予防・健診

特定健診(特定健康診査)とは?検査項目・判定基準・保健指導の流れをわかりやすく解説

編集:和ごころプロジェクト|公開 2026.06.29編集方針

40歳を過ぎると、職場や自治体から「特定健診(特定健康診査)」の案内が届くようになります。「なんとなく受けているけれど、何を調べているのか分からない」「毎年受けているのに、結果の見方がよく分からない」という方も少なくありません。この記事では、特定健診の目的・法的根拠・具体的な検査項目・結果の見方・その後の保健指導まで、公的機関と研究データをもとに分かりやすく整理します。

特定健診とは何か:メタボに着目した予防型の健康診査

特定健診は「特定健康診査」の略称で、2008年度(平成20年度)に「高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)」に基づいて始まりました[1]。実施義務を負うのは医療保険者(健康保険組合・協会けんぽ・市町村国保など)であり、40歳から74歳の加入者全員が対象です。

特定健診の最大の特徴は、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目した「予防」目的の健診である点です。従来の健康診断が「病気の早期発見・早期治療」を目的としていたのに対し、特定健診は「病気になる前に生活習慣を見直す」ことを目的としています。

メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積を基盤として、高血圧・高血糖・脂質異常が重なった状態です。国際的なメタ解析(87研究・951,083人を対象)では、メタボリックシンドロームのある人は心血管疾患の発症リスクが約2.35倍、脳卒中リスクが約2.27倍高まることが報告されています[2]。特定健診はこの「連鎖の入口」となる内臓脂肪の蓄積を早期に発見することを最優先の目的に置いています。

特定健診の対象年齢(40〜74歳)と実施の流れを表す全体像の図解
図1:特定健診の対象と実施の概要(出典:厚生労働省 特定健診・特定保健指導について[1]をもとに作図)

特定健診の検査項目:基本項目と詳細項目の内訳

特定健診の検査項目は、厚生労働省の「標準的な健診・保健指導プログラム」(令和6年度版)[3]によって定められており、「基本的な健診項目」と「詳細な健診の項目」の2段階に分かれています。

  • 質問票(問診):服薬歴・喫煙歴・飲酒状況・運動習慣・食事内容・睡眠・体重変化など
  • 身体計測:身長・体重・BMI・腹囲(ウエスト周囲径)
  • 血圧測定:収縮期血圧・拡張期血圧
  • 理学的検査(身体診察):内科的所見
  • 検尿:尿糖・尿蛋白
  • 血液検査(脂質):中性脂肪(トリグリセライド)・HDLコレステロール・LDLコレステロール
  • 血液検査(血糖):空腹時血糖またはHbA1c
  • 血液検査(肝機能):AST(GOT)・ALT(GPT)・γ-GTP

これらが「基本的な健診項目」として全員に実施されます。さらに医師が必要と判断した場合には「詳細な健診の項目」として、心電図・眼底検査・血清クレアチニン検査・貧血検査(赤血球・血色素量・ヘマトクリット)が追加されます。

一般的な健康診断(定期健康診断)と比べると、視力・聴力・胸部X線などが含まれない代わりに、腹囲の測定と詳細な血液検査(LDL・HDL・中性脂肪・HbA1c)が必須になっています。これはメタボリックシンドロームの早期発見・介入に特化した設計です。

なお、2024年度から始まった第4期(2024〜2029年度)では、飲酒に関する質問項目が詳細化され、週あたりの飲酒頻度と飲酒量をより細かく把握できるよう改訂されています[4]

メタボ判定のしくみ:腹囲・血圧・血糖・脂質のチェックポイント

特定健診の結果をもとに、保健指導の対象者を選定するための「階層化」が行われます。まず腹囲(男性85cm以上、女性90cm以上)またはBMI25以上かどうかを確認します。この腹囲基準は内臓脂肪面積100cm²に相当し、日本における大規模コホート研究(吹田研究・高島研究など)のデータに基づいて策定されています。

次に以下のリスク因子をカウントします:

  • 血糖:空腹時血糖100mg/dL以上またはHbA1c5.6%以上(またはインスリン・血糖降下薬を服用中)
  • 脂質:中性脂肪150mg/dL以上(随時採血175mg/dL以上)またはHDLコレステロール40mg/dL未満(または脂質異常症薬を服用中)
  • 血圧:収縮期130mmHg以上または拡張期85mmHg以上(または血圧降下薬を服用中)
  • 喫煙歴:現在喫煙している
メタボリックシンドロームの心血管リスクを示すグラフ(Mottilloら2010のメタ解析をもとに作図)
図2:メタボリックシンドロームと心血管疾患リスクの関係(Mottilloら(2010)[2]のメタ解析をもとに作図。相対リスク2.35倍はCVD全体。個別リスクは信頼区間を含む推計値)

これらのリスク因子の数に応じて、「情報提供」「動機づけ支援」「積極的支援」の3段階に分類されます。リスクが多いほど、より手厚い保健指導を受けることが推奨されます。

厚生労働省の研究班(代表:門脇孝・東京大学教授)が全国12コホートのデータを分析した研究では、腹囲・BMIが基準以下であっても、血糖・血圧・脂質のリスクが1つ以上あると心血管疾患の発症ハザード比が男性で約1.91倍、女性で約2.12倍になることが示されました[5]。この結果は、腹囲が基準に届かなくても各リスク因子への早期介入が重要であることを示しています。

2023年度の受診状況:対象者5,210万人のうち59.9%が受診

厚生労働省が公表した2023年度の実施状況によると、特定健診の対象者数は約5,210万人(40〜74歳の医療保険加入者)であり、受診者数は約3,123万人、実施率は59.9%でした[1]。2022年度(58.1%)、2021年度(56.5%)と年々上昇していますが、第4期の全体目標値である70%以上には届いていない状況です。

受診率が低い背景には、「自覚症状がないと必要性を感じにくい」「平日に受診する時間が取れない」「会社の定期健診と混同している」などの理由が挙げられています。また企業の従業員(被用者保険加入者)は事業所健診(定期健康診断)と特定健診が連携されているため重複受診を避けられますが、国民健康保険(自営業者や退職後の方)は自分で申込みが必要な点も受診率の差に影響しています。

なお、企業の定期健康診断(労働安全衛生法に基づく)と特定健診は目的が異なります。定期健診は業務上の健康障害防止が主目的であるのに対し、特定健診はメタボリックシンドロームに着目した生活習慣病予防が主目的です。多くの場合、定期健診の結果を特定健診のデータとして代用できるよう(「事業者健診データの活用」)制度が整備されています。

特定保健指導:結果が出た後の「生活改善サポート」とは

特定健診とセットで知っておきたいのが特定保健指導です。これは、特定健診の結果でリスクが認められた方を対象に、保健師・管理栄養士などの専門スタッフが生活習慣の見直しをサポートする制度です。

支援の内容はリスクの程度によって2種類に分かれます:

  • 動機づけ支援:面談1回(20分以上)+ 3か月後のフォローアップ。生活習慣改善の目標を立て、自分で行動計画を実践する。
  • 積極的支援:初回面談(20分以上)+ 複数回の継続的な支援(3〜6か月間)。より集中的な生活改善プログラム。

特定保健指導は医療保険者が費用を負担するため、自己負担なし(または少額の負担)で受けられることが一般的です。ただし、すでに糖尿病・高血圧・脂質異常症などで医療機関を受診中の方は、通常は対象外となります(その場合は主治医による継続的な管理が優先されます)。

2023年度の特定保健指導の実施率は約24.7%にとどまっており(厚生労働省2023年度実施状況)、勧奨を受けた方の4人に3人以上が保健指導を受けていない計算になります。保健指導の利用率向上は、第4期の重要な政策課題のひとつとされています。

受診を検討したいサイン

特定健診は40〜74歳の方が定期的に受けることが推奨されていますが、以下のような状況では特定健診・保健指導の活用に加えて、医療機関への相談を優先的に検討してください。

  • 健診結果で「要医療」「要精密検査」と記載されている(医療機関への受診が必要)
  • 腹囲・血圧・血糖・脂質のうち複数項目で保健指導判定値を超えている
  • 頭痛・動悸・息切れ・むくみ・視力の急な変化など、自覚症状が新たに出ている
  • 糖尿病・高血圧・脂質異常症の薬を服用中なのに、かかりつけ医の定期受診をしていない
  • 家族(特に親・兄弟)が40〜50代に心筋梗塞・脳卒中を経験している
  • 喫煙習慣があり、かつ血圧・血糖・脂質の値が基準に近い状態が続いている
  • 過去2年以上、特定健診(または定期健診)を受けていない
特定健診後の流れと受診を検討すべき状況を整理した図解
図3:特定健診の結果区分と次のアクションの目安(「要医療」は速やかな医療機関受診を)

また、特定健診の結果はあくまでも生活習慣病の「リスク評価」です。血糖・血圧・脂質の値が「保健指導判定値」を超えていても、それだけで病気と診断されるわけではありません。一方で、値が基準内でも症状や家族歴によっては医師への相談が必要な場合があります。健診結果に疑問を感じたら、かかりつけ医に相談することをお勧めします。

食後の血糖値の上昇(血糖スパイク)が気になる方は、食後の眠気やだるさと血糖スパイクの関係も参考にしてください。

参考文献

  1. 厚生労働省(2025年5月公表)「2023年度 特定健康診査・特定保健指導の実施状況」厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/newpage_00063.html
    ― 本記事での引用箇所:「2023年度の実施率59.9%、対象者数約5,210万人、受診者数約3,123万人」「40〜74歳対象・高齢者医療確保法に基づく」の根拠
  2. Mottillo S, Filion KB, Genest J, et al.(2010)「The metabolic syndrome and cardiovascular risk: a systematic review and meta-analysis」Journal of the American College of Cardiology, 56(14):1113–1132. PubMed PMID: 20863953
    ― 本記事での引用箇所:「メタボリックシンドロームは心血管疾患リスクを約2.35倍、脳卒中リスクを約2.27倍高める」の根拠(87研究・95万人超のメタ解析)
  3. 厚生労働省(令和6年度版)「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」厚生労働省 健康局健康課. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000194155_00004.html
    ― 本記事での引用箇所:「基本的な健診項目」と「詳細な健診の項目」の内訳・メタボ判定基準(腹囲・血糖・血圧・脂質の各数値)の根拠
  4. 厚生労働省・健康増進に係る科学的な知見を踏まえた技術的事項に関するWG(令和4年8月)「特定健診・特定保健指導の健康増進に係る科学的な知見を踏まえた技術的事項について(案)(議論のまとめ)」厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000979441.pdf
    ― 本記事での引用箇所:「第4期からの飲酒・喫煙質問項目の改訂内容」「検査項目の科学的根拠の整理(現状維持の方針)」の根拠
  5. 日本肥満症予防協会(2016年4月)「特定健診の基準を見直し『腹囲が基準未満』でも心血管疾患リスクが2倍に」(厚生労働科学研究班・門脇孝東京大学教授らの報告の解説). https://himan.jp/news/2016/000156.html
    ― 本記事での引用箇所:「腹囲・BMIが基準以下でもリスク因子1つ以上で心血管疾患ハザード比が男性1.91倍、女性2.12倍」(全国12コホート研究、男性2万591人・女性1万7,901人)の根拠

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療に代わるものではありません。健診結果の解釈や生活習慣の改善については、かかりつけ医または健診機関の担当医・保健師にご相談ください。「要医療」「要精密検査」の結果が出た場合は、速やかに医療機関を受診してください。

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