方
- 他の医療費助成制度(マル乳・マル子・マル障など)が適用される方 :::
所得制限ってどのくらいの基準なんですか?
佐藤
所得制限があるって聞いて少し心配なんですが、実際にはどのくらいの収入だと対象外になるんですか?
室谷
所得制限の基準は児童扶養手当の一部支給に準じた基準を使っている自治体が多いです。扶養親族の数によって限度額が変わります。
| 扶養親族の数 | 申請者本人の限度額(目安) | 扶養義務者の限度額(目安) |
|---|---|---|
| 0人(子なし) | 208万円 | 236万円 |
| 1人 | 246万円 | 274万円 |
| 2人 | 284万円 | 312万円 |
| 3人 | 322万円 | 350万円 |
| 以降1人増えるごと | 38万円加算 | 38万円加算 |
佐藤
ざっくり言うと、子どもが1人いる親なら年収246万円ちょいまでは大丈夫、ということ?(表の数字は2025年以降の一般的な目安で、自治体によって異なる場合がありますよね?)
室谷
おおむねそういう理解で合っています。ただし、ここでいう「所得」は年収から各種控除を差し引いた後の金額なので、給与収入がそれより少し高くても対象になるケースがあります。正確な判定は窓口で確認してください。
佐藤
養育費をもらっている場合はどうなりますか?
室谷
養育費は受け取った額の80%が所得として加算されます。たとえば月3万円(年36万円)の養育費を受け取っている場合、36万円×0.8=28.8万円が所得に加算されて判定されます。これで限度額をオーバーしてしまうケースもあるので注意が必要です。
:::pointbox{title="所得制限で注意したいポイント"}
- 所得の判定には「前年(または前々年)の所得」を使う
- 同居の扶養義務者(祖父母・兄弟姉妹など)の所得も審査される
- 養育費の80%が所得に加算される
- 自治体によって1〜2月時点の申請では前々年の所得を使うことも :::
助成の内容って具体的にどういうことですか?
佐藤
医療費がどのくらい安くなるのか、もう少し具体的に教えてもらえますか?
室谷
助成の内容も自治体によって差があるんですが、保険診療の自己負担分を一部または全部助成してもらえます。住民税非課税世帯の場合は自己負担ゼロになる自治体が多いです。
佐藤
住民税を払っている世帯はどうなるんですか?
室谷
課税世帯の場合は、ざっくり言うと1割の自己負担になり、上限額が設けられているケースが多いです。通院なら月額上限1万8,000円、入院・外来合算で月額上限5万7,600円くらいが目安です(自治体によって異なります)。
佐藤
薬代も助成されますか?
室谷
薬局での調剤費用も保険診療の範囲内なので、薬代も助成対象です。自己負担ゼロになる自治体が多いですよ。
| 項目 | 非課税世帯(目安) | 課税世帯(目安) |
|---|---|---|
| 通院医療費 | 自己負担なし | 月額上限18,000円程度(1割負担) |
| 入院医療費 | 自己負担なし | 月額上限57,600円程度(1割負担) |
| 薬代(調剤費) | 自己負担なし | 助成あり |
| 入院時食事代 | 対象外 | 対象外 |
| 健康診断・予防接種 | 対象外 | 対象外 |
| 差額ベッド代 | 対象外 | 対象外 |
佐藤
対象外になるものもあるんですね。
室谷
健康保険が効かないものは助成の対象外です。入院時の食事代(食事療養標準負担額)、差額ベッド代、健康診断、予防接種、歯科の特殊な材料なんかは自費になります。
佐藤
なるほど、では申請の流れを教えてください。申請しないと医療証はもらえないんですか?
室谷
申請が必要です。自動的に送られてくる自治体もゼロではないですが、基本的には自分で申請しないと医療証は交付されません。次のセクションで詳しく説明しますね。
申請の流れ、何を準備すればいいですか?

佐藤
申請は難しいですか?どこに行けばいいんですか?
室谷
申請窓口はお住まいの市区町村の役所(こども課・子育て支援課など)です。区役所の場合は区役所内の担当窓口に行くことになります。
佐藤
マイナンバーも必要ですか?
室谷
2016年1月以降、申請にはマイナンバーの利用が必要になっています。マイナンバーカードを持参するか、マイナンバーが記載された住民票の写しを用意してください。
佐藤
申請するとすぐ使えるようになりますか?
室谷
原則として申請した月の初日から助成が始まります。ひとり親の状態になった月内に申請すれば、その日から遡って助成が受けられます。だから離婚が成立したら、できるだけ早めに申請することをお勧めします。
:::pointbox{title="申請タイミングで助成開始日が変わる"}
- ひとり親になった月内に申請 → ひとり親になった日から助成開始
- 翌月以降に申請 → 申請した月の1日から助成開始(遡及なし)
- 市外から転入した月内に申請 → 転入日から助成開始
- 新たに健康保険に加入した月内に申請 → 保険加入日から助成開始 :::
佐藤
一度申請したら、ずっと使えるんですか?
室谷
医療証には有効期限があります。多くの自治体では毎年9月30日が有効期限で、10月に更新されます。引き続き使うためには毎年の更新手続きが必要で、8月頃に申請書が郵送されてきます。
都道府県外の病院に行ったらどうなりますか?
佐藤
ちょっと気になるんですが、出張や旅行先で急に体調を崩して病院に行った場合はどうなりますか?
室谷
これは大事なポイントです。医療証は原則として発行元の都道府県内の医療機関でしか使えません。他県の病院では一旦自己負担額を全額払って、後から払い戻しの申請をすることになります。
佐藤
払い戻しにはどんな手続きが必要ですか?
室谷
領収書(原本)・健康保険の資格確認書・医療証・振込先の通帳を持って、役所の窓口に申請します。申請から1〜2か月程度で指定口座に振り込まれます。領収書は捨てないように保管しておくことが重要です。
:::warning{title="医療証が使えないケースに注意"}
- お住まいの都道府県外の医療機関を受診した場合
- 救急搬送などで医療証を持参できなかった場合
- 接骨院・鍼灸など保険適用外の施術を受けた場合
いずれも「後日払い戻し申請」が必要です。領収書は必ず保管してください。 :::
子どもの年齢制限や、医療証の名前について教えてください
佐藤
子どもが大きくなってからも使えますか?何歳まで対象ですか?
室谷
多くの自治体では18歳に達した日以後最初の3月31日(つまり高校3年生の3月末)までが対象です。一般的に高校卒業まで使えると覚えていただければOKです。
佐藤
障害のある子どもの場合は特別な扱いになりますか?
室谷
はい、中度以上の障害がある場合は20歳未満まで対象が延長される自治体が多いです。具体的には身体障害者手帳3級・愛の手帳3度程度以上の障害が目安になります。
| 対象区分 | 対象年齢の目安 |
|---|---|
| 一般のひとり親家庭の子ども | 18歳年度末(高校3年生3月末)まで |
| 中度以上の障害がある子ども | 20歳未満まで |
| 親(父・母) | 子どもが対象期間中は親も対象 |
佐藤
「マル親」という名前のほかに、地域によって違う名前で呼ばれたりしますか?
室谷
東京都のマル親(ひとり親家庭等医療費助成)は有名ですが、地域によって名称や通称が異なります。福岡市では「ひとり親家庭等医療証」、大阪府では「ひとり親医療証」など。申請先の窓口で「ひとり親家庭の医療費助成の申請をしたい」と言えば通じます。
似た制度との違いも気になります
佐藤
マル親と似た制度にマル子(義務教育就学児医療費助成)とかありますよね。使い分けはどうなるんですか?
室谷
子どもを対象にした医療費助成制度は、年齢によっていくつか種類があります。マル子とマル親は同時に適用されないケースが多いです。一般的には優先順位が決められていて、マル乳・マル子・マル青が使えるときはそちらが優先されます。
| 制度名 | 主な対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| マル親(ひとり親家庭等医療費助成) | ひとり親の親本人と子ども | 親も含む、所得制限あり |
| マル子(義務教育就学児医療費助成) | 小・中学生 | 家庭構成問わず、ひとり親でなくても使える |
| マル乳(乳幼児医療費助成) | 未就学児 | 家庭構成問わず、乳幼児対象 |
| 高額療養費制度 | 全国民 | 月の医療費が高額になった場合の払い戻し |
| 医療費控除(確定申告) | 全国民 | 年間10万円超の医療費を翌年確定申告で控除 |
佐藤
じゃあ小学生の子どもがいる場合、マル子があるからマル親は使わなくていい、ということ?
室谷
子どもについてはそうなることが多いですね。でも、マル親は「親本人」の医療費も助成されるので、親御さん自身が病院にかかるときに使う、という使い方ができます。子どもと親でそれぞれ使い分ける感じです。
佐藤
なるほど、親の医療費もカバーしてくれるのがマル親の大きな特徴なんですね。では申請方法についての疑問がいくつかあるんですが、よくあるQ&Aで整理してもらえますか?
よくある疑問、まとめて答えます
佐藤
まず、離婚調停中でもまだ正式に離婚していない場合は申請できますか?
室谷
離婚が確定して戸籍謄本に記載されてから申請することになります。調停中はひとり親の状態と認定されないことが多いです。
佐藤
申請書類に不備があったらどうなりますか?
室谷
窓口で指摘してもらえることが多いです。書類が不足している場合は後日補完することもできるので、まず窓口に相談に行くことをお勧めします。書類が完全に揃っていなくても、相談だけなら行けます。
佐藤
仕事の都合で昼間の窓口に行けない場合はどうしたらいいですか?
室谷
多くの役所では平日の時間外窓口(夕方〜18時頃まで)や第2・4土曜日に受け付けているところもあります。郵送申請や電子申請(マイナポータル経由)に対応している自治体も増えています。お住まいの自治体のホームページで確認してみてください。
佐藤
所得が増えて基準を超えてしまった場合はどうなりますか?
室谷
毎年8月頃に翌年度の所得確認が行われます。所得が限度額を超えた年度は医療証が更新されず、受給資格を失います。ただし翌年度以降に所得が下がれば再申請できます。
基本情報まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | ひとり親家庭等医療費助成制度(マル親) |
| 実施主体 | 市区町村(都道府県が制度の基本を定める) |
| 対象者 | ひとり親家庭の親と子ども、父母のいない児童 |
| 対象年齢 | 子どもは18歳年度末まで(障害がある場合は20歳未満) |
| 所得制限 | あり(扶養親族の数によって限度額が異なる) |
| 助成内容 | 保険診療の自己負担分の一部または全部 |
| 申請窓口 | 市区町村役場のこども課・子育て支援課等 |
| 有効期限 | 原則毎年9月30日(毎年10月に更新) |
| 問い合わせ | お住まいの市区町村のこども・子育て担当窓口 |
:::pointbox{title="申請の際に持っていくもの(一般的な例)"}
- 戸籍謄本(申請者と子どもの分、発行から1か月以内)
- 健康保険の資格確認書・資格情報のお知らせ等
- 児童扶養手当証書(持っている方は省略できる場合あり)
- マイナンバーカードまたはマイナンバーが確認できる書類
- 所得証明書(市外から転入した場合など必要な場合)
- 振込先の通帳(払い戻し申請の際)
※自治体によって必要書類が異なります。事前に窓口に電話で確認することをお勧めします。 :::
佐藤
まとめると、ひとり親家庭のお父さん・お母さんが病院にかかるときも含めて、医療費の自己負担を大幅に減らしてもらえる制度なんですね。
室谷
そうです。ひとり親家庭は経済的に厳しいケースが多いので、こういった医療費助成を積極的に活用してください。申請しなければ一切使えない制度なので、ひとり親の状態になったら、まずは役所の窓口に相談することを強くお勧めします。
室谷
まさに。マル親で助成された後の残額があれば、高額療養費制度が適用できる場合もありますし、年間の医療費が10万円を超えれば医療費控除も使えます。複数の制度を組み合わせることで、医療費の実質負担をかなり低く抑えることが可能です。ひとり親家庭専用の制度だけでなく、全国民が使える医療費支援制度もフル活用してほしいと思います。