トリガーポイント(myofascial trigger point, MTrP)とは、筋肉の索状硬結(こわばったひも状の部分)の中に生じる局所的な痛覚過敏点のことです。圧迫すると局所の痛みに加え、離れた部位へ「関連痛」が飛ぶのが特徴で、後頭下筋群のトリガーポイントは後頭部から眼の奥への放散痛を生じやすいとされています。側頭筋のトリガーポイントは側頭部から上歯にかけての放散痛、上僧帽筋は頭頂部や側頭部への放散痛を生じやすいといわれています。
Do らの2018年のレビュー[3]では、緊張型頭痛患者では健常者と比べてトリガーポイントが有意に多く認められ、中でも上僧帽筋(肩と首の接合部)と後頭下筋群に活動性トリガーポイントが集中することが示されています。これらのトリガーポイントが生み出す侵害刺激は、三叉神経-頸髄複合体を介して頭痛として認知されると考えられています。また、頭蓋周囲筋の圧痛と頭痛の頻度・強さとの間に相関関係があることも同レビューで示されています。
現代のデスクワーク環境は、緊張型頭痛を悪化させる姿勢的要因に満ちています。特に問題となるのが前傾頭位(forward head posture, FHP)です。頭が正中より前に出ると、後頭下筋群・僧帽筋・肩甲挙筋への慢性的な過負荷が生じると考えられています。頭部の重みを支えるために後頚部の筋肉が常に引っ張られた状態が続き、筋肉の微小循環が低下してトリガーポイントが形成されやすくなるとされています。
International Headache Society(2018)「The International Classification of Headache Disorders, 3rd edition: 2. Tension-type headache (TTH)」ICHD-3. https://ichd-3.org/2-tension-type-headache/ ― 本記事での引用箇所:緊張型頭痛の診断基準4項目・生涯有病率30〜78%・片頭痛との鑑別の難しさ・頭蓋周囲筋の圧痛の病態生理的意義
Do TP, Heldarskard GF, Kolding LT, et al.(2018)「Myofascial trigger points in migraine and tension-type headache」J Headache Pain 19:84. PMID: 30203398. PMC6134706 ― 本記事での引用箇所:緊張型頭痛患者における上僧帽筋・後頭下筋群の活動性トリガーポイントの高頻度化・頭痛頻度・強度との相関・三叉神経-頸髄複合体を介した機序
Choi W(2021)「Effect of 4 Weeks of Cervical Deep Muscle Flexion Exercise on Headache and Sleep Disorder in Patients with Tension Headache and Forward Head Posture」Int J Environ Res Public Health 18(7):3410. PMC8037445 ― 本記事での引用箇所:4週間の頚部深部屈筋運動によるヘッドアック・ディスアビリティスコアの有意な低下(64.56→48.12, p<0.001)・前傾頭位との関係
Repiso-Guardeño A, Moreno-Morales N, et al.(2023)「Physical Therapy in Tension-Type Headache: A Systematic Review of Randomized Controlled Trials」Int J Environ Res Public Health 20(5):4466. PMID: 36901475. PMC10001815 ― 本記事での引用箇所:頭蓋頸部アプローチ(ストレッチ・徒手療法・筋弛緩法)が頭痛の強さ・頻度を短〜中期的に有意に低下させるというRCT15本のシステマティックレビューの結論