法人・健康経営

ストレスチェック義務化【50人未満も対象へ】中小企業が今から取り組むべき対応手順

編集:和ごころプロジェクト|公開 2026.06.29編集方針

「うちは従業員が少ないから、ストレスチェックは任意でいい」——そう思っていた経営者・人事担当者の方は、今すぐ認識を改める必要があります。2025年5月に改正労働安全衛生法が公布され、従業員50人未満の事業場へのストレスチェック義務化が決定しました。施行は2028年4月1日。準備期間は約2年です。制度の概要・実務フロー・よくある落とし穴を、法令根拠とともに整理します。

なぜ今、50人未満まで義務化されるのか

ストレスチェック制度は2015年12月に施行され、従業員50人以上の事業場に実施義務が課されてきました。一方、50人未満の小規模事業場は「努力義務」にとどまっており、実施率は32.3%に過ぎないとされています[1]

この格差が放置できなくなった背景には、深刻化するメンタルヘルス情勢があります。2023年度の精神障害による労災支給決定件数は883件で、前年度から173件増加し、統計開始以来最多を5年連続で更新しました[2]。労災請求件数も3,575件と過去最多です。

また、厚生労働省の労働安全衛生調査では、強いストレスを感じていると回答した労働者の割合は82.7%に上り、メンタルヘルス不調で1か月以上の休業が発生した事業所は10.4%、退職に至った事業所は6.4%に達しています[2]

全事業場の95.9%は50人未満の小規模事業場であり、働く人の半数以上がその事業場に勤めています[1]。この層のメンタルヘルス対策が手薄なまま放置されることへの問題意識が、今回の法改正につながっています。

精神障害労災の増加トレンドと50人未満事業場のストレスチェック実施率の低さを示す比較図
図1:精神障害労災支給決定件数の推移と50人未満事業場の実施率(厚生労働省データをもとに作図 [2][1])

法改正のスケジュールと義務の内容

改正労働安全衛生法の施行スケジュールと、50人未満事業場に課される義務の内容を正確に把握しておきましょう。

  • 2025年5月:改正労働安全衛生法 公布
  • 2026年2月25日:「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」厚生労働省が公表[3]
  • 2026年5月18日:施行期日が2028年4月1日と確定
  • 2028年4月1日:施行日(50人未満事業場にも年1回の実施が義務化)
  • 2029年3月31日:施行後最初のストレスチェック完了期限

新たに課される義務の核心:

  • 年1回のストレスチェック実施(労働安全衛生法第66条の10に基づく)
  • 高ストレス判定者が面接を希望した場合、医師による面接指導の実施
  • 労働基準監督署への報告は義務なし(負担軽減の観点から免除)[4]
  • 集団分析(部署ごとの傾向把握)は引き続き努力義務

義務化後に実施しない場合は、是正指導・行政指導の対象となる可能性があります。また、従業員のメンタルヘルス対策を怠ったとして安全配慮義務違反(民事上の責任)を問われるリスクも否定できません。

ストレスチェック義務化スケジュールのタイムライン図解、2025年公布から2029年完了期限まで
図2:改正労働安全衛生法 施行スケジュールのタイムライン

実施の対象者・実施者・外部委託のポイント

50人未満の事業場では産業医・衛生管理者の選任義務がなく、「誰がどうやって実施するのか」という疑問が最初の壁になります。制度の構造を整理します。

対象労働者(チェックを受ける側):

  • 無期雇用契約の労働者
  • 契約期間が1年以上ある有期雇用労働者
  • 週の所定労働時間が通常労働者の4分の3以上の者
  • 派遣社員は派遣元事業場が実施義務を担う

実施できる資格者(実施者):医師・保健師・歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師

これらの有資格者が社内にいない場合、外部機関への委託が推奨されています[4]。厚生労働省のマニュアルでも、プライバシー保護の観点から50人未満事業場は外部委託が望ましいと明記されています。既存の健康診断機関にストレスチェックの併託が可能かどうか確認するのが効率的な方法とされています。

高ストレス者への面接指導:高ストレスと判定された労働者が医師の面接を希望した場合、面接指導は必須です。産業医がいない小規模事業場では、地域産業保健センターを活用することで無料で医師の面接指導を受けられます

使用できる調査票:厚生労働省が推奨するのは「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」[5]です。仕事のストレス要因17項目、心身のストレス反応29項目、周囲のサポート9項目、満足度2項目で構成されています。中小事業場向けには23項目の簡略版もあります。

職業性ストレス簡易調査票57項目の構成と外部委託モデルの実施体制フロー図
図3:職業性ストレス簡易調査票57項目の構成と50人未満事業場の外部委託モデル(厚生労働省推奨調査票 [5] をもとに作図)

7ステップ実務フローと陥りやすい落とし穴

「2028年施行だから、まだ先の話」と思いたいところですが、外部委託先の選定、社内規程の整備、予算確保には相応の時間がかかります。2026年後半から着手するのが現実的です。

Step 1|方針決定・体制構築(〜2026年度内)
経営者がストレスチェック実施を健康経営の方針として明文化します。担当者(人事・総務)を選任し、役割分担を決めます。

Step 2|実施方法の選択(〜2026年度内)
調査票(57項目/23項目)の選定、外部委託か内製かの判断、実施時期を決めます。

Step 3|委託先の選定・契約(2027年度前半まで)
健診機関・EAP事業者・ストレスチェック専門サービス等を比較検討します。費用・サポート体制・セキュリティを確認します。

Step 4|社内規程の整備(2027年度中)
実施方針の書面化を行います。就業規則への明記が望ましいとされます。

Step 5|労働者への周知(実施1〜2か月前)
制度の目的・個人情報の取り扱いを丁寧に説明します。受検は任意であることも伝えます。

Step 6|ストレスチェック実施(2028年4月〜2029年3月)
結果は本人に直接通知。事業者は本人の同意なしに結果を閲覧することはできません。

Step 7|高ストレス者対応・記録保存(継続的)
面接指導の結果や就業措置の内容は5年間保存が必要とされています。

実務上、よく陥る落とし穴として以下の5点が挙げられます。

  • 準備を先送りにする:委託先選定・規程整備・予算措置は半年〜1年かかることがあります。
  • 経営者が個人結果を閲覧しようとする:本人の同意なしの閲覧は法律で禁止されています。
  • 「やった」で終わる:集団分析の結果を職場環境改善に活かさないと制度の意味が薄れます。
  • 高ストレス者対応が後手に回る:地域産業保健センターへの事前登録を推奨します。
  • 受検率が低いまま形骸化する:制度の趣旨(個人を守る・プライバシー厳守)を丁寧に説明することが受検率向上につながるとされています。
ストレスチェック実施の7ステップフロー図解。2026年準備開始から2029年完了まで
図4:2028年施行に向けた7ステップ実務フローと主な落とし穴

健康経営優良法人認定との連動とビジネスメリット

ストレスチェックの義務化対応は、コンプライアンスの遵守にとどまらず、企業の競争力強化につながる機会でもあります。

経済産業省が推進する「健康経営優良法人」(中小規模法人部門)の認定では、ストレスチェックの実施状況が評価項目に含まれます。2025年認定では中小規模法人部門だけで19,796法人が認定を受けており、前年の16,733法人から大幅に増加しています[6]。認定法人は採用活動でのアピールや金融機関の評価向上に活用できるとされています。

また、プレゼンティーズム(出勤しているが体調不良等でパフォーマンスが低下している状態)の観点からも、メンタルヘルス対策の経営的意義は大きいとされています[7]。中小企業にとって従業員1人あたりのパフォーマンス依存度は大企業より高く、メンタルヘルス不調による欠勤・離職の影響は相対的に大きくなる可能性があります。ストレスチェックを「やらされる義務」ではなく、「人材定着と職場環境改善のツール」と位置づけることで、実質的な健康経営の実践につながると考えられています。

国は50人未満事業場のストレスチェック導入を支援するため、産業保健総合支援センターによる無料相談窓口や、地域産業保健センターによる面接指導の無料提供を行っています。各都道府県の産業保健総合支援センターへの問い合わせが最初の一歩です。

健康経営優良法人認定のメリットとストレスチェック・プレゼンティーズム対策の関係を示す概念図
図5:健康経営優良法人認定とメンタルヘルス対策の連動(経産省・厚労省ガイドラインをもとに作図 [6][7])

和ごころの法人向け支援でできること

和ごころでは、企業・事業場の担当者が安心してストレスチェック対応を進められるよう、以下の法人向けサービスをご用意しています。

  • 職場向けメンタルヘルス講座:管理職・従業員向けのストレスマネジメント、セルフケア研修
  • 職場健康相談サービス:従業員が気軽に相談できる健康相談窓口の設置支援
  • ストレスチェック実施支援:外部委託先の選定アドバイスから集団分析の活用まで
  • 腰痛・メンタル対策プログラム:身体とこころの両面からアプローチする職場健康プログラム
  • 健診・保健指導連携:定期健康診断との一体的な健康管理体制の構築支援

和ごころの法人向けサービスを見る/ご相談・お見積りはお問い合わせから。

受診・専門機関への相談を検討したいサイン

ストレスチェックはあくまでスクリーニングです。以下のような状況が従業員に見られる場合や、自社内で対応できない局面では、専門機関への相談を検討してください。

  • 従業員が長期間にわたって体調不良・休みがちな状態が続いている
  • ストレスチェックで高ストレス者と判定された従業員が複数名出た
  • 従業員が「消えたい」「もう無理」などの発言をした(緊急の専門的介入が必要な状況です)
  • 管理職や担当者自身がメンタルヘルス対応に疲弊している
  • ストレスチェックの実施体制の構築方法が分からず、具体的な相談窓口が必要
  • 高ストレス者が面接指導を希望しているが、医師の確保ができていない

地域産業保健センター(無料)、産業保健総合支援センター、かかりつけ医への相談が最初の窓口になります。従業員本人が緊急の相談を必要とする場合は、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)もご利用いただけます。

ストレスチェック後の対応フロー。高ストレス者への面接指導と専門機関への相談窓口一覧図
図6:高ストレス者への対応フローと相談窓口(地域産業保健センター・産業保健総合支援センター)

参考文献

  1. さんぽみち(ドクタートラスト)(2026年)「ストレスチェック義務化が全事業場に拡大!2028年施行の法改正ポイント【最新】」さんぽみち. https://sanpomichi-dt.jp/50-stresscheck-gimuka/
    ― 本記事での引用箇所:「全事業場の95.9%が小規模事業場」「50人未満の実施率32.3%」「2028年4月1日施行確定」の根拠
  2. 厚生労働省(2024年)「令和5年度 過労死等の労災補償状況・労働安全衛生調査」厚生労働省(t-pec解説記事経由). https://t-pec.jp/work-work/article/445
    ― 本記事での引用箇所:「精神障害労災883件・過去最多」「労災請求3,575件」「ストレスを感じる労働者82.7%」「メンタル不調休業事業所10.4%」「退職6.4%」の根拠
  3. 厚生労働省(2026年)「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアルを公表します」厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_69680.html
    ― 本記事での引用箇所:「2026年2月25日マニュアル公表」「プライバシー保護・現実性・実効性の3本柱」の根拠
  4. 中央労働災害防止協会(2026年)「ストレスチェック50人未満義務化 改正Q&A」中央労働災害防止協会(JISHA). https://www.jisha.or.jp/service/stress-check/small-scale/q_a.html
    ― 本記事での引用箇所:「外部委託推奨」「対象労働者の要件」「高ストレス者面接指導の義務」「報告義務なし」の根拠
  5. 厚生労働省「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/stress-check_j.pdf
    ― 本記事での引用箇所:「57項目の構成(ストレス要因17・反応29・サポート9・満足度2)」の根拠
  6. 経済産業省(2025年)「健康経営優良法人2025認定法人が決定しました」経済産業省. https://www.meti.go.jp/press/2024/03/20250310005/20250310005.html
    ― 本記事での引用箇所:「中小規模法人部門19,796法人認定」の根拠
  7. SOMPOヘルスサポート(2020年)「健康経営で注目される生産性指標"プレゼンティーイズム"を解説」SOMPOヘルスサポート株式会社. https://www.sompo-hs.co.jp/useful/2020/09/000212/
    ― 本記事での引用箇所:プレゼンティーズムの定義と健康関連コストへの影響の参考

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、法的アドバイスや個別事業場の診断・指導に代わるものではありません。具体的な対応については、所轄の労働基準監督署・産業保健総合支援センター、または社会保険労務士にご相談ください。

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