予防・健診

健康診断の結果票の見方——判定区分A〜Eと主要項目を読み解くポイント

編集:和ごころプロジェクト|公開 2026.06.29編集方針

健康診断の結果票が手元に届いたとき、数字や記号が並ぶ表を見て「どこをどう読めばいいのか分からない」と感じたことはありませんか。「A」「B」「C」「D」「E」といった判定区分の意味、血糖値やコレステロールの数値が示すこと、そして「要精密検査」と書かれていたときに実際にどう動くべきか——この記事では、健診結果票の読み方を体系的に整理します。自己判断で放置するリスクを知り、次の行動につなげるための情報として役立ててください。

健診結果の「判定区分」が示す5段階の意味

健診結果票には、各検査項目の横に判定記号が付いています。日本人間ドック・予防医療学会が2025年4月に改定した判定区分[1]では、A〜Eの5段階が基本構造として使われています。

  • A(異常なし):基準値の範囲内。現時点での異常は認められない。
  • B(軽度異常):基準値をわずかに外れているが、日常生活に差し支えない軽度の変化。
  • C(要経過観察):定期的に観察が必要な状態。生活習慣の見直しが推奨される。
  • D(要精密検査・要医療):医療機関への受診が必要な段階。原因の精査や治療を検討する。
  • E(治療中):すでに医療機関で治療を受けている状態。

重要な点は、「B(軽度異常)」や「C(要経過観察)」の判定が出ても、即座に病気を意味するわけではないということです。基準値は「健康な人の95%が入る範囲」として設定されており[1]、健康な人でも5%は範囲外になり得ます。一方で、「D(要精密検査)」の判定は精密な検査が必要なサインであり、放置すると病状が進行するリスクがあります。

施設によって判定記号の体系が異なる場合もあります(例:1〜4段階、E1・E2などの細分類)。結果票に凡例が記載されていますので、まずその施設の判定基準を確認することが出発点です。

健康診断の判定区分A〜Eの概念図:異常なし・軽度異常・要経過観察・要精密検査・治療中の5段階を視覚化
図1:健康診断の5段階判定区分の構造(日本人間ドック・予防医療学会2025年度版をもとに作図)

主要な血液検査項目の読み方:何が分かるか

健診の血液検査では、肝臓・腎臓・血糖・脂質・血球など、多岐にわたる項目が測定されます。一般財団法人日本予防医学協会が公表している血液検査の解説[2]をもとに、よく質問を受ける主要項目を整理します。

肝臓系(AST・ALT・γ-GT)
ASTとALTは肝臓・心臓・筋肉などに広く存在する酵素です。ALTは主に肝臓に存在するため、ASTとALTの両方が高値の場合、またはALTのみが高値の場合は肝障害の可能性が高まるとされています。γ-GTはアルコールの影響を受けやすく、常習飲酒や胆道疾患で高値を示します[2]。基準値(2026年4月時点)はAST・ALT共に30 U/L以下、γ-GTは50 U/L以下です。

脂質系(LDL・HDL・中性脂肪)
LDL(低密度リポたんぱく)コレステロールは動脈壁にコレステロールを蓄積させる性質から「悪玉コレステロール」と呼ばれます。LDLが高いほど動脈硬化が進みやすいことが複数のコホート研究で示されています[3]。一方、HDL(高密度リポたんぱく)は動脈壁のコレステロールを回収する働きがあるため「善玉コレステロール」と呼ばれ、低いほどリスクが高まるとされています。日本人間ドック・予防医療学会の2025年度判定基準では、LDL-Cの異常なし(A判定)の上限は119 mg/dL、HDL-Cの下限は40 mg/dLです[1]

糖代謝系(血糖・HbA1c)
空腹時血糖(FPG)は直近の血糖状態を、HbA1cは過去1〜2か月の平均血糖をそれぞれ反映します。日本人間ドック・予防医療学会の基準では、「異常なし(A判定)」の範囲はFPG 99 mg/dL以下かつHbA1c 5.5%以下です[1]。空腹時血糖126 mg/dL以上またはHbA1c 6.5%以上は糖尿病型とされており(日本糖尿病学会の診断基準)、放置は危険であるため内科受診が強く推奨されます。

腎臓系(クレアチニン・eGFR)
クレアチニンは筋肉の代謝産物で、腎臓の濾過能力が低下すると血中に増加します。eGFR(推算糸球体濾過量)はクレアチニン値・年齢・性別から計算し、腎機能の指標として使われます。eGFRが60 mL/分/1.73m²未満が3か月以上続く場合や蛋白尿が続く場合は、慢性腎臓病(CKD)が疑われます[4]

血圧・尿検査・心電図:生活習慣病の早期サインを読む

血液検査以外の項目にも、生活習慣病の早期変化が現れることがあります。

血圧
日本人間ドック・予防医療学会の2025年度版では、「異常なし(A判定)」の範囲は収縮期130 mmHg未満かつ拡張期85 mmHg未満です[1]。高血圧は心筋梗塞・脳卒中・腎臓病のリスクを高めることが多くの研究で知られており、特に日本では食塩摂取量が多い傾向があるため、血圧管理は重要な課題とされています。健診時の血圧は「白衣高血圧」(緊張で一時的に上昇)が起こることもあるため、1回の測定値だけで判断せず、家庭での定期的な測定との照合が役立ちます。

尿検査(蛋白・糖・潜血)
尿蛋白が陽性の場合は腎臓の障害、尿糖が陽性の場合は血糖の上昇、尿潜血が陽性の場合は腎臓・尿路・膀胱などの異常の可能性があります。いずれも「陽性」が続く場合は精密検査が必要です。一度だけの陽性であれば激しい運動後など一時的な要因の場合もありますが、複数回の確認が推奨されます。

心電図
心電図検査では、不整脈・心肥大・虚血(血流不足)のサインなどが読み取られます。「ST変化」「心室肥大」「脚ブロック」などの所見が記載されていた場合は、循環器内科での精密評価を検討することが望ましいとされています。ただし、心電図所見だけで病態が確定するわけではなく、さらに詳しい検査(心臓超音波や負荷心電図など)を組み合わせて判断されることが一般的です。

健康診断の主要項目(血糖・脂質・血圧・腎機能)と動脈硬化性疾患リスクの関係図:久山町研究のASCVDリスク予測モデルをもとに作図
図2:健診の主要リスク因子と動脈硬化性疾患(ASCVD)との関連(Sakurai et al. 2025年の久山町ASCVD検証研究 [3] をもとに作図)

「要精密検査」を放置するとどうなるか——未受診の実態

「要精密検査」と判定されたにもかかわらず医療機関を受診しない人は、実は少なくありません。協会けんぽ(全国健康保険協会)の調査研究では、2023年度に生活習慣病予防健診を受診した者のうち、血圧・血糖・脂質のいずれかで「要治療・要精密検査」と判定された6,624名を対象とした分析が報告されています[5]。この研究によれば、健診後10か月以内に医療機関を受診しなかった者が一定割合に上り、未受診者への受診勧奨が課題とされています。

要精密検査の放置が問題とされる背景には、生活習慣病の「サイレント」な進行があります。高血圧・脂質異常症・血糖異常はいずれも自覚症状が出にくいまま動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中などの重篤な疾患につながる可能性があります。心血管疾患は日本でも依然として主要な死亡原因の一つです[6]

一方で、「要精密検査」という判定が必ずしも重篤な病気を意味するわけではありません。精密検査の目的は「本当に治療が必要かどうかを正確に確かめること」です。精密検査を受けて「経過観察で十分」と判断されることも多くあります。受診は「安心を確認する機会」とも捉えることができます。

結果票を次の行動につなげる——判定別の対応の目安

結果票を受け取ったあとにどう動くか、判定別の目安を整理します。これはあくまでも一般的な情報であり、個々の状況は担当医に相談することが重要です。

  • A・B判定(異常なし・軽度異常):現時点での医療機関受診は必須ではありませんが、生活習慣(食事・運動・睡眠・飲酒・喫煙)の見直しを検討する機会とすることが望ましいとされています。翌年の健診で変化を確認します。
  • C判定(要経過観察):かかりつけ医への相談を検討し、いつまでに再確認するかを自分でスケジュールに入れておくと安心です。生活習慣の見直しと、3〜6か月後の再測定(血圧や血糖など)が推奨されることがあります。
  • D判定(要精密検査・要医療):できるだけ早期に医療機関を受診してください。「どの診療科を受診するか」は、結果票の紹介状(ある場合)や、かかりつけ医への相談が手がかりになります。判定項目別の受診科の目安:肝機能→消化器内科・内科、脂質・血糖・血圧→内科・糖尿病内科、腎機能→腎臓内科・内科、心電図異常→循環器内科、眼底異常→眼科。
  • E判定(治療中):現在の治療が適切に続いているかを定期受診で確認します。主治医と健診結果を共有することが重要です。

また、複数の項目で異常が重なる場合(例:血圧高値+LDL高値+血糖高値)は、リスクが単純に足し算以上に増える可能性が指摘されています。この場合は特に早期の受診が勧められます。

受診を検討したいサイン

以下のいずれかに当てはまる場合は、自己判断で様子を見るのではなく、医療機関への受診をご検討ください。

  • 健診結果に「D(要精密検査)」または「要医療」の判定があった
  • 血糖値(FPG)が126 mg/dL以上、またはHbA1cが6.5%以上と記載されている[5]
  • 収縮期血圧が160 mmHg以上、または拡張期血圧が100 mmHg以上と記載されている[5]
  • LDL(悪玉コレステロール)が180 mg/dL以上と記載されている[5]
  • eGFRが60 mL/分/1.73m²未満の記載が続いている[4]
  • 尿蛋白・尿糖・尿潜血のいずれかが「陽性」で、複数回の健診で繰り返し出ている
  • 心電図で「ST変化」「心室肥大」「不整脈」などの所見が初めて現れた
  • 胸痛・動悸・息切れ・むくみ・強い口渇など、新しい症状が出ている
  • 健診で「要精密検査」となったまま1年以上受診していない
健康診断の結果を受けた後の行動フロー:A〜E判定ごとの対応目安と受診を検討したいサインをまとめた整理図
図3:健診結果の判定区分と受診目安の整理図(協会けんぽ・人間ドック学会資料をもとに作図)

参考文献

  1. 日本人間ドック・予防医療学会(2025)「判定区分 2025年度版」日本人間ドック・予防医療学会. 判定区分PDF
    ― 本記事での引用箇所:「A〜Eの5段階判定区分の定義」「LDL-C・HDL-C・血圧・HbA1c・FPGの基準値(A判定範囲)」の根拠
  2. 一般財団法人 日本予防医学協会(2026)「血液検査の結果の見方」日本予防医学協会. https://www.jpm1960.org/jushinsya/exam/exam06.html
    ― 本記事での引用箇所:「AST・ALT・γ-GT・HDL・LDL・中性脂肪・クレアチニンなど各血液検査項目の意味と基準値の説明」の根拠
  3. Sakurai M, et al.(2025)「External Validation of a Risk Prediction Model for Atherosclerotic Cardiovascular Diseases in a Large National Health-Checkup and Claim Database」Journal of Atherosclerosis and Thrombosis. PMID: 40736084 PubMed
    ― 本記事での引用箇所:「久山町ASCVDリスク予測モデルが日本の特定健診データで良好な予測能(C統計量0.759)を示した」こと、および健診データに基づくリスク層別化の有用性の根拠
  4. NPO法人 日本腎臓病協会(監修:柏原直樹)「腎臓の働きをしらべる eGFRの測定」協和キリン CKD情報サイト. https://www.kyowakirin.co.jp/ckd/check/check.html
    ― 本記事での引用箇所:「eGFR 60 mL/分/1.73m²未満が3か月以上続く場合にCKDが疑われる」という基準の根拠
  5. 矢澤真代(全国健康保険協会 福井支部)(2026)「未治療者受診勧奨結果の分析」第12回 協会けんぽ調査分析フォーラム. 資料PDF
    ― 本記事での引用箇所:「要治療・要精密検査と判定された6,624名のうち、健診後10か月以内に受診しなかった者が一定割合存在する」という未受診の実態の根拠
  6. Roth GA, et al. GBD-NHLBI-JACC Writing Group(2020)「Global Burden of Cardiovascular Diseases and Risk Factors, 1990-2019: Update From the GBD 2019 Study」Journal of the American College of Cardiology. PMID: 33309175 PubMed
    ― 本記事での引用箇所:「心血管疾患が世界・日本の主要な死亡原因の一つである」という背景説明の根拠

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療に代わるものではありません。健診結果の解釈や受診の判断については、担当の医師または医療機関にご相談されることをお勧めします。「要精密検査」「要医療」の判定があった場合は、自己判断での放置は推奨されません。

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