「最近、外を歩く時間がめっきり減ったな」「近くに気軽に体を動かせる場所があればいいのに」――そんなふうに感じたことはありませんか。仕事や家事、育児や介護に追われて一日中室内で過ごす日が続くと、なんとなく気持ちが晴れない、体が重い、夜もぐっすり眠れない、と感じる方は少なくありません。和ごころグリーンの「健康グリーンベルト」の構築は、そんな日常に小さな緑とゆるやかな運動の習慣を取り戻すための、地域みんなの取り組みです。むずかしいことは何もありません。まずは家の近くの緑の道を、ひと駅ぶんだけ歩いてみる。その小さな一歩を、地域ぐるみで応援していく活動です。

「健康グリーンベルト」の構築とは
「健康グリーンベルト」の構築は、地域の公園や学校、自治会と連携し、身近な緑地をていねいに整えていく活動です。手入れの行き届いた花壇や並木、歩きやすい遊歩道をみんなでつくり、そこを舞台に「森林ヒーリング(森林浴)」の体験会や、誰でも参加できるウォーキング大会を定期的に開きます。点在する緑地を一本の「帯(ベルト)」のようにつなぎ、歩いて立ち寄れる居場所を地域に広げていくことをめざしています。
「ベルト」と呼ぶのには理由があります。ひとつの公園だけが立派でも、そこまでが遠ければなかなか足は向きません。けれど、家から駅へ、駅から学校へ、学校から商店街へと、緑の道がつながっていれば、買い物や送り迎えのついでに自然と歩く距離が増えていきます。日常の動線そのものを、心地よく歩ける緑の帯に変えていく――それが私たちの願いです。
これは医療行為ではなく、あくまで地域の暮らしを楽しくする活動です。特別な道具も体力も必要ありません。緑のなかをゆっくり歩く、季節の植物に触れる、顔なじみと言葉を交わす――そんな何気ない時間を、世代を超えてみんなで大切に育てていきます。
こんな方におすすめです
次のような思いをお持ちの方に、ぴったりの活動です。ひとつでも当てはまったら、どうぞ気軽にのぞいてみてください。
- 運動不足が気になるけれど、ジム通いやスポーツはハードルが高いと感じている方
- 家にこもりがちで、外に出るきっかけ・理由がほしい方
- 仕事や育児・介護のストレスから、少し心を休ませたい方
- 近所で世代を超えた仲間や知り合いをつくりたい方
- 子どもや孫と一緒に、自然のなかで過ごす時間をもちたい方
- 定年や子育ての一段落をきっかけに、新しい居場所を探している方

なぜ緑地とウォーキングが大切なのでしょうか
身近に緑地があることは、心と体の健康と深くかかわっていると考えられています。世界保健機関(WHO)の報告では、公園や住宅地の緑などの都市の緑地は、心理的なリラックスやストレスの緩和、社会的なつながりの促進、身体活動の後押しといった経路を通じて、都市に暮らす人々の心身の健康を支える可能性があるとまとめられています[1]。緑地は「ただの景色」ではなく、人が集い、体を動かし、ほっと一息つける場として働くと考えられているのです。

実際に、緑地の多い地域に住む人ほど身体活動が活発な傾向があることも、観察研究で報告されています[2]。歩きやすく心地よい緑の道があることが、自然と「歩いてみよう」という気持ちを引き出すのかもしれません。健康グリーンベルトが緑地の整備とウォーキングをひとつにして進めているのは、こうした「環境が人の行動を支える」という考え方を大切にしているからです。立派な決意よりも、つい歩きたくなる道のほうが、習慣を長続きさせてくれることがあるのです。だからこそ私たちは、まず「歩きたくなる場所」を地域の手で少しずつ増やしていくことから始めています。
緑とのふれあいは、体を動かすきっかけになるだけではありません。花が咲いた、葉が色づいた、鳥の声が聞こえた――そんな季節の小さな発見は、毎日に張りをもたらしてくれます。同じ道でも、春と秋ではまったく表情が違います。歩くたびに移ろう景色に気づくことが、外に出るもうひとつの楽しみになっていきます。
森林の環境で時間を過ごす「森林浴(Shinrin-yoku)」についても、日本発の研究が国際的に積み重ねられてきました。森林医学の総説では、森林浴によってストレスホルモンとされる尿中アドレナリン・ノルアドレナリンや唾液・血清中のコルチゾールが低下したこと、副交感神経の働きが高まり交感神経の働きがやわらぐ方向に自律神経のバランスが変化したことなどが報告されています[3]。緑のなかで深呼吸をすると気持ちが落ち着く、という多くの人の実感は、こうした生理的な変化とも結びついて語られています。

そして、歩くこと自体の大切さも見逃せません。WHOの2020年身体活動ガイドラインは、すべての成人に、週あたり150〜300分の中強度、または75〜150分の高強度の有酸素性の身体活動を行うことをすすめています[4]。一日に置きかえると、中強度なら20〜40分ほどの活動になります。これは特別な運動でなくても、早めの歩行や庭仕事、家事でも積み重ねていける範囲です。日本でも、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」が、世代に応じた身体活動・運動の推奨をまとめ、「少しでも身体を動かすこと」「座りっぱなしの時間を減らすこと」の大切さを示しています[5]。一人ではなかなか続かない歩く習慣も、仲間と一緒なら無理なく重ねていけます。ウォーキング大会は、その「きっかけ」と「続ける楽しさ」を地域で分かち合う場です。
当日の流れ・活動の内容
健康グリーンベルトの活動は、主に次のようなプログラムで構成されています。すべてに参加する必要はありません。気になるものひとつだけの参加でも大歓迎です。
- 緑地の整備:公園や学校の花壇づくり、植栽の手入れ、遊歩道の清掃などを、みんなで少しずつ。土に触れる作業そのものが、ほどよい運動になります。重いものを運ぶ作業は無理に行いません。
- 森林ヒーリング(森林浴)体験会:近隣の森や緑地をガイドと一緒にゆっくり歩き、五感で自然を味わう時間です。早歩きや無理は一切しません。立ち止まって木々を見上げたり、葉の音に耳をすませたりしながら過ごします。
- ウォーキング大会:整えた緑の道をコースに、自分のペースで歩くイベント。距離は短めのコースから用意し、途中の休憩もたっぷりとります。歩き終えたあとの達成感も、楽しみのひとつです。
- 交流のひととき:歩いたあとは、お茶を片手におしゃべりタイム。顔なじみが増えることも、この活動の大切な実りです。はじめての方も、輪のなかへ自然に入っていけます。
所要時間はプログラムによって異なりますが、ウォーキングや体験会はおおむね1〜2時間ほど。集合と解散の場所、当日の流れは、お申し込みのあとに改めてご案内します。途中からの参加や、早めの解散もご自由にどうぞ。「最後まで頑張らなければ」と気負う必要はまったくありません。ご自身の体調と相談しながら、心地よい範囲で過ごしていただくのがいちばんです。

はじめての方も安心してご参加ください
「体力に自信がない」「持病があるけれど大丈夫かな」という方もご心配いりません。コースは平坦で短いものから選べ、ご自身のペースで歩いていただけます。当日は無理をせず、つらいと感じたらいつでも休んでください。スタッフや顔なじみの参加者が、さりげなく声をかけ合いながら歩きます。
お薬を服用中の方や、通院されている方、心臓・呼吸器・ひざや腰などに不安のある方は、参加の前にかかりつけの医療機関にひとこと相談しておくと、より安心です。当日の体調がすぐれないときは、どうか無理をなさらないでください。動きやすい服装と歩きやすい靴、そして水分だけご用意いただければ十分です。暑い季節は帽子を、寒い季節は重ね着を一枚、おすすめします。
参加方法
参加は無料です(一部の体験会で材料費をいただく場合があります)。お申し込みは、和ごころグリーンの参加フォームから、下記のようにご記入ください。記入例ですので、ご自身の内容に置きかえてお書きください。
- お名前:和ごころ 緑(わごころ みどり)
- 参加希望プログラム:ウォーキング大会/森林ヒーリング体験会/緑地の整備(複数選択可)
- ご連絡先:お電話またはメールアドレス
- 気になること:例)膝が少し痛むので短いコース希望、など
お一人での参加はもちろん、ご家族・お友だち・ご近所の方をお誘い合わせのうえでのご参加も歓迎です。年齢や運動経験は問いません。「とりあえず見学だけ」という参加も大丈夫です。

さいごに
緑の道を一歩ずつ歩くことは、特別なことではありません。けれど、その小さな一歩の積み重ねが、心と体に、そして地域のつながりに、やさしい変化を運んでくれるかもしれません。今日より明日、ほんの少しだけ外の空気を吸ってみる。顔を上げて木々を見る。隣を歩く人とあいさつを交わす。そんなささやかな時間が、いつのまにか暮らしの支えになっていく――私たちはそう信じています。深呼吸ひとつ、あいさつひとつから。あなたのまちに緑のベルトを、一緒に育てていきませんか。
本記事は地域活動の案内であり、診断・治療を目的としたものではありません。気になる症状や強いつらさがある場合は医療機関・公的相談窓口にご相談ください。
参考文献
- World Health Organization, Regional Office for Europe (2016)「Urban green spaces and health」WHO Regional Office for Europe リンク
― 本記事での引用箇所:都市の緑地が心理的リラックス・ストレス緩和・社会的つながり・身体活動の促進を通じて心身の健康を支えうるという記述。 - Mytton OT, Townsend N, Rutter H, Foster C (2012)「Green space and physical activity: An observational study using Health Survey for England data」Health & Place 18(5):1034-1041 リンク
― 本記事での引用箇所:緑地の多い地域の住民ほど身体活動が活発な傾向があるという報告。 - Li Q (2022)「Effects of forest environment (Shinrin-yoku/Forest bathing) on health promotion and disease prevention —the Establishment of "Forest Medicine"—」Environmental Health and Preventive Medicine 27:43 リンク
― 本記事での引用箇所:森林浴によるストレスホルモン(コルチゾール等)の低下、副交感神経活動の高まりと自律神経バランスの変化に関する報告。 - Bull FC, Al-Ansari SS, Biddle S, ほか (2020)「World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour」British Journal of Sports Medicine 54(24):1451-1462 リンク
― 本記事での引用箇所:成人は週150〜300分の中強度または75〜150分の高強度の有酸素性身体活動が推奨されるという基準。 - 厚生労働省(2024)「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」健康づくりのための身体活動基準・指針の改訂に関する検討会 リンク
― 本記事での引用箇所:世代に応じた身体活動・運動の推奨、座位時間を減らし少しでも体を動かすことの大切さの記述。