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目が疲れる、乾く、かすむ――眼精疲労・VDT症候群・ドライアイのしくみとセルフケア

編集:和ごころプロジェクト|公開 2026.07.05編集方針

パソコンやスマートフォンを長時間使うようになった現代、「目がかすむ」「目が乾く」「なんとなく目の奥が重い」といった感覚を覚える方は少なくありません。これらは眼精疲労やVDT症候群、ドライアイと呼ばれる状態と関係していることがあります。この記事では、それぞれの状態がどのようなメカニズムで生じるのか、日常でできるセルフケアの考え方、そして眼科受診を検討すべきサインについて、公的なガイドラインや研究をもとに整理します。

眼精疲労・VDT症候群・ドライアイとはどういう状態か

眼精疲労とは、視作業を続けることで目だけでなく全身に疲労症状が現れる状態を指します。かすみ目・ぼんやり・目の奥の痛みに加え、頭痛・肩こり・首のこりなど全身症状が続くのが特徴です。一時的な「疲れ目」とは異なり、休んでも回復しにくいのが眼精疲労の特徴とされています。

VDT症候群(Video Display Terminal症候群)は、パソコン・スマートフォン・タブレットなどのディスプレイ機器(VDT)を長時間使用することで生じる一連の身体的・精神的不調の総称です。厚生労働省は「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」のなかで、1日4時間以上VDT機器を使用する労働者の健康管理について指針を定めており、連続作業は1時間を超えないこと、超える場合は10〜15分の休憩を設けることを推奨しています[1]

ドライアイは、「さまざまな要因により涙液層の安定性が低下する疾患であり、眼不快感や視機能異常を生じ、眼表面の障害を伴うことがある」と日本眼科学会・ドライアイ研究会のガイドラインで定義されています[2]。VDT症候群の中でもドライアイは中心的な問題の一つとされており、三者は互いに密接に関連しています。

VDT作業で目・肩・頭に疲労が生じるイメージ図
図1:VDT作業によって目だけでなく肩や頭など全身に疲労が波及することを示す概念図

なぜVDT作業で目が疲れ、乾くのか――まばたき減少というメカニズム

日常の会話中、私たちは1分間に約16〜17回まばたきをしているとされています。まばたきのたびに涙の膜が眼の表面に均一に広がり、角膜を乾燥や刺激から守っています。

ところが、画面を集中して見ているときはまばたきの頻度が大幅に下がります。Kamøy らによるレビュー(2022年)では、会話中の約26回/分から VDT使用時には14.5回前後に低下することが示されており[3]、Tsubota らによる研究ではドライアイ患者でのVDT使用中のまばたき頻度は約6.6回/分と、会話中(16.8回/分)に比べて著明に低下することが報告されています[4]

まばたきが減ると涙の膜が均一に補充されず、蒸発が進んで目の表面が乾燥します。さらに、不完全なまばたき(まぶたが完全に閉じない)が増えると、まぶたの縁にあるマイボーム腺からの油分の分泌が不十分になり、涙膜の安定性がさらに低下します[5]。VDT労働者の79%が異常な涙液安定性(涙液層破壊時間の短縮)を示すとの報告もあります[5]。この連鎖が、VDT作業中の目の乾きとかすみの主なメカニズムと考えられています。

また、ディスプレイを見るとき目は近い距離にピントを合わせ続けるため、水晶体のピントを調節する毛様体筋が緊張し続けます。毛様体筋の過緊張が自律神経バランスに影響し、全身症状(頭痛・肩こり・倦怠感)につながるとも考えられています。

さらに、画面の位置や部屋の環境も目への負担に関係します。厚生労働省のガイドラインでは、ディスプレイとの距離はおよそ40cm以上とし、画面上の照度を500ルクス以下に保つことが推奨されています[1]。画面を目線より上に置くと目を大きく開けるため蒸発が増えるとも指摘されており、なるべく目線を下げる配置が合理的とされています。

VDT作業中のまばたき減少と涙膜蒸発のメカニズム図
図2:Tsubota ら([4])の報告をもとに作図。会話中(約17回/分)とVDT使用中(約7回/分)でまばたき頻度が大きく異なり、涙膜の安定性が低下するプロセスを示す。

どんな人に起こりやすいのか――リスク因子の整理

VDT症候群・ドライアイのリスクは、使用時間・環境・個人の状態によって変わります。主なリスク因子として以下が研究で指摘されています。

  • 長時間使用:1日6時間以上のVDT作業はコンピュータビジョン症候群のリスクを高めるとされています(調整後オッズ比2.07)[6]
  • 合わない眼鏡・コンタクトレンズ:屈折矯正不良はピント調節の負担を増やし、眼精疲労を引き起こしやすくします。
  • 乾燥した環境:冬や空調の効いた室内では涙の蒸発が増え、ドライアイが悪化しやすくなります。
  • スマートフォンの画面サイズ:小さな文字を見続けると毛様体筋の緊張が大きくなりやすいとされています。
  • 年齢・性別:加齢による涙腺機能の低下、ホルモン変化の影響で女性に多いとされる報告があります[6]。コンピュータビジョン症候群の有病率は女性77.0%、男性49.4%との調査結果もあります[6]
  • 元からのドライアイ傾向:涙の安定性(涙液層破壊時間)がもともと短い方は、VDT作業の影響を受けやすいとされています[5]

コンピュータビジョン症候群(VDT症候群に相当)の有病率は、オフィスワーカーの67.2%に上るとの報告もあり[6]、現代人の目の不調が非常に一般的であることがうかがえます。最も頻度の高い症状はかすみ目(63.5%)、視力低下感(61.8%)、頭痛(56.3%)、灼熱感(54.2%)とされています[6]

ブルーライト・姿勢・睡眠への影響

VDT作業に関連して、ブルーライトの影響についても触れておきます。ブルーライトは波長が短い可視光線の一種で、スマートフォンやパソコンの画面から発せられています。研究段階の知見では、青色光は角膜上皮細胞への影響が示唆されているとの報告もあります[5]。ただし、日常の画面使用によるブルーライトが眼精疲労の主因かどうかについては現時点でエビデンスが十分に確立されておらず、ブルーライトカットレンズが眼精疲労を軽減するかどうかもまだ議論が続いています。

一方、姿勢の影響は見落とされがちです。画面を覗き込む前傾姿勢は首・肩の筋肉への負担を増やし、頭痛や肩こりを引き起こしやすくします。また、深夜の画面視聴は光刺激によって体内時計のリズムに影響を与え、睡眠の質に関わることも研究で指摘されています。

  • 画面は目線より若干下に置き、首を大きく前に倒さないようにする。
  • 1〜2時間ごとに立ち上がり、首・肩を軽くほぐす。
  • 就寝1〜2時間前は画面の輝度を下げるか、使用時間を短くすることが睡眠の質の維持に役立つ可能性があります。

日常でできるセルフケアの考え方

眼科で処方や加療が必要な場合もありますが、日常の工夫で目への負担を和らげることも一定程度は期待されます。ただし、以下はあくまでも一般的な情報であり、症状が続く場合は医療機関への相談が必要です。

定期的な休憩を取り入れる
よく知られた「20-20-20ルール」(20分ごとに20フィート=約6m先を20秒見る)は、アメリカ視力学会などが推奨している休憩方法です。ただし、その有効性を直接証明した査読研究は現時点では限られているとの指摘もあります[3]。一方で、定期的に遠方に視線を移すことで毛様体筋の緊張をほぐすという考え方は理に適っており、少なくとも30〜60分に一度は画面から目を離す習慣が助けになると考えられています。厚生労働省ガイドラインでは連続作業1時間以内を目安とし、超える場合は10〜15分の休憩を推奨しています[1]

意識的にまばたきを増やす
画面を見ている間、意識してゆっくり完全なまばたきをする習慣が目の表面の潤いを保つうえで役立つとされています。まばたきをリマインドする方法(アニメーション表示など)を使った複数の研究で、自発的なまばたきの回数が増加し、症状の改善が見られたことが報告されています[3]

作業環境を整える

  • ディスプレイは目線より若干下に置き、距離はおよそ40cm以上を確保する[1]
  • 照明はディスプレイ上で500ルクス以下を目安にし、周囲との明暗差を小さくする[1]
  • エアコンの風が直接顔に当たらないように工夫し、室内の湿度を適切に保つ。加湿器の使用は涙液の蒸発を抑えることに寄与するとされています[3]

目を温める
ホットタオルや市販の温熱アイマスクで目もとを温めることは、マイボーム腺の油分の流れを整え、涙膜の安定性に寄与するとされています。ただし温度が高すぎると逆効果になるため、目に当てるのは短時間(5分程度)が目安とされています。

目薬(人工涙液)の活用
市販の人工涙液(防腐剤無添加タイプが目安)でドライアイの症状を一時的に和らげることが期待されます。ただし目薬の選択や使用方法は、状態によって異なるため、必要に応じて薬剤師や眼科医に相談することが勧められます。

食事面からの取り組み
一部の研究では、オメガ3脂肪酸の摂取がVDT関連ドライアイの症状や炎症マーカーの低下と関連する可能性が示唆されていますが、サプリメントの服用については医師への相談をお勧めします[3]。青魚・亜麻仁油・えごま油など食事からの摂取を日常的に取り入れることを検討するとよいでしょう。

受診を検討したいサイン

セルフケアを続けても改善しない場合や、以下のような症状がある場合は眼科への受診を検討してください。

  • 急な視力の変化:突然ものが見えにくくなった、視野の一部が欠けているように感じる
  • 目の痛みや充血が続く:休んでも取れない、悪化している
  • まぶしさや光への過敏が強い:以前より日常光が眩しく感じる
  • ものが二重に見える(複視)
  • 目薬を使っても乾きが改善しない:ドライアイが重症化している可能性があります
  • 頭痛・めまいが伴い日常生活に支障がある
  • コンタクトレンズ着用時の不快感が増した
  • 子どもの場合:よく目をこする、頭痛を訴える、学業集中が難しい場合は早めに小児眼科・眼科への受診を

これらは別の眼疾患(緑内障・白内障・網膜疾患など)のサインである可能性もあります。自己判断で経過を見続けることには限界があるため、気になる症状が続く場合は早めに眼科専門医を受診することが大切です。

眼精疲労・ドライアイのセルフケアと受診を検討したいサインの整理図
図3:セルフケア(休憩・環境整備・温め・人工涙液)と眼科受診を検討すべきサイン(急な視力変化・複視・痛みの持続など)を整理した概念図

参考文献

  1. 厚生労働省(令和元年)「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」厚生労働省労働基準局長 基発0712第3号. 厚生労働省PDF
    ― 本記事での引用箇所:連続作業時間の制限(1時間以内・10〜15分休憩)、ディスプレイ距離40cm以上・照度500ルクス以下の推奨
  2. ドライアイ研究会診療ガイドライン作成委員会(2013年)「ドライアイ診療ガイドライン」日本眼科学会雑誌. 日本眼科学会PDF
    ― 本記事での引用箇所:ドライアイの定義(「涙液層の安定性が低下する疾患」)
  3. Kamøy B et al.(2022年)「Video display terminal use and dry eye: preventive measures and future perspectives」Acta Ophthalmologica. PMC9790652
    ― 本記事での引用箇所:VDT使用時のまばたき頻度(会話中26回/分→VDT使用時14.5回/分への低下)、まばたきアニメーション介入の有効性、20-20-20ルールを直接検証した研究がないこと、オメガ3補充と症状改善の関連
  4. Tsubota K, Nakamori K(1993年)「Dry eyes and video display terminals」New England Journal of Medicine. PubMed 8264961
    ― 本記事での引用箇所:VDT使用中のドライアイ患者のまばたき頻度(会話中16.8回/分→VDT使用中6.6回/分への著明な低下)
  5. Fjærvoll H et al.(2022年)「Review on the possible pathophysiological mechanisms underlying visual display terminal-associated dry eye disease」Acta Ophthalmologica. PMC9790214
    ― 本記事での引用箇所:不完全なまばたきによるマイボーム腺機能低下、VDT労働者の79%が異常な涙液安定性を示すとの報告
  6. Cantó-Sancho N et al.(2023年)「Prevalence and risk factors of computer vision syndrome assessed in office workers by a validated questionnaire」PeerJ. PMC9987297
    ― 本記事での引用箇所:コンピュータビジョン症候群の有病率67.2%(女性77.0%・男性49.4%)、1日6時間超の使用でリスク増加(調整後OR 2.07)、主要症状の頻度(かすみ目63.5%・頭痛56.3%・灼熱感54.2%)

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療に代わるものではありません。目の症状が続く・悪化するなど気になることがある場合は、眼科など医療機関にご相談ください。

#眼精疲労#VDT症候群#ドライアイ#セルフケア#目の健康