予防・健診

三高(高血圧・高血糖・高コレステロール)を予防する生活習慣——根拠から読み解く日常の見直し方

編集:和ごころプロジェクト|公開 2026.06.30最終更新 2026.06.29編集方針

健康診断で「血圧が少し高め」「血糖値が気になる」「コレステロールの数値に注意」と言われたことはないでしょうか。これらは「三高」と呼ばれる状態で、高血圧・高血糖・高コレステロール(脂質異常症)の三つを指します。それぞれ単独でも問題ですが、重なることで心臓病や脳卒中のリスクが急激に高まることが知られています[1]。この記事では、三高とは何か、なぜ生活習慣が深く関わるのか、そして日常でできる予防の考え方を、公的機関や学会ガイドラインをもとに解説します。

三高とは何か——高血圧・高血糖・高コレステロールが重なるとき

「三高」は医学用語ではありませんが、日本では高血圧・高血糖(糖尿病または境界型)・脂質異常症(高コレステロールや高中性脂肪)の三つをまとめて指す言葉として広く使われています。

日本高血圧学会の「高血圧の10のファクト」(2025年更新版)によると、日本では1年間に約17万人が高血圧を原因とする脳卒中や心臓病で死亡しています[2]。収縮期血圧を10mmHg下げると、脳卒中・心臓病が約2割少なくなるとされています。

高血糖については、日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドライン2024によると、空腹時血糖値126mg/dL以上またはHbA1c 6.5%以上が「糖尿病型」の基準とされています[3]。コレステロールについては、日本動脈硬化学会の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版において、合併症のない一次予防ではLDL-Cは120mg/dL未満を目指すとされています[4]

これらが重なると、「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」に近い状態になります。厚生労働省の令和4年(2022年)特定健診データによると、特定健診受診者約3,017万人のうち、メタボリックシンドローム該当者は16.6%、予備群を含めると約29%に達します[5]。三高は日本人にとって身近なリスクです。

三高(高血圧・高血糖・高コレステロール)が心臓・血管に与えるリスクの全体像を示した図解
図1:三高が重なることで心血管リスクが高まるイメージ。各リスク因子が血管・心臓に影響するという概念図。

三高が動脈硬化を進める仕組み——血管で何が起きているのか

三高が怖い理由は、「動脈硬化」を進行させるからです。動脈硬化とは、血管の内壁にLDLコレステロールや炎症細胞が蓄積し、血管が硬く・狭くなる変化です。高血圧・高血糖・脂質異常症はそれぞれ独立したルートで動脈硬化に関わります。

高血圧の場合:血管への圧力が常に高い状態が続くと、血管の内皮(内壁の細胞層)が傷つきやすくなるとされています。傷ついた部位にLDLコレステロールが入り込み、マクロファージが吸収して「泡沫細胞」となり、プラーク(動脈硬化巣)を形成すると考えられています。

高血糖の場合:血液中のブドウ糖が多い状態は、血管の内皮細胞にダメージを与え、酸化ストレスを高めると報告されています。酸化されたLDLは特に動脈硬化と関わりが深い形態とされています。

高コレステロールの場合:LDL-Cが高いほど、血管内壁にコレステロールが蓄積しやすくなります。糖尿病診療ガイドライン2024のメタ解析によると、LDL-Cが39mg/dL上昇するごとに心血管疾患(CVD)の発症が1.3倍、CVDによる死亡が1.5倍有意に上昇したと報告されています[3]

三つのリスクが重なると、これらのメカニズムが相互に関わり合います。血管の変化は長い年月をかけて進むため、自覚症状が現れにくく、健診で数値が指摘されても「体の具合は悪くない」と感じる方が多くいます。そのため、早期からの数値の把握と生活習慣の見直しが大切とされています。

動脈硬化のメカニズム:LDLコレステロールが血管内壁に蓄積し血管が狭くなるプロセスの模式図
図2:動脈硬化の進行イメージ。LDL-Cの蓄積と血管内壁への影響(日本動脈硬化学会ガイドライン2022 [4] をもとに作図)。

生活習慣と三高の関係——何が数値に影響するのか

三高はいずれも「生活習慣病」に分類されています。遺伝的な体質も関係しますが、食事・運動・体重・飲酒・喫煙といった日々の生活が数値に関わることは、多くの研究で示されています。

食事と塩分:塩分の過剰摂取は血圧上昇と関わります。日本高血圧学会(JSH2025)は、食塩摂取量を1日6g未満にすることを推奨しています[2]。日本人の平均食塩摂取量は約9.8g/日(令和5年国民健康・栄養調査)で、推奨の目安を超えています。また、飽和脂肪酸(肉の脂身・バター等)の過剰摂取はLDLコレステロールの上昇と関わり、精製糖質や過食は中性脂肪の増加と関連するとされています。

身体活動:運動不足は血圧・血糖・コレステロールのすべてに影響するとされています。有酸素運動(ウォーキング・水泳など)を中強度で継続することで、収縮期血圧の低下を認めたとする研究が複数あります。筋肉がブドウ糖を取り込む能力(インスリン感受性)は、運動習慣によって維持しやすくなることも報告されています。

過体重・肥満:体重増加は循環血液量を増やし、血圧・血糖・脂質の数値に影響します。適正体重を維持する(BMI 25未満が一つの目安)ことが複数のガイドラインで推奨されています。

飲酒・喫煙:習慣的な大量飲酒は中性脂肪を増やし、血圧を長期的に上昇させると報告されています。喫煙は血管を収縮させ、酸化ストレスを高めます。三高のある方にとって喫煙は複数のリスクをさらに高める行為とされています。

国内エビデンスから見る生活習慣改善の可能性

「生活習慣を変えても数値は変わるのか」という疑問は自然です。日本全国の特定健診データを使った大規模研究「MetS ACTION-J研究」(国立循環器病研究センター、PLoS ONE, 2018)では、生活習慣介入プログラムに参加したグループは3年後にメタボリックシンドロームの判定基準を外れた割合が47.0%で、非参加群の41.5%を有意に上回ったと報告されています(調整オッズ比1.31、95%CI 1.29〜1.33)[1]。腹囲が5%以上減少した割合も参加群21.4%対非参加群16.1%と有意差がありました。

特定健診・特定保健指導の制度は、このような研究を背景に2008年から全国で実施されており、40〜74歳を対象に年1回の健診と、リスクが高い方への保健指導(食事・運動の具体的なアドバイス)が提供されています[5]

ただし、生活習慣を見直した効果が検査値に現れるまでには時間がかかります。また、変化の幅には個人差があります。数値が高い場合や服薬中の方は、自己判断で薬をやめたり、生活習慣だけで対処しようとしたりせず、必ず医療機関に相談することが大切です。

  • 減塩(食塩6g/日未満を目安):血圧の管理に関わるとされます。カリウム(野菜・海藻・豆類)を意識して摂取することも、JSH2025で推奨されています[2]。腎臓病のある方はカリウム摂取量に注意が必要なため、医師・管理栄養士に相談を。
  • 有酸素運動(週3〜5回・中強度・1回30分程度を目安):血圧・血糖・コレステロール全般に関わるとされます。まずは歩数を少しずつ増やすことから始めるのも一つの選択肢です。
  • 体重管理(BMI 25未満を一つの目安):複数のリスク指標と関連します。急激な食事制限より、継続できる食事の見直しが大切とされています。
  • 節酒:日本酒1日1合・ビール中瓶1本程度を目安にするよう推奨されています(アルコールの適量には個人差があり、飲まない方がよいとする意見もあります)。
  • 禁煙:血管への影響を考慮すると、三高のある方には特に重要とされています。禁煙外来への相談も選択肢です。

「境界域」でこそ生活習慣が大切——グレーゾーンのとらえ方

健康診断で「要注意」「経過観察」と言われる「境界域」の段階は、多くの方が見過ごしがちです。しかし、この段階こそが生活習慣の見直しと経過観察が重要な時期とも言えます。

糖尿病の境界型(空腹時血糖110〜125mg/dL程度、またはHbA1c 6.0〜6.4%程度)では、生活習慣の改善によって糖尿病への進行を遅らせたり、正常域に近づいたりする可能性があることが複数の臨床試験で示されています。ただし、これらは集団の傾向を示すものであり、個人に必ず同じ変化が現れるわけではありません。

高血圧の「高値血圧」(収縮期130〜139mmHg、または拡張期80〜89mmHg)についても、JSH2025ではリスクが高い方では生活習慣改善を優先することが推奨されています[2]。「まだ薬を飲まなくていいと言われた」という段階でも、定期的な記録(家庭血圧計の活用)と生活習慣の振り返りが重要です。

日本高血圧学会は家庭血圧計の普及を推奨しており、朝(起床後1時間以内・服薬前・食事前)と夜(就寝前)の2回測定を習慣化することで、受診時には気づきにくい「白衣高血圧」や「仮面高血圧」を把握しやすくなります。脂質異常症の「高LDL-C血症境界域」(120〜139mg/dL程度)についても、他のリスク因子の有無を確認しながら、まず生活習慣の見直しが推奨されています[4]

受診を検討したいサイン

以下のような状態がある場合は、自己判断を続けず、内科・循環器内科・糖尿病内科などへの受診を検討してください。三高の多くは自覚症状が乏しいため、数値が高くても「具合は悪くない」という方が少なくありません。しかし、放置によって血管への影響が蓄積すると、脳卒中・心筋梗塞につながるリスクがあります。

  • 家庭血圧計で収縮期血圧が繰り返し140mmHg以上になる、または180mmHg以上が一度でもある
  • 健診でHbA1c 6.5%以上、または空腹時血糖126mg/dL以上と指摘された
  • 健診でLDL-Cが160mg/dL以上、または総コレステロール240mg/dL以上と指摘された
  • 三高のうち2つ以上が「要経過観察」以上の数値となっている
  • 頭痛・めまい・胸の違和感・息切れ・手足のしびれ・むくみが続いている
  • 急激な体重増加(1週間で2kg以上)がある
  • 脳卒中・心臓病・糖尿病の家族歴がある方で、数値が境界域にある
  • 生活習慣を3〜6ヶ月見直しても数値が変わらない、または悪化している
三高予防のセルフチェックと受診を考えるタイミングの整理図
図3:三高の受診目安を整理したチェックポイントのイメージ。気になる数値や症状があるときは早めに医療機関へ。

参考文献

  1. Nakao YM, Miyamoto Y, et al.(2018)「Effectiveness of nationwide screening and lifestyle intervention for abdominal obesity and cardiometabolic risks in Japan: The MetS ACTION-J study」PLoS ONE 13(1): e0190862. PMC5760033
    ― 本記事での引用箇所:「生活習慣介入プログラム参加群でメタボリックシンドローム該当から外れた割合47.0% vs 非参加群41.5%(調整OR 1.31、95%CI 1.29〜1.33)」「腹囲5%以上減少:参加群21.4% vs 非参加群16.1%」の根拠
  2. 日本高血圧学会(2025)「高血圧の10のファクト〜国民の皆さんへ〜(高血圧管理・治療ガイドライン2025に基づく)」日本高血圧学会公式ページ. https://www.jpnsh.jp/10_facts.html
    ― 本記事での引用箇所:「年間17万人死亡」「収縮期血圧10mmHg低下で心血管疾患約2割減少」「食塩6g/日未満の推奨」「カリウム摂取の推奨(JSH2025)」「降圧目標130/80mmHg未満」の根拠
  3. 日本糖尿病学会(2024)「糖尿病診療ガイドライン2024 第1章・第15章」日本糖尿病学会. gl2024 第1章PDF
    ― 本記事での引用箇所:「空腹時血糖126mg/dL以上またはHbA1c 6.5%以上が糖尿病型」「LDL-C 39mg/dL上昇でCVD発症1.3倍・CVD死亡1.5倍」の根拠
  4. 日本動脈硬化学会(2022)「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」日本動脈硬化学会. GL2022 PDF
    ― 本記事での引用箇所:「一次予防のLDL-Cコントロール目標120mg/dL未満」「脂質管理目標と動脈硬化予防の根拠」の引用
  5. 厚生労働省(2025)「特定健康診査・特定保健指導について(令和4年度実施状況含む)」厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161103.html
    ― 本記事での引用箇所:「特定健診受診者のうちメタボ該当者16.6%・予備群を含む約29%」「特定健診・特定保健指導の制度の説明(40〜74歳対象・年1回)」の根拠

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療に代わるものではありません。記載された数値や基準は目安であり、個人の状況によって異なります。気になる症状や検査値がある場合は、必ず医療機関にご相談ください。服薬中の方は、自己判断で薬を中止・変更しないでください。

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