Yamamoto et al.(2007)は健康な被験者を対象とした熱暴露実験で、心拍変動(HRV)の高周波成分(HF%)が有意に低下し、LF/HF比(交感神経と副交感神経のバランス指標)が上昇することを確認しました。研究者らは「熱暴露は交感神経を活性化し、副交感神経を抑制する」と結論づけており、HRVが熱ストレスを評価する感度の高い指標であることも示しています[1]。冷房環境と高温環境を繰り返す場合、この反応が逆転しながら何度も起きることになります。
消化器症状(食欲不振・胃もたれ・下痢)
Prakash et al.(2021)は、寒冷刺激(コールドプレッサーテスト)によって交感神経が活性化されると、胃の電気的活動が変化し、胃の運動機能に影響を与えることを示しました[4]。冷房環境での交感神経優位状態が続くと、消化管の蠕動運動がうまく調整されず、食欲不振や胃腸の不調につながる可能性があります。冷たい飲料や食べ物の摂りすぎが胃腸を冷やすことも、同様の経路で症状を悪化させると考えられています。
Yamamoto S, Iwamoto M, Inoue M, Harada N(2007)「Evaluation of the effect of heat exposure on the autonomic nervous system by heart rate variability and urinary catecholamines」Journal of Occupational Health. PubMed PMID:17575400 ― 本記事での引用箇所:熱暴露によって交感神経が活性化し副交感神経(HF成分)が低下すること、HRVが熱ストレスの感度の高い指標であることの根拠
Schlader ZJ, Vargas NT(2019)「Regulation of Body Temperature by Autonomic and Behavioral Thermoeffectors」Exercise and Sport Sciences Reviews. PubMed PMID:30632999 ― 本記事での引用箇所:体温調節が自律的反応(発汗・ふるえ)と行動的反応の協働で成立し、どちらかに偏ると負担が増すことの根拠
Johnson JM, Minson CT, Kellogg DL Jr(2014)「Cutaneous vasodilator and vasoconstrictor mechanisms in temperature regulation」Comprehensive Physiology. PubMed PMID:24692134 ― 本記事での引用箇所:皮膚血管の収縮・拡張が交感神経(ノルアドレナリン系・NO)によって制御されるメカニズムの根拠
Prakash K, Thakur A, Malhotra AS(2021)「Association of heart rate variability, blood pressure variability, and baroreflex sensitivity with gastric motility at rest and during cold pressor test」Gastroenterology and Hepatology From Bed to Bench. PMC8101517 ― 本記事での引用箇所:寒冷刺激(コールドプレッサーテスト)による交感神経活性化が胃の電気的活動・運動機能に影響することの根拠