医療費・支援制度

医療費控除(確定申告)の完全ガイド

1年間の医療費が一定額を超えた場合に所得控除を受けられる仕組み。通院交通費なども対象。長期治療の家計負担を税で軽減。

医療費控除って何?基本から教えて

佐藤
去年、家族がけっこう入院してて、医療費がかさんだんですよね。「医療費控除」って言葉は聞いたことあるけど、実際どういう仕組みなのか全然わかってなくて。
室谷
あ、それ絶対やるべきやつです!ざっくり言うと、「1年間に払った医療費が一定額を超えたら、その分の所得控除を受けられる」制度なんですよ。つまり税金が戻ってくる可能性がある。
佐藤
えっ、入院費って税金に関係あるんですか?
室谷
そうなんです。医療費は「所得控除」として、確定申告のときに申告できるんですよ。控除を受けると課税所得が下がるので、結果として所得税や住民税が減る、あるいは払いすぎた税金が還付されるっていう仕組みです。
佐藤
へえ。確定申告って会社員だと縁がないと思ってたんですけど。
室谷
そこが意外に勘違いされてるポイントで、会社員でも医療費控除は自分で確定申告しないといけないんですよ。年末調整では対応できない控除のひとつです。
佐藤
マジですか!それは知らなかった。
室谷
制度の根拠は所得税法73条で、令和7年4月1日現在の法令に基づいて国税庁が案内しています。毎年制度の細部は見直されることがあるので、最新情報は国税庁のサイトで確認するのが大事です。

誰が対象になるの?

佐藤
じゃあ具体的には、どういう人が対象になるんですか?
室谷
対象者の条件はシンプルです。「その年の1月1日から12月31日までの間に、自分または生計を一にする配偶者・その他の親族のために医療費を支払った納税者」が対象です。
佐藤
「生計を一にする」っていうのは、同居してないといけないんですか?
室谷
必ずしも同居は要りません。たとえば仕送りをしている遠方の親の医療費も含められます。ポイントは「生計を一にしているか」であって、住民票が同じかどうかではないんですよ。
佐藤
なるほど。じゃあ大学生の子どもの医療費も?
室谷
仕送りしてて生計を一にしていれば対象です。夫婦で合算して申告するのもよくあるパターンですね。家族全員の医療費をまとめて、収入が多い側が申告した方が控除の効果が大きいことが多いので。

:::pointbox{title="対象者まとめ"}

  • 自分自身の医療費
  • 配偶者(生計を一にする)の医療費
  • その他の親族(生計を一にする)の医療費
  • 遠方でも仕送り等で生計を一にしていれば対象
  • 家族の医療費を合算して申告可 :::
佐藤
合算できるのはありがたいですね。では次に、実際にいくら戻るのかが一番気になります。計算方法を教えてください。

控除額はどうやって計算する?

佐藤
正直、計算が複雑そうで怖いんですよね。
室谷
基本の式は意外とシンプルです。
計算要素 内容
支払った医療費 1年間(1月1日〜12月31日)に実際に払った医療費の合計
保険金等の補てん 生命保険の入院費給付金、高額療養費、出産育児一時金など
控除の下限 10万円(総所得が200万円未満の場合は総所得の5%)
最大控除額 200万円
室谷
式にするとこうです。
医療費控除額 = (実際に払った医療費 − 保険金等の補てん額)− 10万円
佐藤
じゃあ、たとえば年間20万円の医療費を払って、保険から5万円もらったとすると…?
室谷
そうですね。「(20万 − 5万)− 10万 = 5万円」が控除額になります。この5万円分が課税所得から引かれるので、税率が20%なら1万円の所得税が減る計算です。
佐藤
あ、控除額がそのまま戻るわけじゃないんですね。
室谷
そうなんです。「税額控除」じゃなくて「所得控除」なので、課税対象の所得が減るっていうイメージです。控除額 × 自分の所得税率 = 実際に節税できる金額ですね。
佐藤
じゃあ収入が高い人ほど効果が大きいってことか。
室谷
正確にはそうです。ただ、総所得が200万円未満の方は、下限が「10万円」ではなく「総所得の5%」になるという有利な特例があります。たとえば総所得が100万円なら、5万円を超えた部分から控除できる。
佐藤
え、それは低所得の方でも申請しやすいってことですね。
室谷
そういうことです。入院が重なって医療費が増えた年は、収入に関わらず確認する価値があります。

:::pointbox{title="控除額シミュレーション例"}

  • 総所得500万円・医療費50万円・保険補てん10万円の場合 控除額 = (50万-10万) - 10万 = 30万円 所得税率20%なら → 6万円の節税

  • 総所得150万円・医療費20万円・保険補てんなしの場合 下限 = 150万 × 5% = 7.5万円 控除額 = 20万 - 7.5万 = 12.5万円 所得税率5%なら → 約6,250円の節税 :::


どんな医療費が対象になる?

佐藤
具体的にはどんな費用が対象になるんですか?意外と広そうな気がして。
室谷
対象範囲はかなり広くて、国税庁の1122号に全項目が書かれてます。主要なものをまとめると…
区分 対象となるもの 注意点
診療・治療費 医師・歯科医師による診療代 健康診断費用は原則対象外
医薬品 治療のための薬代(風邪薬など) 予防目的のビタミン剤は対象外
入院費 入院費・食事代・部屋代 差額ベッド代は基本的に対象外
通院交通費 電車・バスなどの交通費 ガソリン代・駐車場代は対象外
医療器具 義手・義足・補聴器・義歯・眼鏡 治療目的であることが条件
施術代 鍼灸・あん摩・柔道整復師 疲労回復目的は対象外
看護費 看護師・保健師による療養上の世話 家族・親族への謝礼は対象外
分娩 助産師による分娩の介助代 —
おむつ代 6か月以上寝たきりで医師の証明あり おむつ使用証明書が必要
介護サービス 介護保険の施設・居宅サービスの自己負担 生活援助中心型は対象外
佐藤
通院交通費が対象になるのは知らなかった!
室谷
意外に多くの人が見落としてるんですよ。電車やバスで通院した分は全部対象です。ただ、自家用車のガソリン代や駐車場代は対象外なので注意してください。
佐藤
タクシーはどうですか?よく使ってるんで。
室谷
タクシーは原則として対象外なんですが、「電車やバスが利用できないやむを得ない事情」がある場合は対象になります。足が不自由で公共交通機関が使えないとか、深夜緊急で移動した場合などですね。
佐藤
なるほど、ケースバイケースですね。

:::warning{title="これは対象外!間違えやすい費用"}

  • 健康診断・人間ドックの費用(病気が発見されて治療を受けた場合は対象)
  • 自家用車のガソリン代・駐車場代
  • 美容目的の治療・審美目的の歯列矯正
  • 予防接種・予防目的のビタミン剤
  • 差額ベッド代(個室希望の場合)
  • 家族や親族への付添謝礼金 :::

セルフメディケーション税制って別の制度があるの?

佐藤
さっき「セルフメディケーション税制」っていう言葉が出てきたんですが、これは別の制度ですか?
室谷
通常の医療費控除と選択適用できる特例です。「自分の健康管理を頑張っていて、市販薬(OTC医薬品)をよく買う人向け」の控除制度ですね。
佐藤
どういう条件で使えるんですか?
室谷
条件は2つあって、「その年中に健康診査や予防接種など一定の健康活動を行っていること」と、「特定のOTC医薬品を購入していること」です。令和8年12月31日まで適用される制度です。
比較項目 通常の医療費控除 セルフメディケーション税制
控除の下限 10万円(低所得者は総所得の5%) 1万2,000円
控除の上限 200万円 8万8,000円
対象 幅広い医療費全般 特定OTC医薬品の購入費のみ
前提条件 特になし 健康診査等を受けていること
佐藤
下限が1万2,000円か。医療費があまりかからない健康な人でも使える感じですね。
室谷
そうです。年間の医療費はそんなに多くないけど、ドラッグストアでスイッチOTC医薬品(市販の解熱鎮痛剤など)をよく買う人には向いてる制度です。ただし通常の医療費控除との同時適用はできないので、どちらが有利かシミュレーションしてから選ぶことが大事です。

:::warning{title="セルフメディケーション税制の注意点"}

  • 通常の医療費控除との「選択適用」。両方は使えない
  • 対象となるOTC医薬品は限定されており、薬のパッケージに「セルフメディケーション税制対象」と表示されている
  • 健康診査の証明書類が必要(定期健診の結果通知書など)
  • 適用期間は令和8年12月31日まで(制度の延長は別途確認が必要) :::
佐藤
なるほど。じゃあどっちを使うか、ちゃんと比較してから選ぶんですね。では実際の申請方法を教えてください。

実際にどうやって申請するの?

佐藤
申請って難しそうで、ちょっと腰が重いんですよね。
室谷
以前は確定申告=難しいイメージが強かったんですけど、今はかなりやりやすくなってますよ。基本的には「確定申告書を所轄の税務署に提出する」だけです。
佐藤
e-Taxで全部できるんですか?
室谷
できます!マイナンバーカードがあればスマホだけで完結します。医療費の通知書(健康保険組合から送られてくる「医療費のお知らせ」)をそのまま添付できるので、領収書を1枚1枚入力しなくてよくなってます。
佐藤
マイナポータル連携とかもあるんですか?
室谷
ありますよ。令和3年9月以降の支払い分については、マイナポータルで医療費通知情報を一括取得して申告書に自動入力できます。手間がかなり減ります。
佐藤
じゃあ必要書類は何をそろえればいいですか?
室谷
基本的にそろえるものはこちらです。
書類 備考
医療費の領収書 申告後も5年間保管すること(税務署から提出を求められる場合がある)
医療費通知書(あれば) 健保組合などから届く「医療費のお知らせ」。明細書の簡略化に使える
医療費控除の明細書 領収書から自分で作成(作成コーナーで自動作成も可)
源泉徴収票 給与所得者は必要(申告書作成に使う)
マイナンバーカード e-Tax利用時に必要

:::pointbox{title="領収書は捨てないで!5年保管が必要"} 申告後も領収書は5年間保管義務があります。税務署から「記載内容を確認するために提出・提示を求める場合がある」と明記されています。箱や封筒に年度別にまとめておくのがおすすめです。 :::


申請の締切と確定申告の時期

佐藤
いつまでに申請すればいいんですか?
室谷
医療費控除は翌年の確定申告期間に申告します。たとえば2025年(令和7年)の医療費は、2026年(令和8年)の確定申告で申告します。
佐藤
確定申告って毎年2月〜3月ですよね。
室谷
そうです。通常は翌年2月16日〜3月15日が確定申告の期間です。ただ、医療費控除のように「還付申告」の場合は1月1日から5年間申告できるという特例があります。
佐藤
えっ、5年も遡れるんですか!
室谷
税金の還付目的の申告に限りですが、そうなんです。だから「去年申告するの忘れた!」という場合でも、5年以内なら今からでも申告できます。2022年分なら2027年まで申告可能です。
佐藤
それは知らなかった。親の入院費用とかも遡って申告できそうですね。
室谷
過去の分がある方は一度確認してみてください。ただし、あくまで「制度は改正されうる」ので、遡った年分の当時の制度に基づいて計算することが必要です。

図解1 医療費控除の計算の流れ

flowchart TD
    A[年間の医療費を集計] --> B[保険金等の補てん額を差し引く]
    B --> C{総所得金額は?}
    C -->|200万円以上| D[10万円を差し引く]
    C -->|200万円未満| E[総所得×5%を差し引く]
    D --> F[医療費控除額が確定]
    E --> F
    F --> G{控除額はプラス?}
    G -->|Yes| H[確定申告で申告]
    G -->|No| I[申告しても還付なし]
    H --> J[所得税・住民税が減額または還付]

図解2 申請ステップのフロー

flowchart LR
    A[領収書・通知書の収集] --> B[医療費控除の明細書を作成]
    B --> C[確定申告書を作成]
    C --> D{提出方法は?}
    D -->|e-Tax| E[スマホ・PCでオンライン提出]
    D -->|郵送| F[税務署に郵送]
    D -->|窓口| G[税務署の窓口へ持参]
    E --> H[還付・減額処理]
    F --> H
    G --> H
    H --> I[1〜2か月後に還付または税額確定]

よくある疑問と回答

佐藤
最後に、よくある疑問をいくつか聞かせてください。歯の治療はどこまで対象になりますか?インプラントとか矯正歯科って対象?
室谷
歯の治療はけっこう複雑なんですよ。基本的に「治療目的」であれば対象で、「美容・審美目的」だと対象外になります。
佐藤
インプラントは?
室谷
インプラントは一般的に治療目的として認められています。ただ保険適用外で高額なことが多いので、しっかり領収書をとっておくことが大事です。矯正歯科は、子どもの発育上の歯列矯正は対象ですが、成人が外見目的でやる矯正は対象外になることが多いです。
佐藤
なるほど。海外旅行中に病気になって病院に行った費用は?
室谷
対象になりますよ。海外での医療費も含められます。ただし、外貨で支払った場合は支払日のレートで円換算した金額を記載します。
佐藤
保険会社から給付金をもらった場合って、その分は差し引くんですよね?
室谷
そうです。生命保険の入院費給付金、健康保険の高額療養費・家族療養費、出産育児一時金などは「補てん金」として医療費から差し引きます。ただし、その補てん金は「補てん対象になった医療費」の範囲でしか差し引かないという点が重要です。
佐藤
どういうことですか?
室谷
たとえば、A病院での医療費10万円に対して保険金15万円が出たとしたら、差し引けるのは10万円まで。余った5万円を他の医療費から引くことはできません。同じ病気・入院ごとに対応させて計算するイメージです。

基本情報まとめ

項目 内容
制度名 医療費控除(確定申告)
実施機関 国税庁
対象者 一定額を超える医療費を支払った納税者(生計を一にする家族分を含む)
控除下限 10万円(総所得200万円未満の場合は総所得の5%)
最大控除額 200万円
申請先 所轄税務署(e-Taxでのオンライン申告も可)
申請時期 翌年2月16日〜3月15日(還付申告は1月1日から5年間)
必要書類 医療費控除の明細書、医療費の領収書(5年保管)
公式サイト 国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき

:::warning{title="制度は変わることがあります"} 医療費控除の制度は税制改正によって内容が変更されることがあります。申告前には国税庁の公式サイト(nta.go.jp)で最新情報を必ず確認してください。特にセルフメディケーション税制の適用期限(令和8年12月31日)など、時限措置は延長・廃止の可能性があります。 :::

佐藤
いろいろ教えてもらいましたが、一番大事なポイントをひとつだけ挙げるとすれば?
室谷
それは「領収書を捨てない」です!どんなに完璧に計算できても、領収書がなければ証明できません。今年から家族全員の医療機関の領収書を封筒にまとめておく習慣をつけるだけで、来年の確定申告がぐっとラクになりますよ。

一次情報・申請先: 国税庁

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、制度は改正される場合があります。最新の要件・金額は必ず上記の公式ページや窓口でご確認ください。