① 上部食道括約筋(UES)の機能異常 上部食道括約筋の圧力上昇がグロブス患者の28%に認められたという報告があります[1]。食道入口部の筋肉が通常より過緊張状態にあると、唾液や食物を飲み込む際に引っかかり感が生じやすくなります。ただし内視鏡や画像では見えにくい変化です。
② 逆流性食道炎・喉頭咽頭逆流症(LPR)との関連 グロブス感覚を持つ患者の23〜68%に何らかの逆流が認められるとの報告がありますが[1]、一方で無症状の対照者でも同程度の逆流が見られることもあり、因果関係の評価は慎重に行う必要があります。胃酸や消化酵素(ペプシン)が喉頭周囲に達することで炎症や知覚過敏が生じ、異物感につながる可能性があると考えられています。
③ 食道運動機能の異常 プロトンポンプ阻害薬(PPI)に反応しない患者の約47.9%に食道運動機能の異常が認められたという報告があります[3]。食道の蠕動運動が不均一になると、内容物の通過感覚が歪み、喉元まで残留感が続く場合があります。
図2:Tang ら(2016)[2] をもとに作図。グロブス感覚を持つ人では、不安(39.8% vs 22.3%)・うつ(31.2% vs 18.0%)・睡眠障害(23.7% vs 13.6%)の割合が有意に高い。心理的要因と身体症状が双方向に影響し合う。
心理的要因とのかかわり——「心の症状」ではなく「心と体の接点」
グロブス感覚は精神的なストレスや感情状態と深く結びついていることが研究から示されています。中国での大規模住民調査では、グロブス症状を持つ群はそうでない群に比べて、不安(39.8% vs 22.3%)・うつ(31.2% vs 18.0%)・睡眠障害(23.7% vs 13.6%)の割合がいずれも有意に高かったことが報告されています[2]。また、2018年の前向きコホート研究(122名を対象)では、グロブスで耳鼻科を受診した患者の84%が「がんかもしれない」という恐怖による不安を抱えていたことが示されています[4]。
Molony C ら(2015)「Globus pharyngeus: an update for general practice」British Journal of General Practice. PMC4582871 ― 本記事での引用箇所:生涯有病率(最大45%)・耳鼻科紹介率4%・UES圧力上昇28%・逆流23〜68%・ストレス悪化96%・赤旗症状リストの根拠
Tang B ら(2016)「Epidemiology of globus symptoms and associated psychological factors in China」Journal of Digestive Diseases. PubMed 27125332 ― 本記事での引用箇所:生涯有病率21.5%・発症年齢35〜54歳・不安39.8%・うつ31.2%・睡眠障害23.7%の根拠
Manabe N ら(2014)「Pathophysiology and treatment of patients with globus sensation--from the viewpoint of esophageal motility dysfunction」Journal of Smooth Muscle Research. PubMed 26081369 ― 本記事での引用箇所:PPI抵抗例の47.9%に食道運動機能異常・PPI経験的治療の根拠
Rasmussen ER ら(2018)「A prospective cohort study of 122 adult patients presenting to an otolaryngologist's office with globus pharyngeus」Clinical Otolaryngology. PubMed 29327493 ― 本記事での引用箇所:がんへの恐怖による不安84%・逆流15.6%・喫煙による遷延リスクOR 3.4・完全消失21.4%・女性比率1.49:1の根拠
Poovipirom N ら(2023)「Treatment outcomes in patients with globus: A randomized control trial of psychoeducation, neuromodulators, and proton pump inhibitors」Neurogastroenterol Motil. PubMed 36443929 ― 本記事での引用箇所:CBT vs PPI のGETSスコア変化量(−6.46 vs −0.21、p=0.031)・CBTが副作用面でも優れるという根拠