予防・健診

子どもの夏かぜ(手足口病・ヘルパンギーナ・プール熱)——症状・感染経路・家庭ケアと登園の目安

編集:和ごころプロジェクト|公開 2026.07.07最終更新 2026.07.06編集方針

毎年6月から7月にかけて、保育園や幼稚園で子どもが急な発熱や口の中の痛みを訴えることが増えます。「手足口病」「ヘルパンギーナ」「咽頭結膜熱(プール熱)」——いずれも「夏かぜ」と総称される夏季の感染症で、乳幼児に特によくみられます。この記事では、3つの夏かぜの症状・原因・感染経路・家庭でのケア・登園・登校の目安をまとめ、受診が必要なサインを整理します。

夏かぜ3種の特徴と違い——手足口病・ヘルパンギーナ・咽頭結膜熱

「夏かぜ」と一口に言っても、原因ウイルスも症状の出方も異なります。それぞれの特徴を整理しておきましょう。

手足口病は、コクサッキーウイルスA6・A16・A10やエンテロウイルス71(EV71)などが原因の急性ウイルス性感染症です[1]。名称のとおり、手のひら・足の裏・口の中に水疱性の発疹が現れるのが特徴です。発熱は38℃以下のことが多く、一般的に3〜7日で自然に軽快するとされています。

ヘルパンギーナは、コクサッキーウイルスA群を主な原因とし、突然の38〜40℃の高熱とのどの奥(軟口蓋付近)に小水疱・潰瘍が生じる点が特徴です[2]。手足には発疹が出ないため手足口病との鑑別点になります。発熱は2〜4日で軽快することが多いとされています。

咽頭結膜熱(プール熱)は、アデノウイルス(主に3型)が原因で、39〜40℃の高熱・のどの痛み・目の充血(結膜炎)の3つが重なるのが特徴です[3]。プールでの感染が起きやすいことから「プール熱」とも呼ばれます。症状は1週間程度続くことがあります。

3疾患に共通するのは、特効薬がなく対症療法が中心という点です。多くの場合は自然回復しますが、まれに合併症が生じることがあります。

夏かぜ3種(手足口病・ヘルパンギーナ・咽頭結膜熱)の症状部位と原因ウイルスの比較図解
図1:夏かぜ3種の症状部位・原因ウイルス・潜伏期間の比較(厚生労働省ガイドライン[4]をもとに作図)

感染経路——なぜ夏に子どもの間で広がりやすいのか

3つの夏かぜに共通する主な感染経路は、飛沫感染・接触感染・経口(糞口)感染です[4]。

  • 飛沫感染:せきやくしゃみで飛んだ飛沫を吸い込む
  • 接触感染:ウイルスのついた手や物に触れた後、口や目に触れる
  • 経口(糞口)感染:便にウイルスが含まれており、おむつ交換などで感染が広がる

手足口病・ヘルパンギーナの原因エンテロウイルスは、回復後も便から数週間〜数か月間ウイルスが排出されることが知られています[4]。また、不顕性感染(症状が出ない感染)も存在するため、発症者を隔離するだけでは感染拡大を完全に防ぐことは難しいとされています。

咽頭結膜熱の原因アデノウイルスは、消毒用アルコールへの抵抗性が比較的高いことが知られており[3]、タオルや水を介した接触感染に特に注意が必要です。プールの水が感染源になることがある一方、塩素濃度が適切に管理されたプールでは感染リスクが低下するとされています。

夏に流行が集中する理由として、高温多湿でウイルスが活性化しやすいこと、保育施設や夏のプール活動で子どもが密に接触する機会が増えることなどが考えられています。国立健康危機管理研究機構(JIHS)のサーベイランスによると、手足口病は例年第15週(4月初旬)ごろから報告数が増加し始め、第30週(7月中旬)前後にピークを迎える傾向が確認されています[1]。

流行規模と年齢層——統計データで見る現状

JIHSの感染症発生動向調査(IDWR 2024年第27号)によると、2024年は2014年以降の過去10年間と比較しても第27週時点で報告数が最多水準で推移しました[1]。2024年第27週の1週間の報告数は35,960例に達し、年齢別では1歳が33.1%(11,887例)と最も多く、次いで2歳が19.8%(7,116例)でした。

手足口病の原因ウイルスは年によって異なります。2024年はコクサッキーウイルスA6(CA6)・A10・A16が主流でした。CA6が原因の場合、水痘(水ぼうそう)と間違えられるほど広範な発疹や爪がはがれるといった症状が出ることもあると報告されています[4]。

ヘルパンギーナについても、患者の90%以上が5歳以下で、1歳代が最も多いとされています[2]。咽頭結膜熱も5歳以下の小児で多く報告されています[3]。

大切なのは、これらの感染症は「かかったことがある」だけでは免疫ができないということです。原因ウイルスが複数あるため、手足口病もヘルパンギーナも何度でもかかる可能性があります。

手足口病の年齢分布と感染経路(飛沫・接触・糞口感染)の図解。JIHSデータをもとに作図。
図2:手足口病2024年報告例の年齢分布と3つの感染経路(JIHS IDWR 2024年第27号[1]をもとに作図)

家庭でのケア——水分補給・食事・環境の整え方

3つの夏かぜはいずれも特効薬がなく、家庭での対症的なケアが中心になります。厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン」でも、「発症した場合には有効な治療法はないが、多くの場合自然経過で治癒する」と示されています[4]。

水分補給が最も重要なケアのひとつです。口の中の痛みや高熱により、水分・食事が十分に摂れなくなることがあります。脱水を防ぐため、こまめに少量ずつ水分(麦茶・経口補水液・スポーツドリンクを薄めたものなど)を補給することが大切です。

  • 食事の工夫:のどや口に刺激の強いもの(酸味の強いもの・柑橘類・炭酸飲料・熱いもの・辛いもの・しょっぱいもの)は避け、冷ましたスープ・ゼリー・プリン・アイスクリームなど口当たりのやさしいものを選ぶ
  • 室温の管理:部屋を涼しく保ち、安静にする
  • 手洗いの徹底:保護者自身もおむつ交換の前後・食事の前後に石けんで手洗いを行う
  • タオルの共用を避ける:特に咽頭結膜熱の原因アデノウイルスは接触感染しやすいため、家族間でのタオル共用は控える
  • 排泄物の適切な処理:おむつ交換の際は手袋を使用し、使用後はすぐに廃棄して手洗いを行う

発熱時の解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン製剤など)の使用については、かかりつけ医の指示に従ってください。特定の解熱鎮痛薬(アスピリンなど)は乳幼児には適さない場合があるため、自己判断での服薬には注意が必要です。

咽頭結膜熱(プール熱)の場合の追加ポイントとして、目の充血・目やにが強い場合、目に触れた後はすぐに手洗いを行い、家族内での目薬・タオル・洗面器の共用を控えることが推奨されます[3]。アデノウイルスはアルコール系消毒薬への抵抗性が比較的高いため、石けんと流水での手洗いが特に重要とされています。

また、回復途中の子どもが「元気になったように見える」場面でも、体力が戻るまで無理な外出や運動は控えることが大切です。保育施設への復帰後も、排便後やおむつ交換後の手洗いを引き続き徹底することが、施設内での二次感染予防につながります[4]。

登園・登校の目安——保育施設・学校の感染症ルール

子どもが夏かぜにかかったとき、「いつから保育園・幼稚園に行けるか」は多くの保護者が気になる点です。3疾患で扱いが異なります。

咽頭結膜熱(プール熱)は学校保健安全法の第2種感染症に指定されており、「主要症状が消退した後2日を経過するまで出席停止」という基準が法律上定められています[4]。登園・登校再開には医師の意見書が必要です。

手足口病は学校保健安全法では第3種感染症(その他の感染症)として扱われ、法令上の出席停止期間は「医師が感染のおそれがないと認めるまで」とされています。厚生労働省の保育所ガイドラインでは登園のめやすとして「発熱や口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく、普段の食事がとれること」と示されています[4]。感染拡大防止のために登園を控えることは有効性が低く、ウイルス排出期間が長いことからも現実的ではないとされており、本人の全身状態の安定を優先して判断します。保育所によっては保護者の登園届の提出を求める場合があります。

ヘルパンギーナも手足口病と同様に第3種感染症(その他の感染症)扱いで、法律上の出席停止期間の明確な規定はありません。厚生労働省ガイドラインでは「発熱や口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく、普段の食事がとれること」が登園めやすとされています[4]。

いずれの場合も、具体的な判断は通っている保育施設・学校と担当医に確認することが重要です。施設ごとに規則が異なる場合があります。

受診を検討したいサイン

夏かぜの多くは自然回復しますが、以下のような状態が現れた場合は速やかに医療機関への受診をご検討ください。

  • 水分が全くとれない・ぐったりしている(脱水が疑われる)
  • 口の中の痛みがひどく、ミルク・食事を全く受け付けない(乳幼児の場合は特に注意)
  • 38℃以上の発熱が3日以上続く
  • けいれんがある・意識がもうろうとしている(脳炎・髄膜炎の可能性)
  • 頭痛・嘔吐が繰り返される(無菌性髄膜炎の可能性)
  • 目の充血・目やにがひどく、まぶたが開けにくい(咽頭結膜熱・流行性角結膜炎の可能性)
  • 発疹の範囲が急に広がる・水疱が膿んだように見える
  • 呼吸が速い・息苦しそうにしている
  • 新生児・乳児の場合(特に生後3か月未満)は少しでも様子がおかしければ早めに受診
  • 3〜7日たっても症状が軽くならない・悪化している
夏かぜの受診目安と登園基準の整理図。脱水・けいれん・意識障害は即受診。
図3:夏かぜの家庭での観察ポイントと受診を急ぐサインの整理

参考文献

  1. 国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症疫学センター(2024)「IDWR 2024年第27号 注目すべき感染症 手足口病」感染症発生動向調査週報(IDWR). JIHS感染症情報提供サイト
    ― 本記事での引用箇所:手足口病の2024年流行状況(第27週報告数35,960例、1歳33.1%が最多)、年齢分布、原因ウイルス(CA6・A10・A16)
  2. 国立健康危機管理研究機構(JIHS)(2025)「ヘルパンギーナ」感染症を探す 疾患名から探す. JIHS感染症情報提供サイト(最終更新2025年8月28日)
    ― 本記事での引用箇所:ヘルパンギーナの病原体・潜伏期間・臨床像(高熱2〜4日・軟口蓋水疱)・患者の90%以上が5歳以下
  3. 国立健康危機管理研究機構(JIHS)(2025)「咽頭結膜熱」感染症を探す 疾患名から探す. JIHS感染症情報提供サイト(最終更新2025年6月26日)
    ― 本記事での引用箇所:咽頭結膜熱の病原体(アデノウイルス3型等)・潜伏期間5〜7日・アルコール耐性・学校保健安全法第2種指定
  4. 厚生労働省子ども家庭局保育課(2018、2021年一部改訂)「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」. 厚生労働省
    ― 本記事での引用箇所:手足口病・ヘルパンギーナ・咽頭結膜熱の感染経路・登園のめやす(手足口病「普段の食事がとれること」)・学校保健安全法出席停止基準(咽頭結膜熱:主要症状消退後2日)
  5. 大阪市健康局 大阪市保健所感染症対策課(2026)「夏かぜ(夏型感染症:手足口病、咽頭結膜熱、ヘルパンギーナ)」大阪市公式ホームページ. 大阪市
    ― 本記事での引用箇所:各疾患の症状・経過(手足口病3〜7日、ヘルパンギーナ2〜4日で解熱、咽頭結膜熱1週間程度)・予防法

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療に代わるものではありません。お子さまの症状が気になる場合や、受診の判断に迷う場合は、かかりつけの小児科・医療機関にご相談ください。

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