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寝ても眠い・日中の強い眠気が続く ― 睡眠時無呼吸・ナルコレプシー・過眠症を読み解く

編集:和ごころプロジェクト|公開 2026.06.28編集方針

「毎晩しっかり眠っているのに、昼間になると我慢できないほど眠くなる」――そう感じている方は少なくありません。十分な睡眠時間を確保しているはずなのに日中の眠気が続く場合、それは単なる夜更かしの影響ではなく、睡眠の「量」ではなく「質」や「仕組み」に関わる問題である可能性があります。本記事では、寝ても眠い日中の眠気が続く主な原因を、公的機関・学術論文のエビデンスをもとに解説します。

「寝ても眠い」は珍しくない――日中の過度な眠気の実態

日中の強い眠気(過度な日中眠気、Excessive Daytime Sleepiness:EDS)は、多くの人が経験する症状です。しかし「眠いのは怠けているから」「もっと早く寝ればよい」と見過ごされがちで、背景にある原因が長期間放置されることも少なくありません。

厚生労働省が公表した「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」によれば、日本人で1日の平均睡眠時間が6時間未満の割合は男性37.0%、女性39.9%(令和4年度国民健康・栄養調査)とされており、特に40〜50代では半数近くが6時間未満という状況です[1]。睡眠不足の蓄積(睡眠負債)は日中の眠気を引き起こす最も一般的な要因のひとつです。

ただし、「十分に眠ったつもりなのに眠い」という場合は、睡眠負債だけでは説明がつかないことがあります。睡眠の質・睡眠中の呼吸・脳内の覚醒システムなど、複数の要因が関与している可能性を念頭に置くことが重要です。

日中の過度な眠気(EDS)の有病率と睡眠時間の実態を示す図解
図1:日本人の6時間未満睡眠の割合と日中の眠気の関係(厚生労働省睡眠ガイド2023に基づく概念図)

睡眠時無呼吸症候群(OSA)――眠れているようで眠れていない

「寝ているのに眠い」状態を引き起こす代表的な原因のひとつが、睡眠時無呼吸症候群(OSA)です。睡眠中に気道が塞がれ、無呼吸・低呼吸を繰り返すことで睡眠が細切れになります。本人は眠れていると感じても、脳は何度も覚醒状態に近い状態に引き戻されており、深い回復的な睡眠が十分に得られません。

OSA患者における日中の過度な眠気の世界的有病率を調べたメタ解析(42,924人対象、15研究)では、OSA患者の39.9%(95%信頼区間:34.4〜45.7%)にEDSが認められたと報告されています[2]。また、スウェーデンの大規模コホート研究(SESAR、34,684人)では、OSA患者のEpworth眠気スケール(ESS)の平均スコアは9.7±4.9で、男性41.4%・女性44.6%がESSで過度な眠気の基準(スコア≥10)を満たしたとされています[3]

OSAによるEDSのメカニズムとして、慢性的な間欠性低酸素症と睡眠の分断が脳の覚醒促進領域(ノルアドレナリン・ドーパミン系)に影響を与えることが示されています[4]。自覚がないまま進行することも多く、「いびきをかく」「起床時に頭が重い」「日中に我慢できない眠気がある」という方は一度専門的な評価を受けることが勧められます。

睡眠時無呼吸症候群の仕組みと日中の眠気への影響を示す模式図
図2:Salariら(2025)[2]のメタ解析データをもとに作図。OSA患者の約40%に過度な日中眠気が認められることが報告されている。

ナルコレプシー――脳の覚醒スイッチの機能異常

ナルコレプシーは、日中の強い眠気・突然の眠気発作を主症状とする神経学的疾患です。脳の視床下部で産生されるオレキシン(ヒポクレチン)というペプチドが覚醒の維持に不可欠な役割を果たしていますが、ナルコレプシー1型ではオレキシンを産生する神経細胞が選択的に失われ、脳脊髄液中のオレキシン濃度が110 pg/mL未満に低下します[5]。この病態には自己免疫が関与していると考えられており、HLA-DQB1*06:02遺伝子との強い関連(患者の約95%が保有)も明らかにされています。

ナルコレプシー患者の特徴として、「短時間の昼寝後に一時的にすっきりする」「笑ったり驚いたりしたときに急に力が抜ける(カタプレキシー)」「入眠時に幻覚が生じる」などがあります。日中の眠気は「眠れないほど眠い」という強烈なものとなることもあり、生活・仕事・学業に大きな影響を与えます。

ナルコレプシー・中枢性過眠症における日中眠気の特徴と鑑別のレビュー(Pizza ら、2020年)は、各疾患の眠気パターンの違いを整理しており、ナルコレプシーでは短時間の昼寝で覚醒感が得られる一方、特発性過眠症では昼寝後も眠気が残ることが多いと指摘しています[5]

オレキシン神経の機能とナルコレプシーの仕組みを示す模式図
図3:ナルコレプシーにおけるオレキシン産生神経の選択的消失の模式図。オレキシン欠乏が覚醒維持障害を引き起こすと考えられている[5]。

特発性過眠症――十分眠っても眠れてしまう謎の状態

特発性過眠症(Idiopathic Hypersomnia)は、十分または延長された夜間睡眠(10時間以上になることも)にもかかわらず日中の過度な眠気が続く状態を指します。StatPearlsのレビューによれば、診断された有病率は10万人あたり7.8〜10.3人程度で、過去10年間で32%増加したとされています[6]

特発性過眠症の際立った特徴として、「睡眠慣性(sleep inertia)」が挙げられます。目覚めたあとも頭がはっきりせず、ぼーっとした状態が長時間続く(いわゆる「脳霧(brain fog)」)ことが多く、昼寝をしても眠気が取れないという点でナルコレプシーとは異なります。原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要因(プレプロオレキシン遺伝子の変異)や免疫システムの関与が示唆されています。約3分の1に家族歴があるとされており、遺伝的素因も一定程度関与していると考えられています。

「長く眠れているはずなのに昼間も眠い、昼寝しても疲れが取れない」という方は、特発性過眠症の可能性を念頭に置き、睡眠専門外来での評価を検討することが勧められます。特発性過眠症は診断までに時間がかかることが多く(平均発症から診断まで約13年と報告される場合もある)、自己診断は困難です。

特発性過眠症の特徴(長時間睡眠・睡眠慣性・昼寝後も眠気が残る)を示す図解
図4:特発性過眠症の主な特徴。有病率は10万人あたり10.3人程度で、発症から診断まで長期間かかることがある(StatPearls, NBK585065[6]より)。

その他の原因――鉄欠乏・甲状腺機能低下・うつ病・薬剤性

日中の眠気は、上記の睡眠障害以外にも様々な内科的・精神医学的原因によって生じます。日常診療で見落とされやすい主な要因を以下に整理します。

  • 鉄欠乏性貧血・鉄欠乏:鉄は脳内のドーパミン合成や酸素運搬に不可欠です。鉄が不足すると疲労感とともに日中の眠気が現れやすくなります。月経のある方や食事が偏りがちな方では特に注意が必要です。
  • 甲状腺機能低下症(橋本病など):甲状腺ホルモンの不足は全身の代謝を低下させ、倦怠感・眠気・集中力低下を引き起こします。血液検査(TSH、FT4)で確認できます。
  • うつ病・気分障害:うつ病の症状として過眠(10時間以上眠ってしまう)が現れることがあります。また不眠と過眠が交互に現れる双極性障害でも日中の眠気が問題となります。EDSとうつ病の関連を検討したレビューでは、両者が相互に影響し合う関係にあることが示されています[7]
  • 薬剤性:抗ヒスタミン薬(風邪薬・花粉症薬)、抗不安薬・睡眠薬、一部の降圧薬・抗てんかん薬などは日中の眠気を副作用として引き起こすことがあります。服薬中の方は主治医・薬剤師に相談することが大切です。
  • 概日リズム睡眠・覚醒障害:体内時計のリズムがずれることで、必要な時間帯に眠気が訪れるようになります。シフト勤務・夜型生活が長く続いている方に多くみられます。

日中の眠気が続く場合、原因は一つではなく複数の要因が重なっていることも珍しくありません。自己判断で「睡眠不足だろう」と結論付けず、症状が2週間以上続く場合は医療機関での評価を検討することが勧められます。また、日中の強い眠気と気力の低下が同時に現れている場合は、やる気・気力が出ない日が続く原因についての記事も参考にしてください。

日中の眠気を引き起こす内科的・精神医学的原因の分類図
図5:日中の眠気の原因の分類。睡眠障害以外にも内科的・精神医学的疾患・薬剤性など多様な原因がある。

受診を検討したいサイン

日中の眠気は「眠れていない結果」として見過ごされがちですが、以下のようなサインがある場合は医療機関(内科・睡眠専門外来・神経内科・精神科など)への受診を検討することが勧められます。日中の過度な眠気がリスク要因となることも研究で示されており、放置は避けることが大切です。

  • 6〜8時間以上眠っているのに、昼間に我慢できない眠気が続く(2週間以上)
  • 运転中・会議中・食事中など、本来眠るべきでない状況で眠ってしまう
  • 感情的な刺激(笑い・驚き)の後に突然体の力が抜ける(カタプレキシーの可能性)
  • いびきを指摘されている、または睡眠中に息が止まると言われたことがある
  • 目覚めてからも長時間(1時間以上)ぼーっとして活動できない
  • 昼寝をしても眠気が和らがない
  • 眠気とともに強い気分の落ち込み・興味の喪失がある
  • 頭痛・記憶力低下・集中困難が眠気とともに続いている
  • 日中の眠気により仕事・学業・日常生活に支障をきたしている
受診を検討すべき日中の眠気のレッドフラッグ(警戒サイン)の図解
図6:受診を検討したいサイン(レッドフラッグ)。複数当てはまる場合は早めに医療機関への相談を。

参考文献

  1. 厚生労働省(2024)「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」厚生労働省. 厚生労働省 睡眠対策ページ
    ― 本記事での引用箇所:日本人の6時間未満睡眠の割合(男性37.0%・女性39.9%)、成人の推奨睡眠時間(6時間以上)
  2. Salari N, et al.(2025)「Global Prevalence of Excessive Daytime Sleepiness in Patients with Obstructive Sleep Apnea: A Systematic Review and Meta-Analysis」Indian Journal of Otolaryngology Head & Neck Surgery. PubMed
    ― 本記事での引用箇所:OSA患者におけるEDSの世界的有病率39.9%(42,924人・15研究のメタ解析)
  3. Ulander M, et al.(2022)「Correlates of excessive daytime sleepiness in obstructive sleep apnea: Results from the nationwide SESAR cohort including 34,684 patients」Journal of Sleep Research. PMC
    ― 本記事での引用箇所:OSA患者の男性41.4%・女性44.6%がESSスコア≥10(過度な眠気の基準)を満たすという統計
  4. Lal C, et al.(2021)「Excessive Daytime Sleepiness in Obstructive Sleep Apnea. Mechanisms and Clinical Management」Annals of the American Thoracic Society. PubMed
    ― 本記事での引用箇所:OSAによるEDSのメカニズム(慢性的間欠性低酸素症・睡眠分断によるノルアドレナリン・ドーパミン系への影響)
  5. Pizza F, et al.(2020)「Excessive daytime sleepiness in narcolepsy and central nervous system hypersomnias」Sleep and Breathing. PubMed
    ― 本記事での引用箇所:ナルコレプシー・特発性過眠症の日中眠気パターンの違い(昼寝後の覚醒感の有無)、オレキシン欠乏の機序説明
  6. StatPearls(NIH, 2023)「Idiopathic Hypersomnia」NCBI Bookshelf. NCBI Bookshelf
    ― 本記事での引用箇所:特発性過眠症の有病率(10万人あたり7.8〜10.3人、過去10年で32%増加)、診断基準・遺伝的要因
  7. Patel D, et al.(2021)「Excessive Daytime Sleepiness in Depression and Obstructive Sleep Apnea: More Than Just an Overlapping Symptom」PMC. PMC
    ― 本記事での引用箇所:うつ病とEDSの相互関連(気分障害と過眠の関係)

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療に代わるものではありません。症状が続く・悪化する場合は内科・睡眠専門外来・神経内科・精神科などの医療機関にご相談ください。

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