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ドライアイ・VDT症候群をやさしく理解する 乾き目・眼精疲労の仕組みとセルフケア

編集:和ごころプロジェクト|公開 2026.08.02編集方針

画面を見ていると目がしょぼしょぼする、夕方になると視界がかすむ、コンタクトレンズをしていると目が痛い——そんな経験はありませんか。テレワークやスマートフォンの普及で、こうした目の不快感を訴える人が増え続けています。眼科を受診しても「大きな異常はない」と言われながら、日々の不調が続くケースも少なくありません。この記事では、ドライアイ・眼精疲労・VDT症候群の背景にある仕組みを整理し、日常でできるセルフケアと、眼科を受診する目安をわかりやすく解説します。

スマホ・パソコン時代に急増するドライアイとVDT症候群の実態

ドライアイとは、「涙液の量や質の異常によって眼表面が傷つき、さまざまな不快症状を引き起こす状態」とされています(ドライアイ研究会)。

VDT症候群(Visual Display Terminal症候群)とは、パソコン・スマートフォン・タブレットなどのディスプレイを使った作業(VDT作業)を長時間続けることで生じる、眼・身体・精神症状の総称です。乾き目・疲れ目のほか、肩こり、頭痛、集中力の低下なども含まれます。「IT眼症」「テクノストレス眼症」とも呼ばれます。

2020年以降のテレワーク拡大で在宅でのVDT作業時間はさらに増加しており、目への負担は以前にも増して大きくなっています。コンタクトレンズ使用者は涙液が蒸発しやすいことから、ドライアイの症状が出やすい傾向があるとされています[1]

パソコンとスマートフォンを長時間見続けることで乾き目・疲れ目・VDT症候群が生じる仕組みの全体像
図1:VDT作業・スマホ使用が目の不快感につながる主な流れ

涙液とマイボーム腺——目の潤いを保つしくみ

目の表面を潤す涙液は、大きく3つの層から成り立っています。一番外側の油層(脂質層)、真ん中の水層、眼球表面に接するムチン層です。

油層を分泌しているのが、まぶたの縁に並んでいるマイボーム腺です。上まぶたに約25本、下まぶたに約20本存在し、目を閉じるたびに皮脂(マイバム)を押し出して涙の表面を覆います。油層は涙の蒸発を防ぎ、涙膜を安定させる大切な役割を果たしています。

マイボーム腺に何らかの異常が生じると、この油層が薄くなったり不均一になったりします。その結果、涙が蒸発しやすくなり、ドライアイが引き起こされると考えられています。この状態をマイボーム腺機能不全(MGD: Meibomian Gland Dysfunction)と呼びます。2023年に日本眼科学会・日本角膜学会・ドライアイ研究会が発行した『マイボーム腺機能不全診療ガイドライン』でも、MGDはドライアイの主要な原因の一つとして位置づけられています[6]

VDT作業をするオフィスワーカーにおいてMGDの有病率は23〜38%に及ぶとされており、画面作業との関連が指摘されています[1]。また、コンタクトレンズ使用はマイボーム腺機能に影響を与えることもあるとされており、長時間装用には注意が必要です。

「瞬き」が減るほど涙膜は壊れる——VDT作業の目への影響

画面を見ているとき、私たちは無意識に瞬きの回数が大幅に減ります。これがドライアイ・眼精疲労の主な引き金になるとされています。

Schloteらが中等度のドライアイ患者30名を対象に行った研究では、会話中の自発的瞬き回数(平均16.8回/分)が、VDT作業開始直後には平均6.6回/分まで有意に減少したと報告されています(P<0.001)[2]。さらに30分後の再測定でも5.9回/分のままで、回復はほとんど見られなかったとされています。

Mereddy らの研究(2025年)では、若年者50名が5時間のVDT作業を行った後、涙膜破壊時間(TBUT)が7.2秒から4.8秒へと低下し、同時に瞬き回数が44%減少したと報告されています[5]。TBUTは5秒以下になると目の表面が乾燥しやすい状態とされており、このデータはVDT作業が短時間で涙膜の安定性を大きく損なうことを示しています。

また、Fjærvolらの2022年のシステマティックレビューでは、VDT作業者は非VDT作業者と比較してドライアイの発症リスクが最大3倍高いとされており、画面作業とドライアイの関連性を改めて示しています[1]

VDT作業中に瞬き回数が会話中の16.8回/分から6.6回/分に減少し涙膜破壊時間も短縮するメカニズムを示す図(Schlote 2004、Mereddy 2025のデータをもとに作図)
図2:VDT作業中の瞬き回数低下と涙膜への影響(Schloteら[2]、Mereddy ら[5]のデータをもとに作図)

コンタクトレンズとドライアイ——乾燥を助長する要因

コンタクトレンズは目の表面に直接のるため、涙液を消費しやすく、ドライアイ症状と密接に関わっています。日本での疫学調査(Koumi研究)によると、コンタクトレンズ使用はドライアイの有意なリスク因子として女性・男性どちらにも認められています[3]

この研究では、40歳以上の地域住民2,791名を対象とした調査で、女性の21.6%、男性の12.5%が臨床的なドライアイまたは重篤な症状を持つと推定されています(それぞれ95%CI: 19.5–23.9%、10.7–14.5%)[3]

コンタクト使用者が注意したい点は次のとおりです。

  • 装用時間の管理:装用時間が長くなるほど涙液中の酸素が減り、眼表面への負担が増すとされています。推奨装用時間の範囲内で使用することが大切です。
  • レンズのケア:汚れたレンズは目の表面の刺激になることがあります。洗浄方法を守りましょう。
  • 使い捨てレンズの交換周期:交換周期を過ぎたレンズは涙液の分布を乱す可能性があるとされています。
  • VDT作業中はメガネに切り替える選択肢:長時間の画面作業中はコンタクトレンズをメガネに替えることで、目への負担を軽くできる場合があります。

毎日できるセルフケア——温罨法・人工涙液・画面との向き合い方

眼科で処方される点眼薬や治療とあわせて、日常のセルフケアが目の不快感を和らげる土台となるとされています。以下のケアは根拠のある方法として、ガイドラインや研究で言及されています。

【温罨法(おんあんぽう)——まぶたを温める】

固まったり詰まったりしたマイボーム腺の分泌物を柔らかくするために、まぶたを温める「温罨法」が推奨されています。40℃前後の蒸しタオルやホットアイマスクを閉じたまぶたに5〜10分当てる方法が一般的です。2023年のマイボーム腺機能不全診療ガイドラインでも、温罨法はホームケアとして取り上げられています[6]

Simらの無作為対照試験(2014年)では、温タオルによる眼瞼加温を行ったグループでMGD症状の重症度が45.5%のケースで軽減したと報告されており、継続的な実施の重要性が示されています[4]。ただし、ご自身で判断する前に、症状が強い場合は眼科を受診して方法を確認することをお勧めします。

【眼瞼清拭——まぶたの縁を清潔に保つ】

まぶたの縁に皮脂汚れや細菌が溜まると、マイボーム腺の詰まりを引き起こしやすくなるとされています。市販の眼瞼クレンザー(リッドクレンズ)や、薄めた低刺激シャンプーを綿棒に含ませてまつ毛の根元を清拭する方法が研究でも紹介されています(眼科で方法を確認してください)。

【人工涙液の点眼——乾燥した眼表面を補う】

人工涙液(防腐剤フリータイプが目に優しいとされます)は、涙液を補うための補助として広く用いられています。VDT作業中に目の乾きを感じたときに点眼することで、不快感が軽くなる場合があります。ただし頻繁に点眼が必要な場合は、眼科で根本原因の確認を受けることが大切です。

【20-20-20ルールと休憩——目の緊張をほぐす】

米国眼科学会(AAO)でも紹介されている20-20-20ルールは、「20分ごとに、20フィート(約6m)先を、20秒間見る」という方法です。遠くを見ることで眼の調節筋の緊張が和らぐとされています。また、厚生労働省の情報機器作業ガイドライン(2019年改訂)でも、1時間の継続作業ごとに10〜15分の作業休止と、その間の作業中に小休止を入れることが推奨されています。

【室内環境の見直し】

  • エアコンの風が直接目に当たらないよう、風向きを調整する
  • 加湿器などで室内湿度を40〜60%に保つよう意識する
  • モニターは目の高さより少し低い位置に設置し、まぶたを開く面積を減らす
  • モニターの輝度・コントラストを適切に調整し、目への刺激を軽くする
温罨法・20-20-20ルール・人工涙液・室内環境整備など、ドライアイとVDT症候群のセルフケア手順を整理した図
図3:ドライアイ・VDT症候群のセルフケア——日常でできるケアのまとめ

受診を検討したいサイン

以下のような症状がある場合は、自己判断を続けずに眼科への受診をご検討ください。

  • 目の痛みや充血が強く、日常生活や仕事への支障が続いている
  • 視力が急に低下した、または視野が欠けるように感じる
  • 点眼薬などのセルフケアを続けても、2週間以上症状が変わらない・強くなっている
  • 目やにが増えた、まぶたが腫れている(感染症の可能性)
  • 異物感や目の中のざらつきが強く、まばたきのたびに痛みを感じる
  • 光をまぶしく感じるようになった(羞明:しゅうめい)
  • コンタクトレンズを外しても目の不快感が長く続く
  • 目の症状とともに、関節痛・口の乾きなどほかの症状もある(シェーグレン症候群などを含む全身疾患が関係する場合がある)

参考文献

  1. Fjærvoll K, Fjærvoll H, Magno M, et al. (2022)「Review on the possible pathophysiological mechanisms underlying visual display terminal‐associated dry eye disease」Acta Ophthalmologica. PMC9790214
    ― 本記事での引用箇所:VDT作業者のドライアイリスク3倍、MGD有病率23〜38%、TBUT≤5秒が79%
  2. Schlote T, Kadner G, Freudenthaler N. (2004)「Marked reduction and distinct patterns of eye blinking in patients with moderately dry eyes during video display terminal use」Graefe's Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology. PubMed 14747951
    ― 本記事での引用箇所:VDT作業中の瞬き回数が16.8回/分→6.6回/分に有意に減少(P<0.001)
  3. Uchino M, Nishiwaki Y, Michikawa T, et al. (2011)「Prevalence and risk factors of dry eye disease in Japan: Koumi study」Ophthalmology. PubMed 21889799
    ― 本記事での引用箇所:日本の40歳以上でドライアイが女性21.6%・男性12.5%と推定、コンタクト使用がリスク因子
  4. Sim HS, Petznick A, Barbier S, et al. (2014)「A Randomized, Controlled Treatment Trial of Eyelid-Warming Therapies in Meibomian Gland Dysfunction」Ophthalmology and Therapy. PubMed 25156975
    ― 本記事での引用箇所:温タオルによる眼瞼加温でMGD症状の重症度が45.5%のケースで軽減したと報告
  5. Mereddy S, Gunnam RP, Karedla SR, et al. (2025)「Multifactorial analysis of dry eye syndrome: insights from Schirmer's test, VDT exposure, and tear film stability」International Ophthalmology. PubMed 40471455
    ― 本記事での引用箇所:5時間VDT後にTBUTが7.2→4.8秒へ低下、瞬き回数44%減少
  6. 日本眼科学会・日本角膜学会・ドライアイ研究会(2023)「マイボーム腺機能不全診療ガイドライン」. Mindsガイドラインライブラリ
    ― 本記事での引用箇所:温罨法・眼瞼清拭がMGDのホームケアとして取り上げられていること

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療に代わるものではありません。目の症状が続く場合や悪化する場合は、速やかに眼科医にご相談ください。

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