「最近、社員が疲れていそう」「健診はやっているけれど、その後のフォローまでは手が回らない」——中小企業の経営者やご担当の方から、そんな声をよく耳にします。日々の業務に追われるなかで、従業員一人ひとりの健康にまで気を配るのは、本当に大変なことです。それでも、働く人が元気でいることは、会社にとっても、ご本人とご家族にとっても、何より大切な土台だと私たちは考えています。

和ごころ職場の「企業の健康管理戦略」は、地域の中小企業さまと連携し、従業員の年次健診や職場での健康相談をいっしょに進めていく取り組みです。むずかしい仕組みを一から作るのではなく、まずはできるところから、地域ぐるみで支え合う。そんな姿勢を大切にしています。本記事では、この活動の中身と、なぜ職場の健康づくりが大切なのかを、公的な資料や研究の報告を交えながら、やさしくご紹介します。

この活動とは

和ごころ職場は、近隣の中小企業さまと連携し、従業員の年次健康診断の実施や、職場での健康相談の場づくりをお手伝いする地域活動です。受診の声かけから、結果を見たあとの生活面のご相談まで、企業さまと従業員の双方に、ゆっくりと寄り添います。

近年は、従業員の健康を経営の視点からとらえる「健康経営」という考え方が広がっています。経済産業省は、健康経営を「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」と説明し、従業員への健康投資が活力や生産性の向上につながり、組織の活性化をもたらすと位置づけています[1]。和ごころ職場の活動は、こうした流れのなかで、地域の企業さまが無理なく一歩を踏み出せるよう、伴走することを目指しています。

あわせて、環境・社会・企業統治を重んじるESG(イーエスジー)の観点からも、人を大切にする会社づくりのお手伝いができればと考えています。とくに「社会(S)」の領域では、働く人の健康や安全への配慮が、これからの企業の信頼につながる要素として注目されています。取引先や金融機関、これから入ってくる若い世代の従業員も、「人を大事にしているかどうか」をよく見ています。大企業のような専門部署がなくても、地域の力を借りながら少しずつ進めていける——そんな選択肢があることを、まず知っていただけたらうれしいです。健康への取り組みは、コストではなく、会社の未来への投資だと私たちは考えています。

こんな方に

  • 従業員の健診はしているものの、その後のフォローまで手が回っていない中小企業の経営者・ご担当の方
  • これから健康経営に取り組みたいけれど、何から始めればよいか分からない方
  • 働く世代として、自分の健康を年に一度きちんと見つめ直したい方
  • 職場のストレスや心身の不調について、気軽に相談できる場を求めている方
  • 採用や定着のために、「人を大切にする会社」という姿勢を地道に育てたい方
  • 地域の企業や人と支え合いながら、無理のない健康づくりを進めたい方

どれか一つでも心当たりがあれば、それで十分です。完璧な準備は必要ありません。「気になっている」という気持ちが、最初の一歩になります。

なぜ大切なのか

働く人の健康を守ることには、法律の上でも、はたらきの上でも、しっかりとした裏づけがあります。ここでは、和ごころ職場が大切にしている考え方の根拠を、公的資料や研究の報告にそってご紹介します。少しかたいお話も含まれますが、なぜこの活動に意味があるのかを知っていただくための土台として、おつきあいいただけたらと思います。

まず、年次健診は会社の義務です。厚生労働省の資料によれば、事業者は労働安全衛生法第66条に基づき、常時使用する労働者に対して医師による健康診断を実施しなければならず、定期健康診断は1年以内ごとに1回行うこととされています[2]。健診は単なる手続きではなく、本人が気づきにくい体の変化を、早い段階でとらえるための大切な機会です。忙しさのなかでつい後回しになりがちですが、年に一度の節目として位置づけることが、長くはたらける体づくりの出発点になります。中小企業では人手が限られ、健診の段取りそのものが負担になることもあります。和ごころ職場では、案内の文面づくりや日程の調整など、こまやかな実務の部分から、いっしょに手を動かしてお手伝いします。

健診で見つかったサインに、その後の生活面のサポートをつなげる意義も報告されています。日本では40〜74歳を対象に、メタボリックシンドローム(内臓脂肪が関わる生活習慣のリスク)に着目した国の保健指導の枠組みが設けられています。この全国的な生活指導の取り組みについて、対象となった人で体重や腹囲などの指標に好ましい変化がみられたとする研究が報告されています[3]。健診で気づき、その後に生活を少しずつ見直していく——この流れを地域で支えることが、和ごころ職場の願いです。

心の健康への目配りも欠かせません。厚生労働省によると、ストレスチェックは2015年から労働安全衛生法により事業者に実施が義務づけられており、これまで努力義務とされてきた労働者数50人未満の事業場についても、改正法により実施が義務化される方向にあるとされています[4]。体の健診とあわせて心の状態にも目を向けることは、これからの職場づくりでますます大切になると考えられます。小さな会社であっても、心の不調に気づける仕組みを少しずつ整えていけるよう、和ごころ職場はお手伝いします。

職場の健康増進プログラムと、体調がすぐれないまま出勤して本来の力を発揮しにくい状態(プレゼンティーズムと呼ばれます)との関係を調べた系統的レビューでは、一部のプログラムでこの状態の指標に好ましい変化がみられたと報告される一方、研究の質や内容にはばらつきがあり、さらなる検証が必要だとも指摘されています[5]。大げさな約束はできませんが、健診と相談を地道に続けることが、働く人の安心と、長くはたらける環境づくりの一助になると考えています。

当日の流れ・内容

和ごころ職場の取り組みは、企業さまの状況に合わせて、無理のない形で進めます。おおまかな流れは次のとおりです。

  • 事前の打ち合わせ:従業員数やこれまでの健診の状況をうかがい、何から始めるかをいっしょに整理します。費用や手間の心配も、最初に率直にお話しします。
  • 年次健診の実施・受診の声かけ:健診の機会を案内し、受けやすい環境づくりをお手伝いします。受診率が上がる声かけの工夫もご提案します。
  • 職場健康相談:体の不調から心のもやもやまで、担当者がていねいにお話をうかがいます。必要に応じて医療機関や公的な相談窓口をご案内します。
  • 結果のふり返り:健診結果や相談の内容をふまえ、生活面でできそうな小さな一歩をいっしょに考えます。無理な目標は立てません。
  • 継続のご提案:一度きりで終わらせず、節目ごとに見直せるよう、ゆるやかに伴走します。

大切にしているのは、「やらされる健康づくり」にしないことです。企業さまと従業員のペースを尊重し、できることから一つずつ積み重ねていきます。たとえば、最初の年は健診の受診率を上げることだけに集中し、二年目から相談の場を少しずつ増やしていく——そんな段階的な進め方も歓迎です。会社ごとに事情はちがいますので、決まった型に当てはめるのではなく、その職場に合った形をいっしょに探していきます。担当者が一人で抱え込まずにすむよう、地域の窓口や専門家との橋渡しも行います。

参加の安心

「相談すると評価に響くのでは」「個人の健康情報が会社に筒抜けになるのでは」——そうした不安は当然のことだと思います。和ごころ職場では、ご相談の内容やプライバシーに配慮し、安心してお話しいただける場づくりを大切にしています。無理に何かを変えるよう迫ることはありません。

この活動は、診断や治療を行う医療行為ではなく、地域での健康づくりを支える取り組みです。特定の商品やクリニックをおすすめすることもありません。気になる症状がある場合は、かかりつけ医や医療機関、公的な相談窓口におつなぎします。あくまで、地域の一員として、働く人と会社のそばに寄り添う存在でありたいと考えています。

参加方法

関心をお持ちの企業さま・個人の方は、お問い合わせフォームから気軽にご連絡ください。「まずは話だけ聞いてみたい」というご相談も大歓迎です。記入の一例をご紹介します。

  • お名前/会社名:和ごころ商店(従業員12名)
  • ご連絡先:メールまたはお電話番号
  • ご相談内容:「健診はしているが、その後のフォローを相談したい」「ストレスチェックの導入を検討している」など
  • ご希望:「まずは打ち合わせを希望」「資料がほしい」など

いただいた内容をもとに、担当者から折り返しご連絡し、次の一歩をいっしょに考えていきます。費用や進め方についても、その場で率直にお伝えしますので、どうぞご安心ください。

おわりに

働く人が健やかでいることは、会社のいちばんの財産であり、地域全体の元気にもつながります。大きな改革でなくてかまいません。健診を受ける、ちょっとした不調を相談してみる——その小さな一歩を、和ごころ職場は地域のみなさんといっしょに重ねていきたいと思っています。お気軽に声をかけてください。

本記事は地域活動の案内であり、診断・治療を目的としたものではありません。気になる症状や強いつらさがある場合は医療機関・公的相談窓口にご相談ください。

参考文献

  1. 経済産業省「健康経営(METI/経済産業省)」経済産業省 ヘルスケア産業課 リンク
    ― 本記事での引用箇所:健康経営の定義、従業員への健康投資が活力・生産性の向上や組織の活性化につながるとする位置づけ。
  2. 厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう ~労働者の健康確保のために~」厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署 リンク
    ― 本記事での引用箇所:労働安全衛生法第66条に基づく健康診断の実施義務、定期健康診断は1年以内ごとに1回とする規定。
  3. Li Y, ほか(2024)「Effect of the national lifestyle guidance intervention for metabolic syndrome among middle-aged people in Japan」Journal of Global Health リンク
    ― 本記事での引用箇所:日本の40〜74歳を対象とした生活習慣の保健指導の枠組みと、対象者で体重・腹囲などの指標に好ましい変化がみられたとする報告。
  4. 厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」厚生労働省 リンク
    ― 本記事での引用箇所:2015年から労働安全衛生法によりストレスチェックが事業者に義務づけられていること、50人未満の事業場への義務化の方向。
  5. Cancelliere C, ほか(2011)「Are workplace health promotion programs effective at improving presenteeism in workers? a systematic review and best evidence synthesis of the literature」BMC Public Health リンク
    ― 本記事での引用箇所:職場の健康増進プログラムとプレゼンティーズムの関係に関する系統的レビューと、効果のばらつき・さらなる検証の必要性。