こころ

夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)の原因と対処

編集:和ごころプロジェクト|公開 2026.06.28編集方針

「やっと眠れた」と思ったのに、気づけば夜中の2時に目が覚めている——そんな経験が週に何度も続いていませんか。床に就いて眠ること自体はできるのに、眠り続けることができない状態は「睡眠維持障害(中途覚醒)」と呼ばれ、入眠困難(寝つけない)や早朝覚醒(朝早く目が覚める)とは区別される不眠のタイプです。この記事では、中途覚醒がなぜ起きるのかを、加齢・アルコール・夜間頻尿・睡眠時無呼吸・ストレスとコルチゾールという5つの柱から掘り下げ、覚醒後の再入眠を妨げるメカニズムや、受診を検討すべきサインまでを根拠とともに解説します。

中途覚醒とは何か――入眠困難・早朝覚醒との違い

不眠には大きく三つのタイプがあります。入眠困難は床に就いてから30分以上眠れない状態、早朝覚醒は予定より2時間以上早く目が覚めてしまう状態、そして中途覚醒は一度眠れた後に夜中に何度も目が覚め、その後なかなか眠れなくなる状態です。国立精神・神経医療研究センターの睡眠障害ガイドラインによれば、日本人を対象にした大規模疫学調査において入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒の有症状率はいずれも15〜25%とされており、特に中高年では中途覚醒が顕著に増加すると報告されています[1]

中途覚醒の特徴は、「眠れた時間そのものが短い」わけではないという点にあります。布団の中にいる時間は長くても、その間に何度も目が覚めることで睡眠が分断され、深いノンレム睡眠(N3段階)が十分に確保されません。その結果、朝に「寝た気がしない」「疲れが取れない」という感覚が残ります。また、目が覚めるたびに「またか」「明日仕事があるのに」という不安が生じ、それ自体が覚醒状態を長引かせるという悪循環も生じやすいとされています。

睡眠サイクルの加齢変化:若者と高齢者のNREMおよびREM睡眠の比較図解
図1:加齢による睡眠構造の変化。若年期と比較して高齢者では深いノンレム睡眠が減少し、夜間の覚醒回数が増加するとされています(Ohayon ら、Sleep Med Clin 2017 をもとに概念図作成)[2]

加齢と睡眠構造の変化――なぜ年齢を重ねると目が覚めやすくなるのか

中途覚醒の最も根本的な原因のひとつは、加齢に伴う睡眠構造そのものの変化です。PMCに収録されたOhayonらのレビュー論文(Sleep Medicine Clinics, 2017)によれば、高齢者は若年者と比べて夜間の覚醒回数が約2.7倍多いとされています[2]。また、睡眠効率(床に就いている時間のうち実際に眠れている割合)は30歳から60歳にかけて10年ごとに約10分ずつ「起きている時間」が増加していく傾向があるとも報告されています。

この背景には、体内時計(概日リズム)の変化があります。加齢とともに体内時計が前倒しになる傾向があり、早い時間に眠気が訪れる一方で、夜中に目が覚めやすくなります。さらに、深いノンレム睡眠(徐波睡眠・N3)の割合が男性では10年ごとに約1.7%ずつ減少し、浅い眠りの割合が増えることが明らかにされています[2]。浅い眠りの状態では、尿意や物音など、わずかな刺激でも目が覚めやすくなります。

もうひとつ重要なのが、メラトニンの分泌低下です。メラトニンは「眠りのホルモン」として知られ、夜間に高まることで睡眠を促しますが、加齢とともにその分泌量が減少すると考えられています。メラトニンが少ないと睡眠と覚醒のリズムが不安定になり、眠りが浅く断続的になりやすいとされています。これらの変化は「病気」ではなく生理的な老化の一部ですが、それゆえに「どうにもならない」と諦めてしまいがちで、実際には対処できる余地があります。

アルコール代謝と睡眠の後半覚醒メカニズム図解
図2:アルコール摂取後の血中濃度推移と睡眠後半の覚醒。就寝前の飲酒は前半の入眠を促すものの、代謝が進む夜中以降に覚醒が増えやすくなるとされています[3]

アルコールが中途覚醒を引き起こす仕組み

「お酒を飲むとよく眠れる」という感覚を持つ方は少なくありませんが、これは睡眠の前半だけに当てはまる話です。アルコールには鎮静作用があり、飲酒後1〜2時間で脳に働きかけて眠気を促します。しかし、体内でアルコールが代謝されてアセトアルデヒドに変わると、今度は覚醒を促す方向に作用が逆転します。Koob & Colrainがまとめたレビュー論文(Neuropsychopharmacology, 2019)によれば、飲酒した夜の後半では睡眠中の覚醒が増加し、深い徐波睡眠(N3)やREM睡眠が減少することが繰り返し報告されています[3]

さらに、アルコールには利尿作用があります。夜中にアルコールの血中濃度が下がると同時に尿意が強まり、トイレのために目が覚める原因にもなります。この「アルコールによる中途覚醒」は、飲酒量が増えるほど、また習慣化するほど顕著になっていく傾向があるとされています。

また、「飲まないと眠れない」という状態が続くと、アルコールへの耐性が生じ、同じ量では眠れなくなっていきます。そのため摂取量が増え、睡眠の質はさらに低下するという悪循環に陥りやすいと考えられています。就寝前の飲酒習慣がある方は、中途覚醒の大きな要因になっている可能性があります。寝酒を睡眠薬の代わりに使うことは、専門家によって推奨されていません。

夜間頻尿と睡眠分断の関係図解
図3:夜間頻尿と睡眠の分断。1回あたりのトイレ覚醒は軽症でも睡眠を細切れにし、2回以上になると睡眠の質と日中機能に大きな影響を与えるとされています[4]

夜間頻尿・睡眠時無呼吸――身体的な原因が引き起こす夜間覚醒

「目が覚めたらトイレに行きたくなる」のか、「トイレに行きたいから目が覚める」のか——実はどちらも起きます。Sleep Medicine Reviewsに掲載されたBliwise & Holm-Larsenらのレビュー(2010)によれば、65歳以上の成人において夜間排尿が覚醒の主な原因として挙げられる割合は77.1%に上り、18〜44歳の39.9%と比べて際立って高いことが示されています[4]。さらに、夜間に2回以上の排尿がある人は睡眠の質と日中機能が最も大きく損なわれると報告されています。

夜間頻尿の背景には、前立腺肥大症・過活動膀胱・心不全・糖尿病・夜間多尿など複数の疾患が関係することがあります。また、就寝前に水分(特にカフェインやアルコールを含む飲料)を多く摂取することも原因になります。夜間頻尿が続く場合は、泌尿器科や内科での原因検索が重要です。

もうひとつ中途覚醒と強く関連する身体的原因が閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)です。睡眠中に上気道が塞がって呼吸が一時的に止まり、脳が「息をしなさい」という信号を出して目を覚ます——このサイクルが1時間に数回から数十回繰り返されます。本人は覚醒したことを覚えていない場合も多く、「なぜか夜中に何度も目が覚める」という訴えとして現れることがあります。OSAに気づかれずにいると、日中の強い眠気、高血圧、心血管疾患のリスク上昇につながるとされているため、診断と対処が重要です。パートナーから「いびきが大きい」「呼吸が止まっている」と指摘された場合は、睡眠専門外来への相談を検討するサインとなります。

不眠重症度とコルチゾール値の関係:Passosらの研究知見の図解
図4:不眠重症度と朝のコルチゾール値の関係。Passosら(Sleep Science, 2023)の研究では不眠重症度スコアが高いほど朝のコルチゾール値が高く(r=0.37, p=0.03)、慢性的な過覚醒状態が示唆されています[5]

ストレス・コルチゾールと「過覚醒」が睡眠を壊すメカニズム

精神的なストレスが続くと、脳の視床下部—下垂体—副腎皮質系(HPA軸)が活性化し、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が増加します。コルチゾールは本来、朝方に分泌がピークを迎えて覚醒を促す役割がありますが、慢性的なストレス下では夜間にも分泌が続き、睡眠を妨げる方向に作用すると考えられています。

Passosらがまとめた研究(Sleep Science, 2023)では、慢性不眠症患者34名を対象に調査し、不眠重症度スコアが高いほど朝のコルチゾール値が有意に高い(r=0.37, p=0.03)という関連が示されました[5]。また、この研究での平均「睡眠開始後の覚醒時間(WASO)」は68.2分に達しており、睡眠維持の難しさが数値として示されています。同論文は「慢性的な不眠症は24時間の過覚醒状態を反映している」と考察しています。

過覚醒モデルとして知られる理論的枠組みを解説したHarvey & Tang(Nat Rev Neuroscience, 2012頃を含む)や、PMC収録のKalmbach & Espieらのレビュー(2018)は、不眠のある人が特にストレスに対して脆弱な睡眠反応性を持ち、そこへのルーミネーション(考え込み)が重なることで入眠後も覚醒が続きやすいことを指摘しています[6]。要するに、「なぜ目が覚めてしまうのか」という不安そのものが、次の覚醒を招く引き金になるのです。また、夜間覚醒後に時計を確認し「まだ3時か、あと4時間しか眠れない」と焦る行動も、覚醒状態を強める傾向があるとされています。

概日リズムとの関連も見過ごせません。交代勤務や夜型の生活リズム、時差が続くと、体内時計のリズムが乱れ、夜中に眠気のピークと覚醒のピークが交互に訪れるような状態になることがあります。これも中途覚醒の一因とされています。

中途覚醒後の再入眠を促す環境と行動のポイント図解
図5:中途覚醒後の再入眠に向けた環境・行動の考え方。暗さ・適温・静音の維持と、眠れないときの「床から出る」アプローチが推奨されています

中途覚醒後に眠れなくなる理由と、再入眠に向けた考え方

夜中に目が覚めた後、「眠れない」状態が長引くのはなぜでしょうか。主な理由のひとつは睡眠圧(睡眠ホメオスタシス)の低下です。睡眠圧は「起きている時間が長いほど高まり、眠ることで徐々に低下する」ものです。一度眠って目が覚めた時点では睡眠圧がある程度低下しており、特に夜の後半(明け方前後)は朝に向けてコルチゾールが上昇し始めるタイミングとも重なるため、再び眠りに入りにくいのです。

また、目が覚めた後に「どうしよう」と考え込んだり、スマートフォンを見たりすることは、脳を覚醒状態に引き戻す刺激になります。特にスマートフォンの画面から発せられる青色光(ブルーライト)は、脳が「朝が来た」と誤認する原因となり、メラトニンの分泌を抑制する可能性があるとされています。

再入眠を妨げない行動として、不眠の認知行動療法(CBT-I)の考え方では以下のアプローチが知られています。

  • 時計を見ない:覚醒後に残り睡眠時間を計算する行動は不安を高める傾向があります
  • 20〜30分眠れなければ床から出る:ベッドを「眠れない場所」として条件付けしないためのアプローチ(刺激制御法)です
  • 薄暗い環境を維持する:トイレに起きる場合は最小限の灯りを使い、強い光刺激を避けます
  • 腹式呼吸・漸進的筋弛緩:交感神経の活性化を落ち着かせる補助的な手法として活用されています
  • 「眠れなくても横になっていれば身体は休んでいる」という考え方を持つことも、不安を和らげる一助とされています

ただし、これらのアプローチは対症的なものであり、根本原因(夜間頻尿・睡眠時無呼吸・うつ病など)が背景にある場合は、そちらへの適切な対処が先決です。また、睡眠薬の使用については自己判断せず、医師との相談のうえで検討することが大切です。

受診を検討したいサイン

中途覚醒が続く場合、日常生活の見直しで対処できることもありますが、以下に当てはまる場合は医療機関への相談を検討してください。

  • 週に3回以上、2週間以上続いている:不眠症の診断基準の目安とされている頻度・期間です
  • 日中の眠気・集中力低下・気分の落ち込みが伴っている:睡眠の質が日中の生活に影響を及ぼしている状態です
  • パートナーから「いびきが大きい」「呼吸が止まっている」と言われる:睡眠時無呼吸症候群の可能性があり、専門的な検査が必要です
  • 夜間のトイレが2回以上続いている:夜間頻尿の背景疾患(前立腺肥大・過活動膀胱・心不全など)の確認が必要です
  • 気分の落ち込み、意欲の低下、食欲変化を伴う:うつ病などの精神疾患が睡眠に影響している可能性があります
  • 就寝前・夜間に下肢のむずむず感や不快感がある:むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)の可能性があります
  • 自分でアルコールを使って眠ろうとしている:依存が生じるリスクがあり、専門家への相談が助けになります

受診先は、症状によって内科・精神科・心療内科・睡眠専門外来・泌尿器科などが考えられます。かかりつけ医に相談し、必要に応じて専門科へ紹介してもらうのもひとつの方法です。

中途覚醒で受診を検討すべきレッドフラッグのチェックリスト図解
図6:中途覚醒で受診を検討したい主なサイン。いびき・呼吸停止・頻尿・強い日中眠気・気分の落ち込みなどが続く場合は医療機関への相談が推奨されます

参考文献

  1. 国立精神・神経医療研究センター(2016)「睡眠障害ガイドライン(わが国における睡眠問題の現状)」国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所. PDF
    ― 本記事での引用箇所:日本人における中途覚醒・入眠障害・早朝覚醒の有症状率15〜25%、中高年で中途覚醒が顕著に増加する、という疫学データ
  2. Ohayon M, et al.(2017)「Sleep in Normal Aging」Sleep Medicine Clinics, 13(1):1. PMC
    ― 本記事での引用箇所:高齢者は若年者と比べて夜間覚醒回数が約2.7倍多い、睡眠効率が10年ごとに低下し深いノンレム睡眠が男性で10年あたり約1.7%減少するというデータ
  3. Koob GF, Colrain IM(2019)「Alcohol use disorder and sleep disturbances: a feed-forward allostatic framework」Neuropsychopharmacology, 45(1):141–165. PMID: 31234199. PMC
    ― 本記事での引用箇所:飲酒後の夜間後半で覚醒が増加し深い徐波睡眠・REM睡眠が減少する、という睡眠構造への影響
  4. Bliwise DL, et al.(2010)「The effect of nocturia on sleep」Sleep Medicine Reviews, 15(2):91. PMC
    ― 本記事での引用箇所:65歳以上の77.1%が夜間排尿を覚醒の主因として挙げる、2回以上の夜間排尿が睡眠の質・日中機能に最大の影響を与えるというデータ
  5. Passos GS, et al.(2023)「Insomnia Severity is Associated with Morning Cortisol and Psychological Health」Sleep Science, 16(1):92. PMC
    ― 本記事での引用箇所:慢性不眠症患者において不眠重症度と朝のコルチゾール値が有意に相関(r=0.37, p=0.03)、睡眠開始後の平均覚醒時間68.2分というデータ
  6. Kalmbach DA, Espie CA, et al.(2018)「Hyperarousal and sleep reactivity in insomnia: current insights」Nature and Science of Sleep. PMC
    ― 本記事での引用箇所:ストレスへの過剰な睡眠反応性とルーミネーションが不眠の維持に関与するという過覚醒モデルの概念

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療に代わるものではありません。症状が続く場合や悪化する場合は、医療機関にご相談ください。睡眠薬の服用に関しては必ず医師の指示に従ってください。

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