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スマホ・テレワークで悪化する眼精疲労・ドライアイ──涙液の仕組みとセルフケアの正しい知識

編集:和ごころプロジェクト|公開 2026.10.08編集方針

スマートフォンやパソコンを1日中使う生活が当たり前になったいま、「目が重い」「乾いてしょぼしょぼする」「夕方になると見えにくい」といった訴えは珍しくなくなっています。眼科を受診しても「特に異常はありません」と言われるケースも多く、「気のせいかな」と放置してしまいがちです。しかし眼精疲労やドライアイは、目に見える構造上の異常がなくても起こりうる、涙液と毛様体筋の機能的な問題です。この記事では、眼精疲労とドライアイが起こる仕組みを根拠に沿って解説し、日常生活で実践できるセルフケアの考え方を整理します。

スマホ・PC作業で「瞬きが減る」──眼精疲労とドライアイが起こる仕組み

目を健康に保っている「涙液(るいえき)」は、単なる水ではありません。角結膜の表面を覆う涙液膜は、外側から順に脂質層・水分層・ムチン層の3層構造になっており、それぞれが乾燥を防ぐ・栄養を届ける・ごみを洗い流すという役割を担っています。脂質層はまぶたの縁にあるマイボーム腺が分泌し、水分の蒸発を抑えるフタの役割を果たします。

この涙液膜を均等に塗り広げるのが瞬き(まばたき)です。通常、安静時の瞬き回数は1分間に10〜20回ですが、デジタルデバイスの画面を見ているときには大幅に減少することが知られています。Kaur ら(2022)の総説によると、ある研究ではパソコン作業中の瞬き回数が18.4回/分から3.6回/分へ、別の研究では22回/分から7回/分へと減少したことが報告されています[1]。瞬きの回数が減ることで涙液膜が不安定になり、目の表面が乾燥しやすくなります。

一方、スクリーンを長時間注視すると、目のレンズ役を担う水晶体の厚みを調節する毛様体筋が近距離で収縮し続けます。緊張状態が持続することで、目の奥がじんわり痛む・視野がかすむといった「眼精疲労」が生じます。眼精疲労とドライアイは独立した現象ですが、VDT(Visual Display Terminals)作業では同時に起こりやすく、互いに症状を強め合います。

スマホ・PC使用時の瞬き減少と眼精疲労・ドライアイのメカニズム全体像
図1:VDT作業中に起こる瞬き減少・毛様体筋疲労・涙液不安定化の連鎖

眼精疲労とドライアイの症状と「2つの型」

眼精疲労とドライアイは重なりあいながらも、主訴が異なります。眼精疲労では目の奥の痛み・頭痛・肩こり・吐き気が前景に立つことが多い一方、ドライアイでは乾き・ごろごろ感・充血・視力のかすみが中心となります。

ドライアイには大きく2つのタイプがあります。

  • 蒸発亢進型(マイボーム腺機能不全が多い):涙液の水分量は保たれているのに、脂質層の薄化・不均一化によって涙が短時間で蒸発してしまうタイプです。VDT作業者では、瞬き回数の減少に伴うマイボーム腺の機能低下が主な要因とされています。現在のドライアイ患者の多数を占めると考えられています。
  • 水分不足型(涙液産生不全):涙腺からの涙液分泌量自体が減少するタイプです。シェーグレン症候群などの全身疾患が背景にある場合があり、こちらは特に女性に多い傾向があります。

なお、VDT作業に伴うドライアイの多くは「蒸発亢進型」であり、単純に「目を酷使している」だけではなく、マイボーム腺の機能や瞬きの質が鍵になります。日本眼科学会のドライアイ診療ガイドライン(2019年)は、ドライアイを「さまざまな要因により涙液層の安定性が低下する疾患であり、眼不快感や視機能異常を生じ、眼表面の障害を伴うことがある」と定義しています[3]。

また、「目が乾いていないのにドライアイ?」と思われるかもしれませんが、目の表面が乾燥すると防御反応として反射性の涙が大量に出ることがあります。「目がよく潤んでいるのにごろごろする」場合も、ドライアイの可能性があります。

デスクワーク中に感じる肩こり・首こりは眼精疲労と連動しやすいことも知られています。同じ姿勢での長時間のモニター作業は目と首・肩に同時に負担をかけます。肩こりのセルフケアについてはデスクワークの肩こりの原因と根拠に基づくセルフケアもあわせてご覧ください。

VDT作業者の約半数にドライアイ症状──疫学データが示すリスク

VDT作業とドライアイの関係は、複数の疫学研究で繰り返し確認されています。Courtin ら(2016)が16の研究・11,365名のVDT作業者を対象に行ったメタアナリシスでは、診断基準を2〜3種類組み合わせた場合の有病率は54.0%(95%CI:52.1〜55.9)と報告されています[2]。すなわちVDT作業者の2人に1人程度がドライアイに該当しうるという推計です。

同研究では、有病率は年齢とともに上昇し(係数5.05、p=0.003)、女性でより高い傾向(係数0.14、p=0.010)も示されました[2]。また、VDT作業が1日8時間を超えるグループでは、8時間未満のグループと比べてドライアイの有病率が高い(85.3% vs 62.3%)という報告もあります。

日本でも、東邦大学・大阪スタディ(2017年)が企業の事務系従業員672名を調べたところ、ドライアイ確定例と疑い例を合わせると約66%に該当したと報告されており[3]、欧米の推計と近い傾向が示されています。

なお、スマホやタブレットの普及でCOVID-19後には状況がさらに変化しており、Kaur ら(2022)は子どもだけでも50〜60%がデジタル眼精疲労症状を報告したと述べています[1]。

VDT作業者のドライアイ有病率とリスク因子を示す図解(Courtin et al. 2016 をもとに作図)
図2:VDT作業者のドライアイ有病率の推計(Courtin らのメタアナリシス([2])をもとに作図)。診断基準の組み合わせにより54〜66%と報告される。

根拠に基づいたセルフケア──20-20-20ルール・ホットアイマスク・人工涙液

眼精疲労やドライアイのセルフケアには、目の緊張を解く「作業管理」と、涙液の質を保つ「目のケア」の2方向があります。

【作業管理:こまめな休憩と20-20-20ルール】
厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(令和元年)は、1時間を超える連続VDT作業を行わず、次の作業の前に10〜15分の休憩を取ること、さらに1時間の作業中にも1〜2回の小休止を設けることを推奨しています[4]。休憩中は遠くを見る、目を閉じるなど視覚系への負担を与えない過ごし方が推奨されています[4]。

デジタル眼精疲労の管理として、眼科学の総説でも推奨される実践的な方法が「20-20-20ルール」です[1]。20分に1回、20秒間、20フィート(約6メートル)以上先の対象を見ることで、毛様体筋を休ませるという考え方です。タイマーアプリやPC画面のリマインダー機能を活用すると継続しやすくなります。

【ホットアイマスク(温罨法)】
蒸発亢進型ドライアイの原因となるマイボーム腺の詰まりに対して、温罨法(温湿布・ホットアイマスク)が有効とする臨床試験の結果が蓄積されています。Lee(2024)のシステマティックレビューでは、温罨法を評価した6件の臨床試験すべてで涙液脂質層の厚みや涙液安定性(TBUT)が有意に向上したことが報告されており(p<0.05)、長期(9件の臨床試験)でも全試験で有意な症状緩和が確認されました[5]。推奨される条件はまぶたの温度が40℃以上に達する温罨法を1日1回・10分で、1日1回群のアドヒアランスは90.2%と、1日2回群(79.6%)より高く維持されました[5]。市販のホットアイマスク(電子レンジ加熱型や使い捨てタイプ)を活用するのが手軽な方法です。短期間での効果を約束するものではありませんが、継続的なケアの土台となる可能性があります。

【人工涙液・点眼薬】
軽度〜中等度のドライアイには、市販の人工涙液(防腐剤無添加タイプが推奨されます)を適切に使用することが症状の一時緩和に役立つとされています[1]。ただし、目薬の種類や成分によって適応が異なり、特に蒸発亢進型では脂質補充タイプ、水分不足型では水分補充タイプが検討されます。市販薬を使っても症状が続く場合や自己判断での長期使用は、眼科専門医に相談することが望まれます。

遠近交互トレーニングと環境づくりの工夫

毛様体筋の疲れを和らげる方法として、遠近交互トレーニングがあります。近い対象(30cm程度)と遠い対象(6m以上先)を交互に数秒ずつ見ることを繰り返すことで、毛様体筋を意図的に弛緩・収縮させます。一定の研究でVDT作業後の調節力(ピント調節能力)の回復に寄与する可能性が示唆されていますが、効果の大きさについては個人差があります。朝の起床後や昼食後に窓の外の遠景と手元を交互に見る習慣として取り入れやすい方法です。

また、作業環境の見直しも眼精疲労予防に直結します。

  • モニターとの距離:厚労省ガイドラインはディスプレイとの視距離を40cm以上確保することを推奨しています[4]。画面を顔に近づけすぎると毛様体筋への負担が増します。
  • モニターの高さ:画面の上端が目線の高さかやや下になるよう調整すると、まぶたの開き具合が減り、涙の蒸発を抑えやすくなります。
  • 画面の明るさと周囲の照明:画面と背景の輝度差が大きすぎると眼精疲労を招きます。画面輝度は部屋の明るさと近づけ、ブルーライト低減設定を利用することで疲労を和らげる場合があります。
  • 加湿と空調:冷暖房の風が直接目に当たると涙液の蒸発が加速します。加湿器で室内湿度を50〜60%程度に保つ工夫も有効です。
  • コンタクトレンズの長時間使用を控える:コンタクト装用はドライアイのリスクを高める要因の一つとされており[2]、長時間装用を避けることが推奨されます。

VDT作業中のまぶたの状態についても、意識的に完全な瞬きを行うことが助けになります。「ゆっくり目を閉じてから開く」完全瞬きを意識するだけで、マイボーム腺からの脂質分泌が促進されるとされています。スクリーン作業中に「瞬き練習」を習慣にすることは、特別な道具を必要とせず今日から始められるセルフケアです。

また、目の疲れ・目の奥が痛い・しょぼしょぼする(眼精疲労)の原因とセルフケアでは、眼精疲労全般のメカニズムをより詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。

受診を検討したいサイン

以下のような症状がある場合は、眼科への受診を検討することが望まれます。セルフケアだけで経過を見ることは避け、早めに専門家に相談することをおすすめします。

  • 休息を取っても目の疲れや乾きが数週間以上続いている
  • 視力の低下・かすみが続いている、または急に悪化した
  • 目の強い痛み・ひどい充血がある
  • 光を異常にまぶしく感じる(羞明)、または暗い場所での見え方が悪くなった
  • 目やにが多い、または膿のような目やにが出る
  • まぶたの腫れ・しこり(ものもらい・霰粒腫が疑われる)がある
  • 市販の目薬を使い続けているが症状が変わらない、または悪化している
  • 物が二重に見える・視野の一部が欠ける感覚がある

特に「目の強い痛み+充血+視力低下」が急に起こった場合は、緑内障発作や角膜炎など緊急性の高い状態の可能性があるため、速やかに眼科を受診してください。

眼精疲労・ドライアイのセルフケアと受診を検討したいサインの整理図
図3:眼精疲労・ドライアイのセルフケアと、眼科受診を検討したいサインの整理

参考文献

  1. Kaur K, Gurnani B, Nayak S, et al. (2022)「Digital Eye Strain- A Comprehensive Review」Ophthalmol Ther. 11(5):1655. PMC9434525
    ― 本記事での引用箇所:VDT作業中の瞬き回数減少(18.4→3.6回/分・22→7回/分)、20-20-20ルール、デジタル眼精疲労の有病率78%(COVID後)
  2. Courtin R, Pereira B, Naughton G, et al. (2016)「Prevalence of dry eye disease in visual display terminal workers: a systematic review and meta-analysis」BMJ Open. 6(1):e009675. PMC4735196
    ― 本記事での引用箇所:VDT作業者のドライアイ有病率54.0%(2基準合算)・年齢・女性・コンタクトレンズがリスク因子
  3. ドライアイ研究会診療ガイドライン作成委員会(2019年)「ドライアイ診療ガイドライン」日本眼科学会雑誌 令和元年5月10日. 日本眼科学会PDF
    ― 本記事での引用箇所:ドライアイの定義(涙液層の安定性低下)・日本のドライアイ患者1200万人超・大阪スタディ(VDT作業者66%がドライアイ確定・疑い)
  4. 厚生労働省(令和元年7月12日)「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて」基発0712第3号. 厚生労働省
    ― 本記事での引用箇所:1時間以内の連続VDT作業・10〜15分の休憩・視距離40cm以上の推奨
  5. Lee G(2024)「Evidence-Based Strategies for Warm Compress Therapy in Meibomian Gland Dysfunction」Ophthalmol Ther. 13(9):2481. PMC11341798
    ― 本記事での引用箇所:温罨法(40℃以上・1日1回10分)による涙液脂質層・TBUTの有意な向上(6臨床試験すべてp<0.05)

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療に代わるものではありません。眼精疲労・ドライアイの症状が続く場合や、急激な視力変化・強い目の痛みがある場合は、速やかに眼科医療機関にご相談ください。

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