「足腰が弱ってきて、病院まで行くのがおっくう」「ひとりでバスや電車を乗り継ぐのが心細い」「親を病院に連れて行きたいけれど、付き添う時間がなかなかとれない」。年齢を重ねたり体の自由がきかなくなったりすると、これまで当たり前にできていた「通院」そのものが、だんだんと大きな負担に変わっていきます。雨の日や寒い日には、家を出るだけでひと苦労。待合室で長く待つのもこたえます。和ごころの「往診」は、そんな毎日の小さな困りごとに、地域のみんなで寄り添う活動です。ひとりで抱え込まず、まずは肩の荷をすこし下ろしにきてください。

この活動とは
「和ごころ往診(活動名:在宅医療と遠隔診療)」は、移動が困難な高齢者やそのご家族を対象にした、地域の支え合い活動です。私たちが取り組んでいるのは、大きく二つ。ひとつは、ご自宅まで医療の専門職が足を運ぶ「在宅往診」の橋渡し。もうひとつは、スマートフォンやタブレットを使った「ビデオ診療(オンライン診療)」の使い方を、ご家族と一緒にゆっくり練習することです。どちらも、住み慣れた地域で医療とのつながりを保ち続けるための「最初の一歩」を、となりで支えるための取り組みです。
ここで大切にしたいのは、これが医療行為そのものではなく、地域活動だということです。私たちが診断や治療を行うわけではありません。お住まいの地域でどんな在宅医療やオンライン診療の仕組みが使えるのかを一緒に調べたり、機器の操作にとまどう方のそばで手順をお手伝いしたりする――いわば「道案内」と「練習のおとも」が私たちの役割です。実際の診療は、医師など医療の専門職が責任をもって行います。和ごころは、その入り口までの不安をやわらげる場でありたいと考えています。

こんな方に
- 足腰が弱り、ひとりでの通院に不安を感じている方
- 遠方に住む親の通院を、なかなか手伝えずに心配しているご家族
- 「オンライン診療」という言葉は聞くけれど、使い方がわからず一歩を踏み出せない方
- 持病があり、定期的な受診を続けたいけれど通院がつらい方
- 地域にどんな在宅医療の選択肢があるのか、まず知っておきたい方
- 退院後の生活で、これからの医療との付き合い方に迷っているご本人やご家族
「自分はまだ大丈夫」という方も、いざというときに慌てないために、早めに仕組みを知っておくと安心です。ご本人だけでなく、離れて暮らすご家族からのご相談も大歓迎です。
なぜ大切なのか
日本では高齢化が急速に進み、65歳以上の高齢者数は2025年には3,657万人に達すると見込まれています。また、ある調査では「自宅で療養したい」と回答した人が60%以上にのぼると報告されており、住み慣れた地域で医療を受け続けたいという思いは、多くの人に共通する願いだといえます[1]。一方で、ひとり暮らしや高齢の夫婦のみの世帯が増えるなかで、「通院の足」をどう確保するかは、ご家庭だけでなく地域全体の課題になっています。
こうした背景から注目されているのが、医師がご自宅を訪ねる在宅医療と、情報通信機器を使ったオンライン診療です。厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」では、情報通信機器を用いた診療は医師が不足する地域などで有用と考えられると整理されており、新型コロナウイルス感染症の流行時には、受診が困難になった患者への医療提供手段としても活用されたとされています[2]。同じ指針は、安全に行うために医師教育・患者教育が必要であることにも触れており、「便利だから何でもよい」のではなく、適切な使い方を学ぶことの大切さを示しています。
海外の研究でも、地域で暮らす高齢者を対象としたプライマリ・ケアでのオンライン診療は、おおむね前向きな体験につながり、高い満足度が得られたと報告されています。とりわけ「移動や通院にかかる時間が減ること」が、利用を後押しする最も大きな要因として挙げられていました[3]。通院そのものの負担が軽くなることは、受診を途中であきらめずに続けやすくする入り口になると考えられています。

在宅で医師の診療を受ける「在宅医療(在宅プライマリ・ケア)」についても、外来に通えない高齢者の医療へのアクセスを高める仕組みとして各国で検討が進められていると報告されています。高齢者向けのケアモデルを整理した研究では、評価された複数のモデルが、ケアの質・生活の質・身体機能の自立・医療サービスの利用といった項目のいずれかで良い結果を示したとされています[4]。住み慣れた家で過ごしながら必要な医療につながることには、暮らしの面でも意味があると受け止められています。
日本国内のデータでも、新しい知見が出てきています。65歳以上を対象にした後ろ向きコホート研究では、ふだんから関わりのある「かかりつけ医機能」を持つ医療機関でのオンライン初診を受けた人は、そうでない医療機関で受けた人に比べ、その後1か月以内の入院の割合が低かったと報告されています[5]。これは、ただ便利な道具を使えばよいということではなく、信頼関係のある医師とのつながりを保ちながら遠隔の仕組みを上手に取り入れることの大切さを示すものと受け止められます。和ごころが、地域のかかりつけの医療機関とのつながりを何より大事にしているのも、こうした考え方が背景にあります。
もちろん、在宅医療やオンライン診療がすべての場面に向いているわけではありません。直接からだに触れて確かめる必要がある診察や、急に容体が変わったときの対応など、対面でなければ難しいこともあります。だからこそ、上にあげた指針でも、対面とオンラインを場面に応じて組み合わせていく考え方が大切にされています[2]。「通院か、在宅か」とどちらかに決めてしまうのではなく、その時々の体調や暮らしに合わせて無理なく選んでいく――そのための知識と選択肢を、あらかじめ手元にそろえておくことが、ご本人にもご家族にも安心につながります。和ごころは、その「組み合わせ方」を一緒に考えるお手伝いをします。

当日の流れ・内容
活動は、肩の力を抜いて参加していただけるよう、ゆっくり進めます。「うまくやらなきゃ」と気負う必要はまったくありません。おおよその流れは次のとおりです。
- お困りごとのお聞きとり:通院でどんなことに困っているか、ご本人やご家族から、無理のない範囲でうかがいます。話したくないことは話さなくて大丈夫です。
- 地域の選択肢のご案内:お住まいの地域で使える在宅医療やオンライン診療の窓口、相談先を一緒に整理し、紙にまとめてお渡しします。
- ビデオ診療の練習:お手持ちのスマートフォンやタブレットで、ビデオ通話のつなぎ方、画面の見方、音声の確認などを、実際に手を動かしながら練習します。ご家族が遠方からサポートする場合の段取りもご案内します。
- 不安の整理:「うまく話せるか心配」「操作を忘れそう」といった不安を、手順メモにまとめてお持ち帰りいただけます。次に困ったときの「お守り」になります。
機器の操作が苦手な方も、何度でもゆっくり練習していただけます。途中で手が止まっても、まったく問題ありません。ここは「できないこと」を責める場ではなく、「少しずつ慣れていく」ための場です。お茶でも飲みながら、ご近所さんと世間話をするような気持ちでお越しください。
練習では、文字を大きくする設定や、通話ボタンの場所、家族を呼び出す方法など、つまずきやすいところを一つずつ確認します。覚えきれなくても心配いりません。手順をやさしい言葉と大きな文字で書いたメモをお渡しするので、ご自宅に帰ってからも見ながら操作できます。次にお会いしたときには、前回むずかしかったところから一緒におさらいします。あせらず、ご自身のペースで「だんだん慣れていく」ことを大切にしています。

参加の安心
この活動は地域の支え合いであり、特定の商品やサービス、特定のクリニックへの誘導は一切行いません。無理な勧誘や契約をお願いすることもありません。持病の情報なども、必要な範囲でやさしくうかがうだけで、無理に話していただく必要はありません。「まだ何も決めていない」「とりあえず雰囲気だけ知りたい」――そんなお気持ちでまったく構いません。ご家族だけの参加、見学だけの参加も歓迎します。費用のことや、これからのことが心配な方も、気がかりをそのまま持ってきていただいて大丈夫です。一緒に整理していきましょう。

参加方法
参加をご希望の方は、下記のような内容をお知らせください。電話・メール・お申込みフォームのいずれでも受け付けています。
- お名前(ご家族が代理でお申込みの場合は続柄も):例)和ごころ 花子(本人) / 申込者:長女
- ご連絡先:例)電話 090-0000-0000 / メール example@example.com
- ご希望の内容:例)母の通院がつらいので、オンライン診療の使い方を一緒に練習したい
- お使いの機器:例)スマートフォン(らくらくホン) / タブレットは持っていない
うまく書けなくても大丈夫です。「通院がつらい」のひと言だけでも構いません。受け取った私たちから、あらためてご連絡を差し上げ、ご都合のよい日時を一緒に決めさせていただきます。
さいごに
「年だから仕方ない」と通院をあきらめてしまう前に。住み慣れた我が家にいながら医療とのつながりを保つ方法は、少しずつ広がっています。大切なのは、便利な道具を使うこと以上に、顔の見える誰かと一緒に、自分に合ったやり方を見つけていくことです。和ごころ往診は、その入り口に立つあなたとご家族の、心強い隣人でありたいと思っています。どうか、ひとりで抱え込まずに、まずは声をかけてください。あなたの「困った」を、地域のみんなでそっと受け止めます。
本記事は地域活動の案内であり、診断・治療を目的としたものではありません。気になる症状や強いつらさがある場合は医療機関・公的相談窓口にご相談ください。
参考文献
- 厚生労働省 在宅医療・介護推進プロジェクトチーム(2012)「在宅医療・介護あんしん2012(在宅医療・介護の推進について)」厚生労働省 リンク
― 本記事での引用箇所:65歳以上人口が2025年に3,657万人と見込まれること、60%以上が自宅での療養を望んでいることの記述。 - 厚生労働省(平成30年/令和4年一部改訂)「オンライン診療の適切な実施に関する指針」厚生労働省 リンク
― 本記事での引用箇所:情報通信機器を用いた診療が医師の不足する地域で有用と考えられること、コロナ流行時に受診困難な患者への提供手段として活用されたこと、医師・患者教育の必要性の記述。 - Tremblay MC, et al.(2023)「Telemedicine in the primary care of older adults: a systematic mixed studies review」BMC Primary Care(PMC) リンク
― 本記事での引用箇所:高齢者のプライマリ・ケアにおける遠隔診療がおおむね前向きな体験・高い満足度につながり、移動や通院時間の短縮が最も多く挙げられた利用促進要因であったとの報告。 - Kim H, et al.(2020)「Home-Based Primary Care for Homebound Older Adults: Literature Review」Annals of Geriatric Medicine and Research(PMC) リンク
― 本記事での引用箇所:在宅プライマリ・ケアが在宅高齢者の医療アクセス向上の手段として各国で検討されていること、複数のケアモデルがケアの質・生活の質・機能的自立・医療サービス利用のいずれかで良い結果を示したとの整理。 - 森田和仁・笹渕裕介・康永秀生(2025)「かかりつけ医機能を有する医療機関における遠隔診療による初診が高齢者の入院に与える影響:後ろ向きコホート研究」医療経済研究(J-STAGE) リンク
― 本記事での引用箇所:65歳以上を対象に、かかりつけ医機能を持つ医療機関での遠隔初診を受けた群は、そうでない群に比べ1か月以内の入院割合が有意に低かったとの報告。