法人・健康経営

健康経営優良法人(中小規模)の取り方・認定要件と申請手順【2026年版】

編集:和ごころプロジェクト|公開 2026.06.29編集方針

「人手不足と採用難が続く中、いま中小企業の経営者・人事担当者のあいだで急速に注目が集まっているのが健康経営優良法人の認定制度です。2026年3月に発表された「健康経営優良法人2026」では、中小規模法人部門の認定数が23,085法人に達し、2020年比で約4倍に拡大しています[1]。認定を取得することで、ロゴマークの使用から金融優遇・入札加点まで幅広いインセンティブが得られる一方、取り組みを通じて社員の定着率向上・生産性の底上げにつながると考えられています。本記事では、中小企業が「健康経営優良法人(中小規模法人部門)」の認定を取得するための要件・手順・よくある落とし穴を、根拠とともに整理します。

健康経営優良法人とは――制度の背景と認定数の現状

「健康経営優良法人認定制度」は、経済産業省と日本健康会議が連携して運営する顕彰制度です。定義の上では、「従業員の健康保持・増進への取り組みを将来的な収益性向上への投資と捉え、健康管理を経営的視点から戦略的に実践すること」が「健康経営」とされています[1]。大規模法人部門(ホワイト500)と中小規模法人部門(ブライト500・ネクストブライト1000)の2部門があり、中小企業は従業員数にかかわらず中小規模法人部門に申請します。

2026年3月時点の認定数は、大規模法人部門が3,765法人、中小規模法人部門が23,085法人に達しています[1]。認定有効期間は「健康経営優良法人2026」の場合、2026年3月9日から2027年3月31日です。毎年度、前年度の8〜10月ごろに申請受付が行われ、翌年3月ごろ発表されます。認定を受けた法人は「健康経営優良法人」のロゴマークを自社ホームページや名刺に使用でき、自治体・金融機関などから融資優遇・入札加点・補助金優先採択など多様なインセンティブを受けられます[2]

健康経営優良法人認定制度の概要図:中小規模法人部門とインセンティブの全体像
図1:健康経営優良法人認定制度の概要(中小規模法人部門)と主なインセンティブ

認定取得の経営的メリット――採用・定着・金融優遇

認定を取得する直接のメリットは大きく3つに整理できます。

  • 採用・定着力の強化:就職活動中の求職者の多くが「健康経営に取り組む企業」を選好するとされており、採用コスト削減や定着率の向上につながると考えられています。特に若い世代はワークライフバランスや職場環境を重視する傾向があり、認定ロゴは企業イメージのシグナルとして機能します[2]
  • 金融機関・自治体インセンティブ:都道府県や市区町村・地方銀行・信用金庫が「健康経営優良法人」の認定を、融資優遇・利率引き下げ・保証料割引・補助金優先採択の条件として設定しています。各地域の取り組みはACTION!健康経営ポータルサイトで確認できます[2]
  • 入札・取引先評価での加点:一部の公共調達では健康経営優良法人認定が総合評価方式の加点項目となっており、受注機会の拡大につながる場合があります[2]

さらに、認定のプロセス自体が社内の健康課題の可視化を促します。定期健診受診率や高ストレス者率を把握することで、プレゼンティーズム(出勤しているが体調不良等により生産性が低下している状態)による損失を早期に発見できると考えられています[3]。国内の研究では、メンタルヘルス問題によるプレゼンティーズムの損失は、精神疾患の医療費の7倍以上に相当するとの試算も示されており[3]、健康投資の重要性を示す根拠の一つとして参照されています。

健康経営の3大経営メリット(採用・定着・金融優遇)の比較図
図2:Hara et al. 2025の研究をもとに作図。メンタルヘルス関連のプレゼンティーズムによる損失は日本のGDPの約1.1%に相当するとされている(出典: [3])

中小規模法人部門の認定要件――5大項目の全体像

健康経営優良法人2026(中小規模法人部門)の認定要件は、以下の5大項目で構成されています[4]

  • 1. 経営理念・方針:健康宣言の社内外への発信、および経営者自身の健診受診(必須)
  • 2. 組織体制:健康づくり担当者の設置(必須)、40歳以上の従業員の健診データの提供(求めに応じて)
  • 3. 制度・施策実行:(1)従業員の健康課題の把握と具体的目標の設定、(2)健康経営の実践に向けた土台づくり、(3)従業員の心と身体の健康づくりに関する具体的対策
  • 4. 評価・改善:健康経営の取り組みに対する評価・改善(必須)
  • 5. 法令遵守・リスクマネジメント:定期健診・50人以上のストレスチェック実施、労働関係法令違反がないこと(必須)

3の制度・施策実行では、17の評価項目(①〜⑰)が設けられており、各カテゴリーから一定数以上を満たす必要があります。通常認定(小規模法人特例含む)の場合、①〜③のうち2項目以上、④〜⑩のうち2項目以上、⑪〜⑰のうち2項目以上が目安となっています[4]。さらに上位の「ブライト500」「ネクストブライト1000」を目指す場合は、①〜⑰のうち16項目以上の対応が求められます[4]。また、受動喫煙対策への取り組みは全申請者に必須です。

健康経営優良法人2026中小規模法人部門の5大認定要件と17評価項目の構造図
図3:健康経営優良法人2026(中小規模法人部門)の認定要件構造。必須項目と選択項目の関係を示す

申請の具体的な手順――STEP別ロードマップ

認定取得は以下のステップで進めます。東京商工会議所が運営する「健康経営アドバイザー」制度やACTION!健康経営ポータルサイトも活用できます[2]

  • STEP 1:健康宣言と担当者の設置
    経営者が健康宣言を発信し(社内外への公表)、健康づくり担当者を明確に設置します。経営者自身の定期健診受診も必須です。健康保険組合(協会けんぽ等)への加入状況や健診受診率を確認しましょう。
  • STEP 2:健康課題の把握と目標設定
    定期健診受診率(実質100%が要件)、ストレスチェック結果(50人未満は努力義務・申請加点対象)、有所見率などを集計し、自社の課題を特定します。協会けんぽ加入企業は「健康スコアリングレポート」を活用すると現状把握が容易です[5]
  • STEP 3:施策の選定と実施
    要件の17項目(④〜⑰)の中から、自社の課題に合った施策を選択・実施します。例として、管理職向け健康教育(④)、ウォーキングイベントや運動習慣化支援(⑬)、メンタルヘルス相談窓口の設置(⑮)などが挙げられます。外部専門家(産業医・保健師)との連携や、産業保健総合支援センターの無料相談も活用できます[5]
  • STEP 4:申請書の作成・提出
    毎年8月中旬〜10月中旬を目安にACTION!健康経営ポータルサイトで受付が開始されます。申請フォームにWEB上で回答し、誓約書と申請書を提出します。中小規模法人部門は申請料が不要です(大規模法人部門は有料)[2]
  • STEP 5:審査・認定発表
    提出後、日本健康会議が審査を行い、翌年3月ごろ認定結果が発表されます。認定後はロゴマークが使用可能になり、インセンティブを活用できます。
健康経営優良法人の申請5ステップのフロー図
図4:健康経営優良法人(中小規模法人部門)申請の5ステップロードマップ。STEP1から認定発表まで約1年のサイクル

よくある落とし穴と対策――認定取得の精度を高めるために

初めて申請する中小企業が陥りやすい問題点を3つ挙げます。

  • 落とし穴1:健診受診率が100%に達していない
    定期健診受診率(実質100%)は必須要件であり、1人でも未受診者がいると認定の可否に影響します。派遣社員や短時間労働者も対象に含まれる場合があるため、雇用形態ごとに受診勧奨の仕組みを整えておくことが重要です。
  • 落とし穴2:ストレスチェックを「任意」と認識している
    50人以上の事業場では労働安全衛生法により年1回のストレスチェックが義務付けられています[5]。50人未満は努力義務ですが、申請時に加点対象(③)となり、上位認定(ブライト500等)を目指す場合には実施が事実上必要です。小規模事業場向けには産業保健総合支援センターによる無料支援が利用できます[5]
  • 落とし穴3:「施策を実施した」だけで評価・改善が抜けている
    第4項目「評価・改善」は必須です。健診受診率や高ストレス者率の経年変化を記録し、PDCAサイクルを示す資料を準備しておく必要があります。「やりっぱなし」にならないよう、年1回の定点観測・経営報告会の仕組みを整えることが推奨されます。

また、健康経営に取り組む上では「過大な効果の期待」も注意が必要です。認定取得や各種施策は従業員の健康づくりを支援するものであり、疾病の治癒や生産性の即時向上を保証するものではありません。中長期の視点でデータを蓄積し、取り組みを継続的に見直すことが重要です[3]

健康経営優良法人申請でよくある3つの落とし穴と対策のチェックリスト図
図5:健康経営優良法人(中小規模法人部門)申請でよくある3つの落とし穴と対策チェックリスト

和ごころの法人向け支援でできること

「健康経営優良法人の認定を取得したいが、何から着手すればよいかわからない」「専任の担当者を置く余裕がない」——そうした中小企業の実情に寄り添うのが、和ごころの法人向け健康支援サービスです。以下のような形でご支援できます。

  • 従業員定期健診のサポート:受診率100%達成に向けた受診勧奨の仕組みづくり、健診機関との連携調整
  • ストレスチェック支援:50人未満事業場を含むストレスチェックの実施支援、集団分析結果の読み解き・職場環境改善の提案
  • 職場健康相談・産業保健連携:保健師・管理栄養士・運動指導士による出張相談や健康教育(④項目の充足)
  • 腰痛・メンタルヘルス対策:職場体操プログラムや外部EAP(従業員支援プログラム)との連携による心身両面からの職場対策(⑬⑮項目に対応)
  • 認定申請書類作成のサポート:要件充足状況の確認・申請フォームの記載支援・評価・改善のPDCA記録整備

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和ごころの法人向け健康支援メニューの全体図
図6:和ごころが提供する法人向け健康支援メニューの概要。認定要件の各項目に対応したサポートを提供

受診を検討したいサイン(従業員の健康課題のレッドフラッグ)

健康経営の取り組みを進める中で、以下のような状況が社内で見られる場合は、産業医・保健師・専門医への相談を検討することが望ましいと考えられています。個人の判断のみで放置せず、専門家への相談を促す環境づくりが重要です。

  • 欠勤・遅刻・早退が以前より明らかに増えている従業員がいる
  • ストレスチェック高ストレス者の割合が業界平均や前年より著しく高い
  • 定期健診で有所見者が増加し、再検査・精密検査の未受診者が多い
  • メンタルヘルス不調による休職者が出た、または増加傾向にある
  • 長時間労働(月80時間超の時間外労働等)が常態化している事業場がある
  • 従業員から「気力がわかない」「眠れない」「体がだるい」などの訴えが経営者・上司に届いている

これらのサインは、組織的なプレゼンティーズムやアブセンティーズムの深刻化を示している可能性があります[3]。産業保健総合支援センター(全国47都道府県設置)では無料で相談・訪問支援を受けられます[5]。必要に応じて産業医・主治医・専門医療機関へのつなぎ役を整備することが推奨されます。

参考文献

  1. 経済産業省(2026年)「健康経営優良法人認定制度」経済産業省 ヘルスケア産業政策. https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin.html
    ― 本記事での引用箇所:健康経営優良法人2026の認定法人数(中小規模23,085法人、大規模3,765法人)、認定期間、健康経営の定義
  2. ACTION!健康経営 ポータルサイト(日本健康会議・日本経済新聞社 運営)「申請について」「補助金・インセンティブ(地域の取り組み)」. https://kenko-keiei.jp/
    ― 本記事での引用箇所:中小規模法人部門の申請無料・申請スケジュール・ロゴマーク使用・自治体・金融機関インセンティブの概要
  3. Hara K, Nagata T, Matoba M, Miyazaki T(2025)「The Impact of Productivity Loss From Presenteeism and Absenteeism on Mental Health in Japan」Journal of Occupational and Environmental Medicine 67(9):699. PMC12379787
    ― 本記事での引用箇所:メンタルヘルス関連のプレゼンティーズム損失が日本GDP比約1.1%・精神疾患医療費の7倍以上との試算(27,507人を対象とした大規模調査)
  4. 健康経営優良法人認定事務局(2026年)「健康経営優良法人2026(中小規模法人部門)認定要件」ACTION!健康経営 公開資料. https://kenko-keiei.jp/wp-content/themes/kenko_keiei_cms/files/r7chu_ninteiyoken.pdf
    ― 本記事での引用箇所:5大認定項目・17評価項目の内容・必須要件・ブライト500の要件(16項目以上)
  5. 厚生労働省(2025年)「労働者数50人未満の小規模事業者の方(ストレスチェック等の職場メンタルヘルス対策)」厚生労働省 安全・衛生. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70761.html
    ― 本記事での引用箇所:50人未満事業場のストレスチェック努力義務・産業保健総合支援センター(47都道府県設置)の無料支援・地域産業保健センター(全国350か所)の活用

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、法的・医学的アドバイスに代わるものではありません。認定要件の詳細や最新情報は、経済産業省・ACTION!健康経営ポータルサイトの公式情報をご確認ください。従業員の健康上の懸念については、産業医・主治医等の医療機関にご相談ください。

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