図1:加齢による睡眠構造の変化。若年期と比較して高齢者では深いノンレム睡眠が減少し、夜間の覚醒回数が増加するとされています(Ohayon ら、Sleep Med Clin 2017 をもとに概念図作成)[2]
加齢と睡眠構造の変化――なぜ年齢を重ねると目が覚めやすくなるのか
中途覚醒の最も根本的な原因のひとつは、加齢に伴う睡眠構造そのものの変化です。PMCに収録されたOhayonらのレビュー論文(Sleep Medicine Clinics, 2017)によれば、高齢者は若年者と比べて夜間の覚醒回数が約2.7倍多いとされています[2]。また、睡眠効率(床に就いている時間のうち実際に眠れている割合)は30歳から60歳にかけて10年ごとに約10分ずつ「起きている時間」が増加していく傾向があるとも報告されています。
「目が覚めたらトイレに行きたくなる」のか、「トイレに行きたいから目が覚める」のか——実はどちらも起きます。Sleep Medicine Reviewsに掲載されたBliwise & Holm-Larsenらのレビュー(2010)によれば、65歳以上の成人において夜間排尿が覚醒の主な原因として挙げられる割合は77.1%に上り、18〜44歳の39.9%と比べて際立って高いことが示されています[4]。さらに、夜間に2回以上の排尿がある人は睡眠の質と日中機能が最も大きく損なわれると報告されています。
国立精神・神経医療研究センター(2016)「睡眠障害ガイドライン(わが国における睡眠問題の現状)」国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所. PDF ― 本記事での引用箇所:日本人における中途覚醒・入眠障害・早朝覚醒の有症状率15〜25%、中高年で中途覚醒が顕著に増加する、という疫学データ
Ohayon M, et al.(2017)「Sleep in Normal Aging」Sleep Medicine Clinics, 13(1):1. PMC ― 本記事での引用箇所:高齢者は若年者と比べて夜間覚醒回数が約2.7倍多い、睡眠効率が10年ごとに低下し深いノンレム睡眠が男性で10年あたり約1.7%減少するというデータ
Koob GF, Colrain IM(2019)「Alcohol use disorder and sleep disturbances: a feed-forward allostatic framework」Neuropsychopharmacology, 45(1):141–165. PMID: 31234199. PMC ― 本記事での引用箇所:飲酒後の夜間後半で覚醒が増加し深い徐波睡眠・REM睡眠が減少する、という睡眠構造への影響
Bliwise DL, et al.(2010)「The effect of nocturia on sleep」Sleep Medicine Reviews, 15(2):91. PMC ― 本記事での引用箇所:65歳以上の77.1%が夜間排尿を覚醒の主因として挙げる、2回以上の夜間排尿が睡眠の質・日中機能に最大の影響を与えるというデータ
Passos GS, et al.(2023)「Insomnia Severity is Associated with Morning Cortisol and Psychological Health」Sleep Science, 16(1):92. PMC ― 本記事での引用箇所:慢性不眠症患者において不眠重症度と朝のコルチゾール値が有意に相関(r=0.37, p=0.03)、睡眠開始後の平均覚醒時間68.2分というデータ
Kalmbach DA, Espie CA, et al.(2018)「Hyperarousal and sleep reactivity in insomnia: current insights」Nature and Science of Sleep. PMC ― 本記事での引用箇所:ストレスへの過剰な睡眠反応性とルーミネーションが不眠の維持に関与するという過覚醒モデルの概念