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眼精疲労・VDT症候群の原因とセルフケア — 目の疲れを和らげる温熱・休憩・環境の整え方

編集:和ごころプロジェクト|公開 2026.07.02編集方針

パソコンやスマートフォンを長時間使っていると、夕方ごろには目がしょぼしょぼして焦点が合いにくくなる——そんな経験はありませんか。眼精疲労(がんせいひろう)は、目の疲れが睡眠でも回復しないほど蓄積した状態で、頭痛や肩こり、集中力の低下を伴うことも少なくありません。本記事では、デジタル機器の使用が引き起こす目の疲れのしくみと、日常でとりいれやすいセルフケアの方法を、信頼できるエビデンスにもとづいて解説します。

眼精疲労とVDT症候群 — なぜスクリーンで目が疲れるのか

コンピューターやスマートフォンなどのデジタル機器を使う作業はVDT(Visual Display Terminals)作業と呼ばれ、長時間続けると目や体にさまざまな不調が生じることがわかっています。この不調をまとめてVDT症候群、あるいは近年では「デジタルアイストレイン(Digital Eye Strain: DES)」と呼びます。

デジタルアイストレインとは、「デジタル電子機器の長時間使用から生じる視覚および眼症状の集合体」と定義されています[1]。COVID-19以前には有病率が5〜65%と報告されていましたが、リモートワーク・オンライン学習の普及後には80〜94%にまで上昇したとされています[1]

研究によると、デジタルアイストレインの症状がある人の割合は以下のとおりです[2]:

  • 1〜5つの症状あり:67.0%(140名/209名)
  • 6〜10つの症状あり:30.1%(63名/209名)
  • 最も多い症状:眼乾燥(43.2%)、眼の灼熱感(35.9%)、頭部・首のこわばり(31.1%)

また、1日8時間以上デジタル機器を使用するグループでは症状の重症度が有意に高く(p=0.009)、生産性への影響を認める人は46.9%、集中力低下を報告した人は57.4%に上っています[2]

眼精疲労の主な原因を示す図解。スクリーンからの毛様体筋への負担、まばたき減少、ドライアイのつながりを表している
図1:デジタルアイストレインの主な要因。スクリーン使用によって複数の負担が目に同時にかかる

目の疲れを生むしくみ — 毛様体筋・ドライアイ・マイボーム腺

目の疲れは、主に3つのしくみが絡み合って生じます。それぞれを理解することが、的確なセルフケアにつながります。

1. 毛様体筋の持続的な緊張
目でものを見るとき、水晶体の厚みを変えてピントを調節しているのが毛様体筋(もうようたいきん)です。スクリーンを見ているとき、目は一定の距離に固定されたまま毛様体筋を収縮させ続けます。長時間この状態が続くと筋肉が疲弊し、眼精疲労の中心的な原因になります[1]

2. まばたきの減少とドライアイ
通常、まばたきは1分間に15〜20回程度ですが、スクリーンに集中しているときは5〜7回程度に減少するといわれています。まばたきは涙液を角膜全体に広げ、目の表面を潤す役割を果たしています。この回数が減ると、角膜表面が乾燥して微細な傷が生じ、視覚の質が低下します。すると目はさらに調節に力を使うことになり、疲労が加速する悪循環につながります[1]

3. マイボーム腺機能不全(MGD)
まぶたの縁には「マイボーム腺」という皮脂腺があり、涙の蒸発を防ぐ油分(マイバム)を分泌しています。スクリーン作業によるまばたきの減少や眼周囲の血流低下が続くと、マイボーム腺の油分が変質・詰まりやすくなります。MGDは、涙液の蒸発型ドライアイの主要な原因の一つとされています[3]

目の断面図。毛様体筋の緊張、マイボーム腺の位置、涙液層の構造を示す模式図
図2:眼精疲労の主な機序。毛様体筋・マイボーム腺・涙液層の関連(Kaur Kらの報告[1]をもとに作図)

厚生労働省ガイドラインが示す「作業時間の目安」

厚生労働省は令和元年(2019年)7月、「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を策定しました(基発0712第3号)[4]。このガイドラインでは、情報機器を使う労働者の健康保護のために以下の点が求められています。

  • 一連続作業時間は1時間以内を目安とする
  • 連続作業と次の連続作業の間に10〜15分の作業休止時間を設ける
  • 一連続作業の中でも、1〜2回程度の小休止(1〜2分程度)をとることを推奨

この「作業休止時間」は、単なる休憩時間ではなく、目・首・肩・腰へのひとまとまりの負担を解消するための積極的なインターバルです[4]。職場での実施が難しい場合でも、家庭での在宅勤務やスマートフォンの使用時間にも同様の考え方を応用することが望ましいとされています。

さらに注目されているのが、英語圏で広まった「20-20-20ルール」です。これは「20分スクリーンを見たら、20フィート(約6メートル)先を、20秒間見る」というもので、遠くを見ることで毛様体筋を緩める効果が期待されています。ただし、科学的根拠については研究によって見方が異なり[5]、一部の研究ではドライアイ症状の改善に効果があると報告されている一方、全体的な症状スコアでは有意差が確認されなかった研究もあります[5]。現時点では、定期的に遠くを見る習慣が目の緊張緩和につながると考えられる範囲で参考にするのが適切でしょう。

科学的に裏付けのあるセルフケア — 温熱・環境・まばたきの工夫

眼精疲労に対するセルフケアとして、現在エビデンスがある方法を整理します。

まぶたの温熱ケア(温罨法)
目を温める温熱ケアは、マイボーム腺機能不全(MGD)に対する一線の対処法として研究されています。蒸しタオルや温熱アイマスクを用いたランダム化比較試験では、3か月間の実施でBlephasteam使用群の78.3%が症状改善を報告し、蒸しタオル群(45.5%)より有意に高い改善率が示されました(p=0.023)[3]。有効な温度は40℃以上とされており、蒸しタオルの場合は45℃程度に温めてから当てると、4〜6分で涙の油分層に影響する温度が得られるとされています[3]

  • 市販の温熱アイマスクや蒸しタオルを、就寝前または休憩時間に10〜15分程度当てる
  • 40℃以上が目安(熱すぎると感じる場合はすぐ外す)
  • 目に炎症がある場合や充血しているときは使用しない(悪化のおそれあり)

意識的にまばたきをする
スクリーン使用中は意識的にまばたきをする、またはパソコンに「まばたきリマインダー」のメモを貼るなどの工夫が、ドライアイ症状の緩和につながるとされています[1]

画面・照明・距離の環境調整
ディスプレイの輝度を部屋の明るさに合わせ、画面は目線より少し下になるよう調整します。目から画面までの距離は50〜70cm程度が推奨されています。窓からの外光が画面に反射する場合は、カーテンやブラインドで調整します。

  • 画面の輝度・色温度:周囲の照明に合わせて調整し、画面を直視しても眩しくない明るさに
  • 目から画面の距離:50〜70cm程度
  • 画面の高さ:目線より若干下(おおむね10〜15度程度)
  • 定期的な換気・加湿:乾燥した室内空気はドライアイを悪化させるため

スクリーン時間の見直し
研究では、1日のスクリーン使用時間が4時間以下に抑えられているほど症状が軽い傾向があるとされています[1]。完全にゼロにすることが難しい現代の生活でも、仕事以外の時間のスマートフォン使用を意識的に減らすことが症状軽減に貢献する可能性があります。

日常に取り入れやすい「目のリカバリー」ルーティン

セルフケアを継続するためには、生活の中の決まった場面に習慣として組み込むのが効果的です。以下は一例です。

仕事中・勉強中

  • 60分に1回、10〜15分の休憩をとり、窓の外の遠い景色を見る
  • 30分ごとにスクリーンから目を離し、20秒ほど6m以上先を見る
  • スクリーンから目を離したとき、ゆっくりまばたきを10回繰り返す

夜の習慣

  • 就寝前に温熱アイマスクを5〜15分使用する(目に炎症のないことを確認してから)
  • スクリーン使用は就寝の30〜60分前には終えることを意識する

環境を整える

  • パソコン周辺に観葉植物など「遠くを見るきっかけ」となるものを置く
  • 室内の湿度を40〜60%程度に保つ(加湿器の活用)
  • 定期的に眼科での視力・眼の状態チェックを受ける

これらのセルフケアは、あくまでも日常的な目の疲れを和らげる土台づくりを目的としたものです。症状の性質や程度によっては医師の診察が必要な場合もあります。

受診を検討したいサイン

以下のような症状がある場合は、眼科を受診することを検討してください。眼精疲労に似た症状を呈する疾患(緑内障・白内障・ドライアイ重症例・眼圧上昇など)の可能性があります。セルフケアだけで対処しようとせず、専門家の判断を仰ぎましょう。

  • 目の疲れや痛みが2週間以上続いており、休息しても回復しない
  • 視力が急激に変化した、またはかすみ・ぼやけが続く
  • 目の周辺に強い痛みや圧迫感がある
  • 頭痛が繰り返し起こり、市販薬でも改善しない
  • 虹のような輪(ハロ)や光が見える
  • 片目のみの視力低下や見えない範囲(暗点)がある
  • 目の充血や分泌物が増えている
  • 目を温めるケアを行ったが症状が悪化した
セルフケアのチェックリストと受診を検討すべきサインを整理した図解
図3:日常のセルフケア習慣と、医療機関への受診を検討したいサインの整理

参考文献

  1. Kaur K, Gurnani B, Nayak S, et al. (2022)「Digital Eye Strain- A Comprehensive Review」Ophthalmology and Therapy. 11(5):1655–1680. PMC9434525
    ― 本記事での引用箇所:デジタルアイストレインの定義・有病率(COVID-19後80〜94%)・毛様体筋とドライアイのメカニズム・20-20-20ルールの推奨
  2. Bin Maneea MW, et al. (2024)「Digital Eye Straining: Exploring Its Prevalence, Associated Factors, and Effects on the Quality of Life」Cureus. PMC11140826
    ― 本記事での引用箇所:症状の分布(1〜5症状67%・6〜10症状30.1%)、8時間以上使用で重症度上昇(p=0.009)、生産性低下46.9%・集中力低下57.4%
  3. Sim HS, Petznick A, Barbier S, et al. (2014)「A Randomized, Controlled Treatment Trial of Eyelid-Warming Therapies in Meibomian Gland Dysfunction」Ophthalmology and Therapy. 3(1-2):13–26. PMID: 25156975. PubMed
    ― 本記事での引用箇所:温熱療法によりBlephasteam群78.3%、蒸しタオル群45.5%が改善(p=0.023)、有効温度40℃以上
  4. 厚生労働省(令和元年7月12日)「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(基発0712第3号・令和3年12月1日一部改正). 厚生労働省PDF
    ― 本記事での引用箇所:一連続作業時間1時間以内、10〜15分の休憩推奨、1〜2分の小休止
  5. Datta S, Sehgal S, Bhattacharya B, Satgunam PN (2023)「The 20/20/20 rule: Practicing pattern and associations with asthenopic symptoms」Indian Journal of Ophthalmology. 71(5):2071–2075. PMC10391416
    ― 本記事での引用箇所:20-20-20ルールの実践者と非実践者の症状スコアに有意差なし(P=0.53)という知見

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療に代わるものではありません。症状が続く場合や悪化する場合は、医療機関にご相談ください。

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