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緊張型頭痛・首こり・肩こりの原因とセルフケア——ストレッチ・温熱・姿勢から考える

編集:和ごころプロジェクト|公開 2026.07.02編集方針

頭が締めつけられるような重い感覚、首から肩にかけてのこり。デスクワークやスマートフォンの使用が長くなった日ほど、夕方になって「また始まった」と感じる方は少なくないでしょう。こうした頭痛の多くは緊張型頭痛と呼ばれ、一次性頭痛のなかで最も頻度が高い種類とされています。この記事では、緊張型頭痛がなぜ起こるのかを根拠に基づいて整理し、日常生活で取り組みやすいセルフケアの考え方をお伝えします。

緊張型頭痛とはどのような頭痛か

緊張型頭痛は、国際頭痛学会(IHS)の診断基準(ICHD-3)に基づき、以下の特徴で定義されています。頭の両側が圧迫感・締めつけ感で痛み、拍動(ズキズキ)はなく、日常生活の動作で悪化しにくい点が特徴です。持続時間は30分から7日間と幅広く、吐き気を伴うことはほとんどありません[1]

発生頻度によって3つに分類されます。

  • 稀発型:月1日未満(年12日未満)
  • 頻発型:月1〜14日(年12〜179日)
  • 慢性型:月15日以上、3か月以上継続

世界的な有病率は成人の26〜46%に上るとされており[1]、日本でも15歳以上の年間有病率が22.3%と報告されています[9]。日本全体では約4,100万人が罹患していると推計されており[2]、頭痛の中で最も多い種類です。

デスクワーク中に首・肩の筋肉が緊張している人のイラスト
図1:長時間のデスクワークや前傾姿勢は、僧帽筋・頸部筋群の持続的な緊張につながりやすい

なぜ首こり・肩こりが頭痛を引き起こすのか——そのメカニズム

緊張型頭痛のメカニズムは「筋肉が凝るから痛い」という単純なものではなく、現在では末梢感作と中枢感作の両方が関与していると理解されています[3]

末梢感作(主に稀発型・頻発型):側頭筋・後頭下筋・僧帽筋などの頭頸部周辺の筋肉が長時間収縮し続けると、筋肉内の血流が低下します。その結果、痛みに関わる物質(ブラジキニン・プロスタグランジンなど)が蓄積し、筋膜内の痛覚受容器(侵害受容器)を過敏化させます。この状態を末梢感作といいます。圧痛点(トリガーポイント)が生じやすいのもこの段階です[3]

中枢感作(主に慢性型):痛みの刺激が脊髄・脳の痛み処理システムへ繰り返し送られると、脳中枢側の感受性が高まります。研究では、慢性緊張型頭痛患者では機械的・熱的・電気的刺激に対する閾値が低下し、全般的な痛覚過敏が生じていることが示されています[3]。さらにMRI研究では、前頭前皮質・島皮質・視床など複数の脳領域における構造・機能的変化が報告されています[4]

つまり、頭痛が慢性化するにつれて「筋肉の問題」だけではなく「脳の痛み処理の問題」へと移行していく可能性があります。これが緊張型頭痛が慢性化しやすい理由のひとつと考えられています。

末梢感作(頸部・肩の筋肉)と中枢感作(脳・脊髄)の二段階の痛み経路の図解
図2:Steel らの報告([3])をもとに作図。末梢(筋肉・筋膜)の感作が積み重なると、中枢(脊髄・脳)の痛み処理にも変化が生じるとされる

姿勢・ストレス・生活習慣との関係

緊張型頭痛を誘発・増悪させる要因は複合的です。主なものを整理します。

  • 不良姿勢:頭部が前方に突き出た「前傾頭位」は、頭の重心が前方にずれ、首の筋肉が頭を支えるために過剰な負担を受け続けます。わずかな前傾であっても頸椎への負荷が大きく増加することが知られており、長時間続く場合は筋肉疲労の蓄積につながりやすいとされています。
  • 長時間の同一姿勢:デスクワーク・スマートフォン操作・車の運転など。筋肉が同じ収縮状態を続けると、血流低下と痛み物質の蓄積が起こりやすくなります。
  • 精神的ストレス:ストレスは不随意の筋収縮を増加させ、また睡眠の質を下げることで回復を妨げます。日本頭痛学会のガイドラインでも、精神的ストレスは緊張型頭痛の増悪因子として挙げられています[5]
  • 睡眠不足・不規則な生活:回復の機会が減ることで筋肉の疲労が蓄積しやすくなります。
  • 眼精疲労:長時間の画面注視で眼の周囲の筋肉が緊張し、側頭筋へと影響が波及することがあります。

これらの要因は互いに重なり合って頭痛を起こしやすくします。「なぜ今日は特にひどいのか」を振り返ると、こうした要因が複数重なっていることが多いと感じる方も多いでしょう。

根拠に基づくセルフケアの考え方

緊張型頭痛に対する非薬物療法については、複数のシステマティックレビューがまとめられています。エビデンスを踏まえたセルフケアの主な柱は以下の通りです[6][7]

1. 頸部・肩甲帯のストレッチと姿勢再教育

2023年のシステマティックレビュー(Repiso-Guardeño ら)では、頸部・胸椎の可動化と姿勢再教育プログラムが中期的(8〜12週)に頭痛の強度低下と頻度減少に有意な効果を示したと報告されています[6]。一方で「即座に頭痛が止まる」という性質のものではなく、継続的な取り組みによって徐々に変化を図るものです。

具体的な動作例(いずれも無理のない範囲で):

  • 首の側屈ストレッチ:ゆっくり頭を横に傾け、反対側の首筋を伸ばす。左右各20〜30秒、1日2〜3セット。
  • 肩甲骨の引き寄せ:両肩甲骨を背骨に向かって軽く引き寄せ、5〜10秒保持。10回程度繰り返す。
  • 胸を開く動作:両手を後ろで組み、胸を広げる。猫背の逆の動きを意識する。

2. 温熱ケア

温めることで血流を促し、筋肉の緊張をほぐすことが期待されます。蒸しタオルやホットパックを首・肩に当てる方法が家庭で試しやすいセルフケアです。ただしこれは筋肉が凝り固まっているときの補助的なケアであり、即効性を保証するものではありません。

3. 12週間の筋力トレーニング

2023年のランダム化比較試験(Martín-Vera ら)では、頸部・肩部の筋力強化トレーニングを12週間実施した群で、頭痛の強度が平均6.9点から5.1点(VAS10点満点)に、頭痛の持続時間が月18.3時間から11.3時間に有意に低下したと報告されています[7]。ただし、頭痛頻度への効果は統計的に有意でなかったことも示されており、すべての指標に効果があるわけではありません。

4. 有酸素運動・リラクゼーション

2021年のシステマティックレビュー(Krøll ら)では、監督下での運動プログラムや関節モビリゼーションが頭痛頻度・生活の質・疼痛強度にある程度の改善をもたらす可能性があるとまとめられていますが、エビデンスの確実性は低〜非常に低いと評価されています[8]。ヨガ・マインドフルネス・腹式呼吸といったリラクゼーション法も、ストレスへのアプローチとして試みる価値があるとされています。

5. 鎮痛薬の使い方に注意

市販の解熱鎮痛薬は急性期には有用ですが、日本頭痛学会は「週2日以内の使用」を目安としています[5]。それ以上の使用は「薬物乱用頭痛」を引き起こすリスクがあり、かえって慢性化を招く可能性があります。鎮痛薬の使用頻度が増えてきた場合は、専門医に相談することが勧められます。

日常の姿勢とストレス管理——根本へのアプローチ

緊張型頭痛を繰り返しにくくするうえで、日々の習慣の見直しは重要な土台となります。

  • こまめな休憩:デスクワーク中は30〜60分に一度、5〜10分の休憩を取ることが推奨されます。立ち上がって軽く歩く、首を回すだけでも筋肉の持続的収縮を断ち切る助けになります。
  • モニターの位置調整:画面の高さを目線かやや下に設定し、腕の長さに近い距離を保つことで前傾頭位になりにくくなります。
  • 椅子と体幹の姿勢:深く腰掛け、腰椎が自然なカーブを保った状態で座ることが基本です。腰が丸まると頭が前方に出やすくなります。
  • 睡眠の確保:睡眠不足は痛みの閾値を下げ、翌日の頭痛リスクを高める可能性があります。規則的な就寝・起床時刻を心がけることが、頭痛の予防につながる可能性があります。
  • ストレスの認識と対処:自分のストレス源を把握し、意識的に気分転換の時間を設けることが有用とされています。深呼吸・瞑想・散歩など、自分に合った方法を探すことが大切です。

これらのアプローチは即座に頭痛を消すものではありませんが、繰り返しの頭痛を起こしにくい身体の状態に向けて働きかける手段として、継続的に取り組む意義があるとされています。

受診を検討したいサイン

緊張型頭痛はセルフケアで対応できる場合も多い一方、次のような症状が見られる場合は、別の疾患の可能性を排除するために医療機関での受診が勧められます。

  • これまでに経験したことがないほど突然に始まる激しい頭痛(雷鳴様頭痛)
  • 頭痛に発熱・首の硬直・嘔吐・意識の変容を伴う
  • 頭痛が進行性に悪化している、または毎回ひどくなっている
  • 手足のしびれ・麻痺、視力の変化、言語障害など神経症状を伴う
  • 50歳以降に初めて起きた新たな頭痛
  • 頭痛で夜間に目が覚める、または横になると強くなる
  • 市販の鎮痛薬が月に10日以上必要な状態、または薬が効きにくくなってきた
  • 頭痛によって日常生活・仕事に大きな支障が出ている

特に最初の2点は緊急性が高い可能性があるため、速やかに医療機関を受診することが大切です。

ストレッチ・温熱ケア・姿勢改善のセルフケア3ステップと、医療機関受診を検討すべきサインの整理図
図3:セルフケアの流れ(ストレッチ・温熱・姿勢改善)と、受診を急ぐサイン(雷鳴様頭痛・神経症状など)の目安

参考文献

  1. Steel SJ, Robertson CE, Whealy MA(2021)「Current Understanding of the Pathophysiology and Approach to Tension-Type Headache」Current Neurology and Neuroscience Reports. PubMed PMID: 34599406
    ― 本記事での引用箇所:ICHD-3分類基準・生涯有病率の根拠、末梢感作と中枢感作の並存
  2. Xu R, Zhang R, Dong L et al.(2025)「An analysis of the burden of migraine and tension-type headache across the global, China, the United States, India and Japan」Frontiers in Pain Research. Frontiers in Pain Research
    ― 本記事での引用箇所:日本における有病率(約4,100万人)の数値の根拠
  3. Steel SJ et al.(2021)およびParsaei M et al.(2024)「Brain structural and functional abnormalities in patients with tension-type headache: A systematic review of magnetic resonance imaging studies」Journal of Neuroscience Research. PubMed PMID: 38284839
    ― 本記事での引用箇所:末梢感作・中枢感作の双方向メカニズムの説明、脳領域への変化
  4. Parsaei M, Taebi M, Arvin A, Sanjari Moghaddam H(2024)「Brain structural and functional abnormalities in patients with tension-type headache: A systematic review of magnetic resonance imaging studies」Journal of Neuroscience Research. PubMed PMID: 38284839
    ― 本記事での引用箇所:MRI研究による脳構造・機能変化(前頭前皮質・島皮質・視床)の根拠
  5. 日本頭痛学会(2021)「頭痛の診療ガイドライン 2021」日本神経学会・日本頭痛学会監修. Mindsガイドラインライブラリ
    ― 本記事での引用箇所:精神的ストレスの増悪因子、鎮痛薬「週2日以内」の推奨
  6. Repiso-Guardeño A, Moreno-Morales N et al.(2023)「Physical Therapy in Tension-Type Headache: A Systematic Review of Randomized Controlled Trials」International Journal of Environmental Research and Public Health. PMC10001815
    ― 本記事での引用箇所:頸部・胸椎モビリゼーションと姿勢再教育が中期的に有効とされる根拠
  7. Martín-Vera D, Sánchez-Sierra A et al.(2023)「Efficacy of a strength-based exercise program in patients with chronic tension type headache: a randomized controlled trial」Frontiers in Neurology. PMC10543698
    ― 本記事での引用箇所:12週間筋力トレーニングによる頭痛強度・持続時間の変化(VAS 6.9→5.1、月18.3h→11.3h)
  8. Krøll LS et al.(2021)「Manual joint mobilisation techniques, supervised physical activity, psychological treatment, acupuncture and patient education for patients with tension-type headache. A systematic review and meta-analysis」The Journal of Headache and Pain. PMC8379845
    ― 本記事での引用箇所:非薬物療法(運動・関節モビリゼーション)の有効性とエビデンスの確実性評価
  9. Igarashi H, Sakai F(1998)「Epidemiological survey of tension-type headache」Japanese Journal of Headache(日本頭痛学会誌). 25(1): 17-19. 所収: 頭痛の診療ガイドライン(神経学会 CQ I-12 背景情報)
    ― 本記事での引用箇所:日本における緊張型頭痛の年間有病率22.3%(15歳以上全国調査)の根拠

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療に代わるものではありません。症状が続く場合、悪化する場合、または受診を要するサインに当てはまる場合は、医療機関(頭痛外来・神経内科・脳神経外科・内科など)にご相談ください。

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