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夏の尿路結石・腎結石を防ぐ:脱水と食事のセルフケア

編集:和ごころプロジェクト|公開 2026.07.04編集方針

「突然の激しい脇腹の痛みで救急搬送された」「血尿が出て怖くて病院に行った」――尿路結石は、痛みの激しさから"石の病気"と呼ばれることもある泌尿器疾患です。そして、この病気が夏に急増することをご存じでしょうか。気温が上がり、汗で水分が失われやすい季節は、尿が濃縮して結石が形成されやすい条件がそろいます。本記事では、なぜ夏に尿路結石が増えるのかという仕組みを解説し、水分補給・食事・生活習慣による再発予防のセルフケアを、根拠のある情報とともにお伝えします。

夏に尿路結石が増えるのはなぜか

尿路結石は、腎臓・尿管・膀胱などに結晶(石)が形成される疾患です。日本国内では1965年から2005年にかけて上部尿路結石の年間発症数が約3倍に増加したという疫学データがあり[1]、さらに夏季に発症が集中する季節性が国際的な研究で繰り返し確認されています。

気温と発症数の関係を調べた国際系統的レビュー(13研究、平均追跡5.5年)では、英国・韓国・米国・サウジアラビア・イタリア・スペイン・台湾・日本・ニュージーランドにわたって、気温が高い月ほど腎疝痛(尿路結石による激痛)の発症数が増えることが報告されています[2]。日本の病院を受診した患者1,005人を分析した研究でも、男性・高齢者を中心に夏季の発症が冬季よりも有意に多く、気温上昇と発症数に正の相関が確認されました[3]

夏に発症が増える主な理由は脱水による尿の濃縮です。汗として水分が失われると尿量が減り、尿中のミネラル濃度が上昇します。シュウ酸やカルシウムなどが過飽和状態になると結晶が析出し、それが集積して石になります。「かくれ脱水」と呼ばれる自覚症状のない軽度の脱水でも、尿の濃縮は静かに進んでいます。

夏の高温と発汗により脱水が進み、尿が濃縮されて尿路結石が形成されやすくなる仕組みの図解
図1:夏の暑熱・発汗による脱水が尿路結石リスクを高める全体像。腎疝痛は夏季に多く報告されている([2][3]をもとに作図)

尿路結石の種類と「シュウ酸カルシウム結石」が多い理由

尿路結石の約80%はカルシウム系結石であり、そのうち大部分がシュウ酸カルシウム結石です[4]。シュウ酸は食品から体内に取り込まれる有機酸で、腸管で吸収されたあと尿中に排泄されます。腎臓でカルシウムイオンと結合すると、水に溶けにくいシュウ酸カルシウムの結晶が生じやすくなります。

以前は「カルシウムをとると結石ができやすい」と考えられていましたが、現在は逆の見方が確立されています。食事から十分なカルシウム(1日800〜1,200mg程度)を摂取すると、腸の中でシュウ酸がカルシウムと先に結合し、吸収されにくい形になります。その結果、尿中のシュウ酸が減り、結石が形成されにくくなるとされています[4]。低カルシウム食が"一般常識"として広まっていた過去の考え方は、現在の科学的根拠とは逆です。

シュウ酸を多く含む食品としては以下が知られています。

  • ほうれん草(特に生のもの)
  • ナッツ類(アーモンド、落花生など)
  • チョコレート・カカオ
  • コーヒー・紅茶(過剰摂取の場合)
  • ビタミンCの過剰摂取(1,000mg超は体内でシュウ酸に変換される)

ただしこれらを完全に避ける必要はなく、ゆでる・水さらしなどの調理でシュウ酸を減らすこと、そしてカルシウムを含む食品と一緒に食べることが結石リスクの低減につながると考えられています。

腸内でのシュウ酸吸収とカルシウムの役割(メカニズム)

シュウ酸カルシウム結石の形成メカニズムを理解するうえで重要なのが、「腸管でのシュウ酸吸収を食事カルシウムが抑制する」という仕組みです。ランダム化比較試験(men with hypercalciuria対象)を含む複数の研究が、1日カルシウム1,200mgの食事(+低シュウ酸・低動物性タンパク・低塩分)が低カルシウム食(400mg)と比べて5年後の結石再発率を51%低下させることを示しました[4]

また、Sromicki と Hess(2020)の研究では、75人の尿路結石患者に5つの尿パラメータ(尿量・尿中カルシウム・シュウ酸・尿酸・カルシウムシュウ酸過飽和度)を目標にした食事指導を行ったところ、次のような変化が観察されました[5]

  • 1日尿量:2,057mL → 2,573mL(約25%増加)
  • 尿中シュウ酸:21%減少
  • カルシウムシュウ酸過飽和度:21.5%低下(p<0.0001)

食事の変化が尿の化学的性状に明確な影響を与えることを示す研究です。

食事カルシウムが腸管内でシュウ酸と結合して吸収を抑制し、尿中のシュウ酸カルシウム結晶形成リスクを下げるメカニズムの図解
図2:食事カルシウムが腸内シュウ酸吸収を抑制するメカニズム。Sromicki & Hess(2020)らの知見([5])をもとに作図

水分補給:量・タイミング・飲み物の選び方

尿路結石の予防で最も重要な生活習慣が水分補給です。日本泌尿器科学会の診療ガイドラインは、結石の種類を問わず1日の尿量を2.0〜2.5リットル以上に保つよう推奨しており、そのためには食事以外から1日2リットル以上の飲水が目安とされています(グレードA推奨)。

尿量と結石リスクの関係を調べたシステマティックレビュー(9研究・541人)でも、高い水分摂取量が尿量増加と結石リスク低下と関連していることが確認されています[6]。さらに、6つのランダム化比較試験をまとめたメタアナリシス(n=824)では、水分摂取量を増やした群の結石再発リスク比が0.39(95%信頼区間0.19〜0.80、P=0.01)と有意に低かったと報告されています[7]

飲み方のポイントとして、一度に大量に飲むより「1回200ml(コップ1杯)を1日10回程度に分けて飲む」ほうが尿量を安定して保ちやすいとされています。特に注意が必要なのは、夜間から就寝前後です。就寝中は水分補給が途絶えるため、尿が濃縮されやすい時間帯となります。就寝前にコップ1杯の水を飲む習慣が一般に勧められています。

夏季の目安として、通常時2リットルに対して汗をかく季節は500mL〜1L程度の追加が目安と言われています(ただし個人差があり、気温・活動量によって異なります)。

飲み物の選択については以下の点が参考になります。

  • 水・麦茶・ほうじ茶: シュウ酸が少なく尿路結石の観点からは適した選択肢
  • オレンジジュース・グレープフルーツジュース: クエン酸を含み、シュウ酸カルシウム結晶の形成を抑制するとの報告がある(ただし糖分が多いので過剰摂取は別の観点から注意)[6]
  • コーラ・フルーツジュース(果糖が多いもの): 果糖の過剰摂取が結石リスクを高めるとの指摘があり、主要な水分補給源には向かない
  • クランベリージュース: シュウ酸カルシウムの過飽和度を高めるとの研究結果があり注意が必要[6]

食事で気をつけたい4つのポイント

食事療法は水分補給と並んで再発予防の柱です。以下の4点が現在の科学的根拠に基づいた主要な推奨とされています。

  • カルシウムは制限しない(むしろ適量摂取を意識)。1日800〜1,200mg程度のカルシウムを、牛乳・乳製品・小魚・大豆製品などから摂取する。食事と一緒に摂ることで腸管内のシュウ酸吸収を抑制できるとされています[4]。サプリメント(炭酸カルシウム)は食間に摂ると逆に尿中カルシウムを増やす場合があるため、食事中に摂取するか医師に相談する。
  • シュウ酸の多い食品は「量」と「食べ方」に注意。ほうれん草や一部のナッツ類は調理の工夫(ゆでてアク抜き、カルシウムと組み合わせる)で摂取できます。完全に避ける必要はありませんが、大量摂取は控えるのが無難です。
  • 塩分と動物性タンパク質を控えめに。食塩の過剰摂取は尿中カルシウムの排泄量を増やします。動物性タンパク質(肉・魚・卵の過剰摂取)は尿酸値を上昇させ、尿中シュウ酸を増やす可能性があります。1日の食塩相当量は6g未満、動物性タンパク質は80g/日以下が目安とされています[4]
  • 夕食の時間帯に注意。夜間は水分補給が途切れ、尿が最も濃縮されやすい時間帯です。就寝の4時間前までに夕食を済ませることで、消化・吸収のタイミングと尿の排泄を調整しやすくなると言われています。

なお、バランスの良い食事全体として「主食・主菜・副菜」が揃うような構成が基本です。特定の食品だけを極端に制限・過剰摂取する偏食は避けることが大切です。

受診を検討したいサイン

尿路結石の症状は多様で、無症状のまま経過することもあれば、突然の激痛で救急搬送が必要になるケースもあります。以下の症状がある場合は、自己判断せずに医療機関(泌尿器科)への受診を検討してください。

  • 突然の強い側腹部痛・背部痛・下腹部痛(波のように繰り返す「疝痛」)
  • 血尿(肉眼でわかる赤みのある尿、または尿検査で指摘された顕微鏡的血尿)
  • 吐き気・嘔吐を伴う腰背部の激痛
  • 排尿時の痛みや違和感が続く場合
  • 発熱(38℃以上)を伴う腰背部痛・側腹部痛(感染症合併が疑われ、緊急度が高い状態の可能性があります)
  • 尿が全く出なくなった(両側尿管の閉塞が疑われます)
  • 以前に尿路結石と診断されたことがあり、同様の痛みが再現した場合

特に発熱を伴う場合は、感染性尿路疾患が合併している可能性があり、速やかな医療機関への受診が必要です。痛みが軽くても、血尿が持続する場合や腰背部の鈍痛が続く場合も、早めに専門科(泌尿器科)を受診してください。

尿路結石の水分補給・食事のセルフケアのポイントと、泌尿器科受診を検討すべき症状(レッドフラッグ)の整理図
図3:夏の尿路結石予防のセルフケアのポイントと、受診を急ぐ症状の整理

参考文献

  1. Yasui T et al.(2008)「Prevalence and Epidemiological Characteristics of Urolithiasis in Japan: National Trends Between 1965 and 2005」Urology. ScienceDirect。― 本記事での引用箇所:「日本で上部尿路結石の年間発症数が1965〜2005年の40年間で約3倍に増加した」という疫学データの根拠
  2. Geraghty RM et al.(2017)「Worldwide Impact of Warmer Seasons on the Incidence of Renal Colic and Kidney Stone Disease: Evidence from a Systematic Review of Literature」Journal of Endourology. PubMed。― 本記事での引用箇所:「高温の月に腎疝痛の発症数が増えることが国際的に確認されている」という根拠(13研究の系統的レビュー)
  3. Ichiyanagi O et al.(2017)「Rise in ambient temperature predisposes aging, male Japanese patients to renal colic episodes due to upper urolithiasis」Scandinavian Journal of Urology. PubMed。― 本記事での引用箇所:「日本において気温上昇と腎疝痛発症に正の相関が確認された(患者1,005人分析)」という根拠
  4. Asplin JR & Coe FL(2006)「Strategies for preventing calcium oxalate stones」CMAJ / PMC. PMC。― 本記事での引用箇所:「シュウ酸カルシウム結石が全結石の約80%を占める」「食事カルシウム1,200mg+低シュウ酸・低タンパク・低塩分食で5年再発率51%低下」「食塩・動物性タンパク制限の推奨量」の根拠
  5. Sromicki J & Hess B(2020)「Simple dietary advice targeting five urinary parameters reduces urinary supersaturation in idiopathic calcium oxalate stone formers」Urolithiasis. PMC。― 本記事での引用箇所:「食事指導で尿量25%増・尿中シュウ酸21%減・カルシウムシュウ酸過飽和度21.5%低下(75人、p<0.0001)」という介入研究の根拠
  6. Gamage KN et al.(2020)「The role of fluid intake in the prevention of kidney stone disease: A systematic review over the last two decades」Turkish Journal of Urology. PMC。― 本記事での引用箇所:「高い水分摂取量が尿量増加と結石リスク低下と関連」「オレンジジュース・グレープフルーツジュースが結石リスク低下に関連」「クランベリージュースは過飽和度を高める」という根拠
  7. Wang Z et al.(2021)「Effect of dietary treatment and fluid intake on the prevention of recurrent calcium stones and changes in urine composition: A meta-analysis and systematic review」PLoS One, 16(4):e0250257. PMC。― 本記事での引用箇所:「水分摂取を増やした群の結石再発リスク比0.39(95%CI 0.19〜0.80、P=0.01)」というメタアナリシスの根拠(6RCT・n=824)

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療に代わるものではありません。尿路結石の症状や再発予防については個人差があり、掲載内容がすべての方に当てはまるわけではありません。痛みや血尿など気になる症状がある場合、または結石の再発予防について詳しく知りたい場合は、泌尿器科など医療機関にご相談ください。

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